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栄光の架橋 前篇

今回のは前後編の予定です!
ジュニアアイドルユニットの二人が催眠でエッチな番組に出演!
というベタベタストーリーです。
本編は【続きを読む】からどうぞ!





「えぇ、今日は人気絶頂のジュニアアイドル、ヒプノンのお二人に来てもらいました!」
華やかな雰囲気のお昼の生番組。
多数の芸能人に囲まれ精いっぱいの笑顔で登場した二人は、他の出演者と比べるとかなり背が低い。
まだあどけないその顔立ちは変に大人ぶっておらず、小学生らしさがある。
言ってしまえば同じクラスにいても違和感が無いような、しかしどう考えてもここまでの美少女は中々いないと思わせるような、絶妙なその表情と愛らしさは計算ではなく、彼女たち二人の経験からなされる技である。

「こんにちはぁ!ヒプノンの下滝レミナです!」
「こんにちはぁ!ヒプロ……ヒプノンの久留美美音でっす!」
「ちょっ!美音!噛むな!」
「ユニット名噛んじゃった!えへへ!」
肩よりまだ下まで伸びる黒髪を振るわせて怒っているのがレミナ。
子役出身でヒプノンとして再デビューしてからも、ドラマなどに多数出演している実力派である。
身長は11歳にしては大きい方で160cm近くある。
しかしその分胸は無く、全くと言っていいほどのペッタンコだ。

「今のとこもっかいおねがいします!」
「いやいやこれ生だってば!」
「えぇ!?そうなのぉ!?」
無駄に驚いているその子は美音。
薄っすら茶色の髪はパーマが掛けられており、彼女のおっとりした性格によく似合っている。
レミナとは対照的で、10歳という年のわりには150㎝もなく低身長である。
しかしその分子供ながらにCカップを持つ逸材だ。
その胸を買われて掟破りの小学生グラビアをいくつもこなしている。
それでも清潔感あるキャラクターは、バラエティなどにも呼ばれることが多いことで世間に定着しており、お姉ちゃんと呼ばれたいアイドルNO1など、女性からの支持も多い。

「二人揃っての出演って珍しくない?」
司会の男性が二人にマイクを向ける。

「あ、そうなんですよねぇ。最近二人とも個人活動が多くなってきてて……」
質問にそつなく答えていくレミナ。
しかしその隣で目をキラキラさせながらマイクを狙っている美音は……。

「あのね!あのね!今日は二人の新曲の宣伝だから二人一緒なんだよ!?」
「いや!そういうのは言わなくていいから!」
「やだなぁ、レミナってば……いい?宣伝はちゃんとしなきゃ怒られちゃうんだよ?」
「段取りってのがあるの!もう!これだから美音と一緒はやなんだよぉ!」
「またまたぁ、さっき楽屋で久しぶりに一緒だねってデレデレしてたのレミナじゃん!」
「しし!してないし!ち!違いますよ!?私がそんな!ね、ねぇ?」
レミナは大人っぽいキャラで認識されていたが、最近バラエティなどで美音がどんどん暴露することにより、美音に激甘なことは周知されている。

「ホント二人は仲良いねぇ、元々お友達だったとか?」
「うん!レミナがドラマに出てる時から友達だよ!」
「美音!敬語!せめて敬語で喋って!」
「美音もね?レミナに誘われて芸能界に入ったんだよぉ」
「無視すんな!」
レミナは必死に美音の袖を引っ張って、青い顔をしながら司会の男に頭を下げる。

「いやいや、美音ちゃんのタメ口は今に始まったことじゃないから、あんま気にしてないので大丈夫ですよ」
「ほ、ホントすいません!」
「あ、あのね?美音たち今度新曲が……」
「やぁめぇてぇ!すいません!コーナーいっちゃっていいですから!」
「はは、なんかレミナちゃんの方がバラエティ慣れしてない?」
「美音が馬鹿なだけなんです……」
「聞いても無いのに美音の好きな所は馬鹿なとこだって言ってたのレミナだよね?」
「もう!美音は黙っててってば!」
「アイドルは笑顔が基本だよぉ?ほら、レミナ!笑って!?」
ギュっと両手でレミナの手を握る美音。
その途端レミナの顔は綻び笑顔に戻る。

「も、もぉ……美音ったら……」
「なんなんだこの夫婦漫才!」
「レミナちゃんってヒプノンで出た時はキャラ違うよね?」
「そ!そんなことないですよ!?」
周りの出演者にいじられて赤面するレミナ。
そこで司会者がカメラの方に目線を写す。

「じゃ、ここでCMでーす」
「私達なんにもしてない!?」
「ほらぁ、だから宣伝しなきゃって言ったのにぃ……」
彼女たちは言わずと知れたアイドルユニット。
老若男女に人気があり、彼女たちの歌はこのCD氷河期にミリオンヒットを出すなど今最も注目される二人である。

子役ながらも大人を圧倒する演技で主演もいくつかこなしたことのあるレミナは、歌唱力も評価されており時折カラオケ番組などに出演することもあったが、当時はまだ本格的に曲を出すという話は無かった。

そして昨年、とあるバラエティに出演した美少女がお茶の間で話題になる。
素人ながらに面白いトークと、愛くるしい見た目が司会の芸人に気に入られ準レギュラーの様な立ち位置になり、あっという間に人気者になった。

その謎の美少女こと美音と、演技派子役のレミナがジュニアアイドルとしてデビューしたことは業界を揺るがす大ニュースとなった。
一時の話題性で一発屋になってしまうのではという周囲の不安をよそに、二人の歌唱力とダンスのセンスは本物であり、次々に新しいファンを味方につけて一気にトップアイドルの仲間入りを果たした。
今や他の人気アイドルグループからもライバルと認められ、小学生という年齢の低さからも将来性を高く期待されている。

テレビで見ない日は無いと言われるこの二人は、幼い身体ながらに毎日休みなく仕事をこなしていっている。
遊ぶ暇もない二人にとって、二人で楽屋にいる時だけが遊びの時間と呼べるのかもしれない。



「はぁ、収録疲れたぁ」
「美音ったらぁ、また変なことばっか言ってさぁ?」
「楽屋着いた途端抱き付くのはやめちくりー」
「え!?そ!そんな!嫌だったの!?」
美音の後ろからヒシッと抱き付いてるレミナがオロオロしている。

「違うよぉ?疲れたから横になりたいだけぇ」
「あ!じゃあさ?えへへ」
抱きつくのをやめたレミナは、少し位置をずらして正坐する。

「ほら!私の膝で寝ていいよ!」
「わぁい!レミナの膝枕好きー!」
「えへ!頭撫でていい?」
「もう撫でてるじゃん!」
「もぉ!ホント可愛いなぁ!美音は!」
涎を垂らさんばかりの顔で美音を見つめるレミナ。

「あ、あのさ?レミナってね?」
「なになに?」
「女の人が好きな人なの?」
「……な、なに?どういうことかな?」
デレデレしていたレミナの表情が固まる。

「いやね?この前テレビで見たんだよ、女の人が好きな女の人もいるって。それでね?あぁ、それってレミナもそうなのかなって……」
「ち、ちなみに……そのテレビで見た女の人のこと、美音はどう思った?」
「え?どうってぇ……別に?」
美音は罰が悪そうにレミナのTシャツの裾を引っ張って顔を隠そうとしている。

「ちょ、伸びるからそれは止めろ」
「あ、はい……」
「別にってことはさ?変だなとか気持ち悪いとかそういうのは……」
「思わないけど?」
「じゃ!じゃあさ!?じゃあだよ!?例えば!私が美音のこと……その……あれだったらさ?」
「……好きだったらってこと?」
最早二人とも目を合わせようとはしない。
こうなってくるとこの体制がすでに危ないのではとさえ思われる。

「う、うん。そうだったら……どうする?」
「美音は……わ、わかんない……」
「それはなに?あの、えっと……絶対嫌だとかじゃないってこと?」
「あ!で!でもね!?アイドルは恋愛ダメなんだよ!?」
「んなの関係ねえよ!」
「キレやすい十代!?」
「私たち二人がラブラブな方がファンは絶対喜ぶから!」
「そ!そうなの!?それが世間の見解なのかい!?」
「絶対だよ!美音!考えて!可愛いテディベアが二体いました!」
「あ、クマちゃん……あははぁ、可愛いなぁ……」
「世界入るの早や!で、でね?その二人は単体でも可愛いけど、二人でラブラブしてる方が……?」
「な!なにそれ!?可愛いよ!超絶可愛いよ!?大発見だ!お手柄だよレミナ!」
「でしょ!?私たちもそうだよ!美音は一人でも可愛いけど、可愛い子が可愛い子とイチャイチャしてるのはもっと可愛いんだよ!」
「さりげなく自分も可愛いと認めたのはさて置き!」
「うん!そこは全力でさて置こう!」
「一理あると言わざるを得ない!」
「分かってくれた!?」
「うん!分かった!」
「美音ー!」
レミナが自分の膝の上の美音に抱き付き、やっとこの日が来たと言わんがごとくイチャつこうとしたその時。

「あ、打ち合わせそろそろなんで行かなきゃね」
美音はスッと立ち上がり鏡に向かって髪を直していた。

「真面目か!」
二人は大変多忙なのだ。



「でも打ち合わせ同じ局でよかったね」
「小刻みの移動ってホント辛いよね?」
「打ち合わせだけとかホント辛い」
あまり小学生らしくない愚痴をこぼしながら歩く二人。
マネージャーは先に打ち合わせの部屋に行っているらしいので、手を繋いでのんびり歩いていく。
もちろんレミナがさり気なく握った成果である。

「あ、ここじゃない?」
「そうみたいだね、入ろっか」
ノックをして挨拶すると、中から入室を促す声が聞こえる。

「失礼します」
「しまーす」
二人で部屋に入るとそこにマネージャーはおらず、太った男性が一人座っているだけだった。

「あれ?アキラさんは?」
「ここにいるって聞いてたんですけど……あの、ここであってます?」
アキラさんとは二人のマネージャーである。
マネージャーがいないことで急に落ち着きがなくなってきた。
普段打ち合わせはほぼマネージャー頼みなので、二人だけではどうしようもないのだ。

「ヒプノンの二人だよね?ここであってるよ。まぁ座って?」
「は、はぁ……」
「あ、雪の宿あるよぉ?」
未だ緊張気味のレミナをよそに、美音はすでにお菓子に気を持っていかれ、自然体を取り戻していた。

「あ、あの……初めまして、ヒプノンのレミナです」
いつまでもマネージャーに頼ってばかりじゃいられない。
そんな思いからか、レミナは礼儀正しく挨拶をして頭を下げてから席に座る。

「ほら、美音も……」
「あ、うん。ヒプノンの美音です!よろしくね!?」
「もう!敬語で!……すいません」
美音の分も頭を下げるが、相手の男性は怒っている様子も無くニコニコしている。
それを見てレミナも少し落ち着き、改めてその男性を見る。

伸びきったシャツに清潔感が無く脂ぎってボサボサの髪。
徹夜も多いテレビ局ではよく見かけるタイプではあるが、打ち合わせに来るには少し常識が無いと言わざるを得ない。

「僕は日比谷です、今度二人に出演してもらう特番のプロデューサーをやらしてもらいます」
「プ、プロ……」
「え!?おじさんプロデューサーなの!?ADさんかと思った!」
「こ!こら!美音!失礼でしょ!?」
レミナが飲み込んだ言葉を美音は簡単に言ってしまう。
しかもお菓子を食べながらだ。

「はは、いいのいいの。こんな見た目だしね?」
「ホントすいません」
「二人ともテレビで見たまんまだね」
「よ、よく言われます……」
意外と人の良さそうな人で安心したレミナ。
マネージャーはまだ来ないが、少しぐらい話を進めてもいいかもしれないと思い始める。

「じゃあマネージャーさんはまだみたいだけど、時間もないし今度の特番について説明していってもいいかな?」
「はい!」
「いいよぉ!」
「美音!打ち合わせ中はお菓子中止!」
「マ、マジか……」
この世の終わりの様な顔でお菓子を見つめる。

「はは、じゃあ初めに質問ね?二人はアイドルの仕事に誇りを持ってますか?」
「へ?」
突然の質問に度肝を抜かれ、茫然としてしまう。

「うん!誇りを持って仕事してるよ!」
「あ、は、はい!私もです!」
こういう時美音は本当に頼りになる。
明け透けのない性格なだけに、考えるということをしないのだ。

「じゃあ仕事を断るなんてことも無いよね?」
「……え?いや、それは……」
いくらなんでもあまりに無茶な仕事は断るだろう。
アイドルなんだしなんでもありと言う訳にはいかない。
美音でさえ即答せずに少し黙っている。

「いやいや、今仕事に誇りを持ってるって言ったよね?誇りある仕事に下も上もないし、嫌だとか好きだとかそんなんで仕事してるんじゃないでしょ?」
「は、はい……それは……」
「うん、そうだよねぇ」
男の目は妙に力があり、話を聞いていると吸い込まれそうな気さえしてくる。
二人は少しずつ頭がボーっとしてくるのに気付きながらも、ただ男の声を必死に聞くことしか出来なくなる。

「じゃあ言われた仕事はなんでもするよね?全力で、必死に……それがファンの為であり、アイドルの仕事なんだから」
「はい」
「……うん」
二人は少しズレたタイミングで答える。
二人とも瞼が重いのか、寝てしまいそうな仕草で少し身体も揺れている。

「アイドルは見られる仕事、自分の身体を売る仕事、売れるものは何でも売るし、ファンが求めるものは何でも出す。どんなに自分が嫌で、どんなに恥ずかしくても、仕事ならばやらなくてはならない」
「そうです」
「頑張る……」
一度完全に目を閉じ、再び開いた彼女たちの目にはすでに力は無く。
言われたことを全て頭に刻まれているような感覚になる。

「番組を作るスタッフの言うことは絶対。嫌で嫌でしょうがなくてもアイドルならばやりきるのが当然。僕が言えばなんでもする。カメラに撮られてる内はこちらの指示に絶対服従」
「絶対……」
「服従……」
人形のようになった二人は、ただ男の言うことを復唱するように口ずさむ。
それを見て男はニコッと笑い、手を叩いた。

「はい!じゃあ早速明日から撮影ね!」
「え!?あ!あの!あれ!?」
「ふええ!?美音今寝てた!?」
「ち!ちが!美音は寝てません!もちろん私も寝てません!……よね!?」
「うん、ちゃんと二人とも聞いてたよ?」
「はい!」
「そうかなぁ?」
「そうなの!」
まさかプロデューサーが直々に説明してくれたのに、寝てましたとは言えない。
なんとかその場は取り繕い、丁寧に挨拶してからその場を去る。

「結局アキラさん来なかったね?」
「うん、電話してみよっか……」
しかし電話に出たマネージャーからは、明日の集合場所と時間しか伝えられなかった。
現地集合、タクシーで向かえとの指示である。
こんなことは初めてだが、二人は撮影のことよりマネージャーが体調不良なのではと思い、そのことばかり心配していた。
今まさに心配しなければならないのは自分の身だということを知る由もなく……。





現在時刻は19時ちょっと前。
ヒプノンの二人は年齢的に夜間の仕事は入れられないので、いつも帰りが凄く遅くなるなんてことはあまりないが、こんなに早い時間に仕事が終わるのもあまりあることじゃない。

更には最近個人活動が多い二人は、あまり一緒の時間に仕事が終わるということは無かった。
実際今日も二人は別の仕事でこの局に来ていたが、たまたま終わる時間も近かったので、先に終わったレミナが美音の収録を見学し、その後一緒に楽屋に帰ってきたのだ。

「ねぇねぇ、レミナはどっち食べる?きのこ?たけのこ?」
「美音はどっちがいいの?」
「美音はレミナと一緒に二つとも食べたい!」
「もう、初めから決まってるじゃない」
レミナはドラマでは絶対に見せない緩み切った顔をしている。
美音も心なしかいつもより甘えた表情である。

「じゃあまずはたけのこからね?はい美音、あぁーん!」
「もぉ、レミナったらぁ。美音は自分で食べれますぅ!」
「……あぁーん」
レミナが泣きそうな顔でリトライすると、美音は少し焦った後勢いよくお菓子にかぶりつく。
勢い余ってレミナの指まで一緒に食べてしまうほどに。

「あはっ!美音ったら!指まで食べちゃだめだぞぉ!?」
「なんか……最近レミナの壊れ方が怖いよ……はは……」
レミナの愛情表現の加減無さに美音が苦笑いを強いられていた時、ドアからノックの音が聞こえる。

「はぁーい、誰ですかぁ?」
「日比谷です、覚えてないかな?」
野太い男の声ですぐに二人は思い出した。
しかし二人は少し困った顔をしている。
なぜなら二人とも打ち合わせの記憶はあっても、収録の記憶がないのだ。

打ち合わせの次の日が収録だったのは確かなはず。
それなのになぜかその記憶がない。

「入っていいかな?」
「……いいよぉ!」
美音の返事を聞いて入ってきたのは間違いなく日比谷プロデューサーだ。
しかし二の句を告げる前に二人は全力で思い出そうとする。
見た目が汚い服に不潔な臭いの男性であっても、あくまで相手はプロデューサーだ。
番組について覚えてないなんてことは口が裂けても言えない。

「お、ちゃんとレミナちゃんもいるね?」
「あ、はい……おはようございます……」
レミナはその言葉に引っかかる。
今この楽屋にいるのは自分の意思であって、日比谷に言われたからじゃないからだ。

「あの、どういったご用件で?」
「この前撮影した特番が今日放送だからね、それを伝えに来たんだよ」
「特番……」
やっぱり記憶にない。
二人は営業スマイルのまま固まっている。

「19時からだから是非見てね?自分の仕事ぶりを見るのもプロとして当然のことだもんね」
一瞬日比谷の目が光ったかのように錯覚する。
しかしその瞬間まるで目の輝きを日比谷に吸い取られたかのように二人の目から輝きが失せる。

「はい、当然です」
「ちゃんと見るよ」
力なく答える二人を見て日比谷は満足げに頷く。

「見る時は正直な感想を言うのも忘れちゃダメだよね?」
「もちろんです……」
「あたりまえだよ……」
「あと僕もこの楽屋で一緒に見るけど、僕がいるってことは忘れていいから」
「忘れます……」
「いるけど……いないこと……」
日比谷はそれっきり言葉を発することは無く、黙ってテレビを点ける。
テレビから賑やかなCMソングが流れると同時に二人の目にも力が戻り、慌てて周囲を確認してからテレビの前に移動する。

「あの人どこいっちゃったの?」
「えっと……帰ったのかな?」
「挨拶し忘れちゃったね」
「今度謝っておかなきゃ」
二人の間に座っている日比谷の存在にまるで気付いていない。
無視しているというわけでは無く、本当に気付いていないのだ。

「あ、始まるみたいだよ?」
「美音実はこの収録覚えてないんだよね」
「じ、実は私も……」
毎日目まぐるしく働いている二人にとっては、初めての経験と言う訳では無かったが、二人でやった特番を忘れるなんてことがあるだろうか。
疑問は尽きないまま番組のオープニングが始まる……。





『春を先取り!ヒプノンスタジアムー!』
『いええー!』
レミナのどなりで華々しく始まったはいいが、そのセットにもまるで記憶がない。
自分たちがそこに映っているのに、まるで誰か代役がやっているかのような錯覚。

観客席も一瞬映りこむが、集まっているのはコンサートなどでもよく見るファンたち。
男性もいるが女性も多い。
同年代の女の子も多数いる。
なにもおかしな点は無いのにも拘らず、妙な胸騒ぎがするのだ。
この先を見てはいけないのではないか……。

『えっと……このヒプノンスタジアムですが、私達ヒプノンの二人が体当たりで色々なことに挑戦していく内容になってます!』
『あのねぇ!二人が対決していくんだよ!』
『どっちが勝つか勝負だね!』
『最後の得点は10倍です!』
『美音!?それまだ言っちゃダメだから!』
『え?そうなの?』
出だしは好調、いつものヒプノンらしい空気に会場のファンたちも和やかなムードで見守っている。

二人の衣装は今度出る新曲の衣装である。
卒業ソングということもあり、正統派な制服を模したものだ。

『では最初のコーナー!と言いたいところなんだけど……』
『だからレミナ、トイレは先に行っときなって言っといたでしょ?』
『違うわよ!あんた台本読んでるでしょ!?』
『と言う訳で製作費が足りませんでした!』
『読んでるじゃない!』
お客がファンで固められていることもあり、会場は笑いに包まれている。
出だしは好調のようだ。



「お客さんも初めから盛り上がってるしいい感じだね」
「いつものファンが多いから安心だよぉ」
二人はテレビに映る自分たちを見て、自然に感想を言っていく。



『まぁ美音が言ったことは本当です、実は製作費があんまり下りなくて……』
『あれ?これお蔵入り……?』
観客席から必死のブーイングが起こる。

『ですよね?だから……初めのコーナーは『オークション対決』です!』
『なにそれ!面白そう!』
『だから台本読んでるでしょ!?って……読んでるわよね?』
『なんだっけ?』
『マジかっ!?もう!私が説明するから美音もちゃんと聞いといてよね!?このコーナーは私たちが出す商品を、会場のお客様に買っていただき、その費用を足りない製作費に充てようという企画です!』
『しかも出てくる商品は私たちの私物だよぉ!』
『知ってたよ!知ってるって知ってたよ!』
ヒプノンの私物が商品だと聞き、会場のファンたちのボルテージは一気に上がる。

『ちなみに二人で二品ずつ出して、高い値が付いた方が勝ちとなります!』
『最初の商品はレミナからだよね!』
『はい!じゃあ私の私物からです!負けないわよぉ?』
画面に映るレミナはいつもより少しテンションが高いような気もする。
違和感はあるがそれも二人だけの番組なのだから当たり前にも思える。
しかしなにより不思議なのは未だに当時の記憶がまったくないことだ。
二人とも始めて見る番組を見るようにドキドキしながら見入っている。

『じゃあエントリーナンバー一番!レミナからの商品です!』
美音が大げさにレミナを盛り上げる。
レミナは少し恥ずかしそうに一歩前に出て、アシスタントが持ってきた袋からなにかを取り出す。

『私が出す商品はこちらです』
密封された袋から取り出した物を、カメラに向けて紹介する。
それは白いニーソックスであった。
セットの後ろにある大きなモニターに映し出されたそれを見て、ファンたちは一瞬思考が遅れる。

『これは私のお気に入りのニーソックスで、仕事に行く時とか私生活とかでもよく履いている物です、というかさっきまで履いてました!』
レミナが頬を軽く染めながらそう言うと、観客席から割れんばかりの驚きの声が漏れる。
しかし驚いているのはテレビを見ている実際の二人も同様だ。
だが驚きはそれだけではない。
次の瞬間レミナは頭が真っ白になってしまった。

『あ、あの、でもでも、私って実は……足が臭いんです……』
騒いでいた観客の声はその発言で一気に静まる。
確かに最近のアイドルの中には、なんでもネタにするような者もいる。
むしろこれが美音だったならば、まだなんとか納得も出来ただろう。
しかしレミナは違う。
正統派女優として名を馳せるレミナは、肌の露出さえ制限されていて、尚且つイメージを損なうような演出は一切NGだったのだ。

そしてレミナ自身、それだけは決して誰にも知られたくない事実だった。
それはレミナの最大のコンプレックスであり、美音にさえ知られたくないことだったのだ。
それを平気でテレビで話す自分が信じられずに、レミナはだらしなく口を半開きにしながら震えている。

『皆には内緒にしてたんですけどね?私汗っかきで、一日仕事した後の靴下は鼻が曲がるほど臭いんです』
赤裸々に事実を語る自分が信じられずにいた時、隣にいた美音がボソッと発言する。



「確かに……レミナの足ってちょっと臭い時もある……」
その発言に一番驚いたのは美音本人であった。
思っていても口に出すことは絶対にないことだ。
しかしそれが口を突いて出てくる。
それはレミナも同じであったようだ。

「一番知られたくなかったのに、皆に知られてしまうなんて……なんなのこれ……」
それは二人の正直な感想である。
日比谷に言われた通り、二人は感想を言わなければならない。
なぜだか分からないが、身体が勝手にそうしてしまうのだ。




『そんな私の臭い靴下だけど、買ってくれる人がいるなら……』
少し長めの沈黙が続く。
レミナは靴下の入った袋を持ったまま、笑顔で固まっている。

『……い、1万!』
沈黙を破ったのはファンの声だった。
男性ファンの一人が挙手して金額を言ったのを皮切りに、次々と値段が被せられていく。

『おい!これって後払いありか!?』
しばし熱戦が繰り広げられる中、ある男の発言で一旦競りが治まる。

『もちろんです!契約書にサインをお願いすることになりますが……』
『じゃあ25万だ!』
その声を最後に声は止み、最終落札者はその人に決定した。
痩せた男はイソイソと観客席から降りてきて、レミナの前に立つ。

『おめでとうございます!私の臭い靴下を買ってくれてありがとうございます!いっぱい使って下さいね!?』
『う、うん……』
目の前の少女は誰なのか、そう言った目でレミナを見つめるファン。
使うという表現は露骨にそういう目的を想像させる。
受け取ったファンはすぐにそれをカバンに詰め込み席に戻る。
女性ファンはすでに少し引いている。

『なんか今日のレミナおかしくない?』
『レミナちゃんどうしちゃったの?』
直も笑顔を続けるレミナにファンも戸惑いを隠せない。
現在のレミナも青い顔をしながらテレビを見つめており、美音は居心地悪そうにしている。

『じゃあ次は美音の番だね!』
『うん!』
主役が美音に移り、カメラがアップで捉える。
その瞬間テレビを見ていた美音は嫌な予感が止まらなかった。
テレビ的に先ほどの物よりランクが下がるような物は出すはずがない。
それはバラエティの経験が多い美音なら一瞬で考え付く事だった。

先ほどレミナは自分のコンプレックスさえ売りに出したのだ。
それなら自分は?
美音の心臓が激しく動悸する。

『じゃあ!次は美音の商品だね!美音のもレアレアな私物だよぉ!?』
テレビの中の美音は今の美音の気持ちなどお構いなく進行していき、ファンたちはさっきの変な空気を忘れようと必死に声援を送っている。
しかしそんなファンたちの声援もアシスタントが持ってきた物を見て時期にまた驚きに変わる。

『じゃあん!抜きたてホヤホヤの美音の体毛です!』
それは束になったアイドルの体毛、しかもまだ幼い少女の物なのだ。
それを自らが売りに出している、それだけでも非現実的だ。
それもアップにされた体毛は縮れていて、明らかに脇か陰部の物であることが分かる。

当の本人はテレビで誇らしげに自分の体毛を見せびらかしている自分に驚きを隠せない。
なぜならそれはレミナと同じように自分のコンプレックスであったからだ。
幼いころより発育の早かった美音は、下の毛、つまり陰毛が生えるのも速かった。
恥ずかしく思って剃り出してからは、更にその濃さを増していき、今では誰かと比べるまでもなく剛毛だと自分で分かるぐらいにはなっていた。

剃れば剃るほど濃くなることが分かってからは、グラビア撮影時などで支障が出ない程度の処理以外はしないようになった。
しかしコンプレックスゆえに少しでも減っていたら気付くのでは?
美音は自分のことながら不思議に思うも、思考が定まることはなくどんどん頭が真っ白になっていく。

美音が驚きで固まっている間も、番組は無情にも進んでいく。
今はあまりの出来事に女性ファンから批判が起こっている所だ。

『ちょっとありえなくない?』
『なに?これ……こんなことさせていいの?』
『収録止めた方がいいんじゃない?』
しかしそんな小言もモノともしない美音は、更に挑発するようなことを発言する。

『ちなみにこれ、どこの毛だと思う!?実はね!下の毛なの!美音マン毛ボウボウだからいくらでも採れちゃうよ!?一週間もすれば結構生えてくると思う!』
この発言を得て、男たちの熱は一気に最高潮になる。

『5万!』
『10!いや!15万!』
『俺は17万出す!』
女性たちの悲鳴や批判を無視して、次々に値が上がっていく。
笑顔で美音が見届ける内にやがて声は止み、最終落札者が決定する。

『じゃあ……18万円の人!こっち来て!』
恥ずかしそうにやって来た男は、美音の父親より年が上の男性だった。
禿げた頭を掻きながらやって来た男と握手を交わし、契約書にサインを促す。
それを見守った後、袋に入ったマン毛を手渡す。

『美音のマン毛、臭い嗅いだり舐めたりしちゃダメだよぉ?いつも蒸れて臭くなってるだろうから!』
男性陣は大いに盛り上がり、対照的に女性陣は明らかに引いている。
幼い女性ファンはあまり分かっていないようだが、一緒に来ている親が今すぐ帰るように促している。



「なんで?美音……そんなこと言わないよ?臭くない……臭くないもん!」
テレビを見ている美音は震えている。
すでに目に溜まった涙は零れ落ち、握りしめた拳にポタポタと落ちている。

「美音の下の毛……私も欲しいな……」
そう言ったレミナはすぐにハッとして口を手で押さえたが、美音は聞き逃さなかったようで、信じられないといった目でレミナを見ている。



『最後は二人同時です!』
『あ!でもでも!値段は別々に付けるからね!』
テレビからは自分の声が聞こえる。
しかしそれは悪魔の声なのだ。
二人はほぼ同時にその場を立って放送を止めに行こうとしたが、足が固まっているかのごとく動かない。

テレビの中ではアシスタントが袋に入った白い布を持ってきていた。
そして流れから言ってそれは明らかに……。

『これはこの前のコンサートの時、私たちが履いていた下着です』
『美音たちの汗とか!エッチなお汁とかを吸ったパンツですよぉ!』
立ち上がろうと必死になっていた二人は再びテレビに見入る。
この二人はなにを言っているのだ?
パンツ?コンサートの時の?

『これが証拠の写真でぇす!』
画面に映し出されたのは二人のパンチラ画像だ。
決して外部に漏れることは無いはずの、スタッフがチェックして消していた画像。
それが今堂々と画面に映っている。
それだけではない、今からその時のパンツを売ろうというのだ。

『ちょ!ちょっと!やりすぎでしょ!?』
『なんなのこれ!?犯罪じゃないの!?』
『レミナちゃん!そんなことしちゃダメだよ!』
『頭おかしいんじゃないの!?』
女性ファンたちは次々に悲鳴のような声で止めに入る。
しかし不思議と席を立って帰るものはいない。
先ほど帰ろうとしていた母娘連れさえもまた座っている。
女性達の制止が止むことは無いが、それより熱く大きな声で男性たちが金額を競いあう。

『美音たんのパンツに100万だ!100万出すから!』
『俺はレミナのパンツに110万!これでどうだ!』
『……これで終わり?美音の剛毛マンコに当たってたパンツだよ?Cカップのブラもセットなんだよぉ?』
『私のマンコ、美音なんかとは比べものにもならないぐらい臭いんですよ?汗っかきだからよくお汁も吸ってますよぉ?レミナのマンコの臭さ、嗅いでみたくありませんか?』
『美音に150万!』
『レミナの方に155万だ!』
一度止まりかけたオークションは更に値を上げていく。
女性ファンたちはその発言で、ますます嫌な顔になっていった。

『……美音のパンツ、200万!他にはいない!?』
『私の方は190万でいいですか?』
『じゃあ決定!200万円!』
『私も決定です!190万円!』
落札した男達は興奮しながら降りてきて、二人の元へ向かう。

『美音のパンツで巻いたり擦ったりして遊んでね?』
『え、えへへ!いいのかなぁ!?本当にしちゃうよ?』
買い取ったのは明らかにオタク風な太った男。
美音と握手をしてパンツを受け取る。



「あんな人に……美音のパンツ……いや、き、気持ち悪い……」
そのシーンを見ながら、美音が正直な気持ちを吐露する。



『私のパンツ、染みも付いてて臭いけど、いっぱい使って下さい!』
『う!うん!いっぱいオナニーするね!うひひ!本当に臭そうだ!』
こっちは髪の毛が油でベタベタな男。
目の焦点があっておらず、人として嫌悪感を抱いてしまうタイプだ。



「なんで……なんで私があんな人に……う、うぅ……」
レミナもテレビを見ながら泣いている。
それでもテレビから目を逸らすことは無い。
なぜならこれも仕事だからである。



『ありがとぉ!』
『ありがとうございます!』
『今回の勝者は美音が218万円で、レミナが215万円だから美音だね!』
『美音のマン毛って私物に入るの?』
『もちろんだよ!私の物って書いて私物だよ!』
『そう言われたらそうかぁ』
放送を見ている二人と違い、笑顔で落札者にお礼を言った二人は、再び進行に戻ろうとする。
しかしそれは叶わず、女性ファン達の声が二人の声を超えてくる。

『なんなのこれ!?こんなのブルセラみたいなもんじゃない!』
『最低よ!あんた達売れる為ならなんでもするの!?』
『見損なったわよ!気持ち悪い!』
『ねぇママ、オナニーってなに?』
『ちょっと!そんな言葉覚えちゃ駄目!あんた達のせいよ!どうしてくれるの!?』
女性ファンの怒りを前にしても、二人は笑顔で番組を続けていく。
それもそのはず、なぜだか女性ファンの罵倒もしばらくしたら止むのだ。
あくまでも番組のスパイスであるかのようなタイミングの良さで……。



『じゃあ次のコーナーいってみましょう!』
『次は一発芸に挑戦だよぉー!』
後ろの画面に一発芸対決の文字が躍り出る。
男たちは変わらず、いや更に気合が入って応援しているが、女性ファンは未だ怒り心頭だ。

『じゃあちょっと着替えてくるから待っててね!』
美音がそう言い、二人はお辞儀をして舞台袖に去っていく。
その間カットが言い渡され収録は一旦ストップした。

観客たちはそれでも興奮冷めやらぬ雰囲気であり、会場は熱気に包まれて、かなり混沌とした現場になっている。
しばらくして二人が黒いマントの様な物を羽織って登場するまで、お客たちの興奮が冷めることは無かった。

登場した二人はいつもの笑顔のまま趣旨説明を行っていく。
先ほどの一件がなければいつもと変わらない二人なのだ。

『審査をするのはファンの皆です!』
『最後に集計を取るから、その時に面白かった方のボタンを押してねぇ?』
観客たちは事前に渡されていたボタンに一瞬目を移すが、すぐにまた二人の方へと目線をやる。
なぜだかさっきから顔を背けたくなるような時も目を離せない。

『じゃあ今度は美音からだね!じゃじゃーん!』
美音がマントを脱ぎ捨てた瞬間、一瞬の遅れと共に大きな悲鳴が生まれる。
女性たちの金切声と男性陣の興奮の咆哮だ。
しかしそれさえも掻き消える程の声でテレビを見ていた美音が叫ぶ。



「きゃあああああ!止めてええええ!なんでっ!?なんでそんな格好してるのおおお!」
それもそのはず、美音は上半身裸に黒いスパッツのみを履いた出で立ちだったのだから。
10歳にしてCカップを誇る美音の胸が惜しげもなく出され、そのピンク色の綺麗な乳首さえ外気に触れている。

決して見えてはいけないはずのもの。
アイドルだからというだけではない、その年にしてもそうなのだ。
今ありえないことが起きている、それを再認識させられる一瞬だった。
しかしそれはまだ序章でしかない、美音の突然の豹変に会場は更に混沌の渦へ飲み込まれていく。



『ふおおおおぉ!』
急により目になって叫び始める美音、両手をバタつかせて身体を揺らす度に胸も左右に揺れる。
観客が呆気にとられている内に、美音は右手をスパッツの中に突っ込み、股間の位置から握りしめた拳を突き出してスパッツを伸ばす。

『勃起いいいいい!勃起っきいいいい!皆にパイオツ見られて美音勃起してまああっす!ふひいいいい!ぶほおおおお!』
狂ったように拳を突き出すその姿はあまりにも下品であり、その表情はアイドル、いや女としてありえないほど間抜けに歪んでいる。
唇を伸ばして寄り目のまま叫び続ける。
見えやすいように客に近づくと小さな女の子が泣いてしまっている。
しかし男たちは少しでも近くで見ようと身を乗り出しているのだ。

『ぶおっきいいいい!美音の極太チンポおおおお!勃起いいいい!』
スパッツが伸びることで、上から見ている客からはその中身まで見えてしまっている。

『う!嘘だろ!?ノーパン!?』
『お!おい!こっちにも!こっちにも見せて!』
『今!ちょっとだけ割れ目見えたぞ!?』
『美音ちゃああん!こっちいいい!』
『はああい!勃起いいい!言われたとおり勃起しまああす!』
観客の前を行ったり来たり、胸を揺らしながらスパッツを押し出す。
腕の隙間からその中身が見えることなど気にも留めず、ただひたすら声のする方へ歩いて行くのだ。

『なにやってるの!?』
『変態!気持ち悪いわよ!』
『もういや!いつもの美音ちゃんに戻ってよ!』
女性たちの声になど耳を傾けず、しばらくして終了を告げるブザーが鳴るまで美音の芸は続いた。

ブザーが鳴った瞬間、美音はすぐさま黒いマントを拾い身体を隠す。
その顔はさっきまでとは違い羞恥に歪んでいる。

テレビを見つめる美音も同じように、いや更に顔を赤くさせて大粒の涙を流している。
それを横目で見つめるレミナの顔がどんどん青ざめていく。
なぜなら順番的には……。

『じゃあ次は私の番ね……』
テレビに映るレミナがマントを落とす。
すると観客の視線が一気にレミナに移る。
レミナの服は全身を覆うゴムタイツだった。
しかしそれは布が薄すぎる上に白であり、乳首も割れ目もバッチリ見えている。

『い、今から!このコンドームスーツを膨らませたいと思います!』
自らが来ている服をコンドーム呼ばわりするレミナ。
客たちはレミナの言葉を聞いても先の展開が読めない。

『いき……い、いきます……』
その表情は辛うじて笑顔だが、身体は小刻みに震えている。
観客席に背を向けるように回転したレミナは、馬跳びのようなポーズになってお尻を突き出す。
ピッチリと身体に張り付いたゴムタイツからは、レミナの肛門さえも透けて見えている。
なによりカメラはそのアップを撮っていて、セットに設置された画面にデカデカとその光景が映っているのだ。

しばらくそのポーズのまま静寂が続き、スタジオの中の時間が止まったかのように思われてくる。
しかしその時間はいとも簡単に動きだす。

ぷっ、ぷすぅー。
空気の抜けるような気の抜けた音が聞こえる。
誰でも聞いたことのある音、オナラの音である。

普通なら気付かなかったかもしれない、しかしお尻の近くにガンマイクを近づけており、更には大きくそのお尻が画面に映っているのである。
音と共に肛門が軽く開く姿さえ確認できた。

観客たちがまたざわつき始めようとしたその時……。

ぷっ!ぷぅ!ぷぷぷっ!
連続で放屁の音が聞こえる。
いつの間にか画面の右上にはレミナの赤くなった顔がワイプで抜かれている。

『レミナちゃん……オナラしてるの?』
『お、おいおい……開くとこまで見えてるぞ?』
『う、てか臭い……』
『ママ!レミナちゃんオナラしてるよ!?』
『だ、黙ってなさい……』
観客たちは最早騒ぐどころではなく狼狽えている。
あまりにもありえないことが目の前で起こっているのだ、無理もない。

『あ、あれぇ?オナラじゃコンドームスーツは膨らみませんでしたぁ!ぷっ!』
当たり前のことを言いながらも再度オナラを漏らす。
全てはカメラに映され、保存されていく。
そして観客の目、記憶にも刻まれていく。

意外にもその映像を見ていたレミナは微動だにしなかった。
いや、出来なかったのだろう。
茫然とそれを見つめながら、無表情なまま涙を流す。
しかしそんなレミナの気持ちなどお構いなしに状況は悪化する。

『で!でもでも!このスーツは優秀なのです!』
レミナはやっと真直ぐにこちらを向くように身体を起すと、真っ赤な顔のままそう言い放つ。

『なんたってスキンいらず!だってこの服自体がゴムだから!ってことで性能チェーック!』
レミナはアシスタントが持ってきた水鉄砲の様な物を受け取る。
中にはまだ何も入っていない。

『絶対に中にはなにも入らないから、なんだって入れていいんですよぉ?』
挑戦的な目で観客を見渡す。
今からこの水鉄砲がどのように使われるのか、察しのいい観客たちはすでに気付いていた。

『じゃあそこのお兄さん!この桶の中に好きな物を入れて下さい!』
不意に観客の一人を指名する。
指名されたのはお世辞にも印象がいいと思われる男ではなかった。
街を歩くだけで人が避けそうな、普段なら潔癖気味のレミナが一番苦手とするタイプの男。

『え?お、俺?入れるって……なんでもいいの?』
この男もこの後の展開を予測出来ているようだ。
困惑した物言いのわりには顔がニヤついている。

『なんでもいいですよぉ?だってこれはコンドームスーツですから!』
それを聞いた男は息を荒立てながら桶の前に立つ。
観客の子供や一部の女性たちは、なにをするのかまだ分かっていないようだ。
入れるもなにも急に言われて、なにも持っていかずにどうするのか、困惑気味に男を見つめる。

テレビを見ていたヒプノンの二人もそれは同じで、行き成りな展開についていけていない様子。
ただ成り行きを見つめるしか出来ない。

男は桶の前に立つとなにやらゴソゴソし始めた。
カメラに背を向けているため、なにをしているのか分からないが、どうやらズボンを触っているのだということは伺える。

『お兄さんの大きいですねぇ!あ!皮被ってる!美味しそう!』
『え、えへへ!そうかな!?』
男とレミナの会話に会場の男たちが湧く。
しかしそれでも分からない者たちにはなにが行われているか不明なままだ。
そして少しの間を空けて、ジョロジョロという音が会場に響く。
どこかでよく聞くその音で、今度は女性達の悲鳴が起こる。

『ちょ!ちょっと!あの人なにしてるの!?』
『止めさせなさいよ!どこだと思ってるの!?』
『ママ、あの人オシッコしてるの?』
『……まさか』
次第に音は収まるが、男がその場を離れる気配はない。
それどころか男はその場で右手を強く上下させ始める。

『がんばれがんばれ!レミナが見守ってますよ?』
『す!凄い!こんな!夢みたいだ!』
男は一分と経たない内にまたなにかを吐き出し、桶を汚していく。
最後に行儀悪く痰を吐き、ズボンを戻して席へと戻っていった。

大きなスクリーンに桶の中身が写される。
黄色い液体の中にドロドロとした白濁液が浮き、その近くにはさらに濃い色の痰が浮いている。
観客たちは最早声も出ないようだ。

『ご協力ありがとうございました!でもでも!どんなものもこのコンドームスーツは通しませんよ!?』
自信ありげにそう言いながら、レミナが水鉄砲の中に汚水を溜めていく。
躊躇なく手を汚水に浸し、痰や白濁液もしっかりと入れていく。
出来上がったのはなんとも禍々しい水鉄砲、それを誇らしげに掲げ……。

『じゃあ行きますね!?』
まるで食レポでも始めるかのごとき手軽さで、水鉄砲の先端を自らの秘部に押し当てる。
濡れた先端が当たり、ただでさえ透けていた白い生地が更に肌を顕著に浮かす。



「まさか……」
あることに思い当たったレミナが肩を震わしながら呟く。
テレビの中のレミナは笑顔のまま水鉄砲を押し込み、先端部分を飲み込んだ。

「いやああああ!止めてえええ!あああああ!」
咆哮が楽屋を揺らす間も、番組の進行は止まることは無い。
少し辛そうな顔をしたレミナが、水鉄砲を咥えたままヨタヨタと歩き出す。
観客席の前まで行き、咥えこんだ水鉄砲を突き出すように腰を前にだした。



『じゃあさっきのお兄さん、引き金を思いっきり引いちゃってください!』
『い!いいの!?』
『押し込んじゃダメですよぉ?』
『は!はい!』
男は慌てて前に出て、恐る恐る水鉄砲の持ち手を握る。

『あん……』
小さな喘ぎ声が聞こえた瞬間観客が更に湧くが、それもすぐに静まった。
これから行われることに集中し始めたのだ。

『い、いくよ?』
男が恐る恐る引き金を引く。
ぴゅっという音がして、またレミナが小さく喘ぐ。

『あぁん、もっと……もっとしても大丈夫ですよ?』
男は顔を真っ赤にして何度も何度も引き金を引く。

『孕め!孕めえええ!』
『ひゃぁ!お兄さんったら!なんか暖かいのが……中に……』
あまりにもシュールな光景にスタジオは混乱する。

『なんなの……これ……』
『うそでしょ?こんなの……』
『うおおおお!俺のレミナたんがあああ!』
『俺も孕ませてえええ!』
観客たちの阿鼻叫喚を受けるも、レミナは目を閉じてなにかを感じるように頬を染めている。
それを見ながらテレビの前のレミナは、必死に吐き気と戦いながらそれを見つめる。
目を閉じてしまいたい、いっそこのまま逃げ出したい。
なのに身体がいうことを聞かないのだ。

『はい、中身が無くなりましたね?』
遂に水鉄砲の中身が無くなった。
男が握ったままの水鉄砲から腰を離すと、先端で布が押し入れられたままの秘部が露わになる。

『じゃあカメラさんアップで撮ってください!』
レミナの指示通りにカメラが秘部をアップにする。
割れ目と称されるほどにまだあどけないそこの形が、ありありと分かってしまう。
それだけではない、濡れたその部分は未だ大量の汚水を流そうとはしないのだ。

『布を戻せば全部出てくるはずですよ?』
そう言ったレミナは、笑顔で股の部分の布を伸ばした。

『……あれ?』
確かに布と一緒に多少の汚水は流れ出た。
しかし明らかに量が少ない。

『あ、どうやら失敗みたいですね!えへへ!』
あどけない笑顔とは対照的に、今頃になってドプッいう音と共に秘部から汚水が流れ出る。
まるでお漏らしをしているかのようなその光景は、今やほぼ裸と言っても過言では無いそのスーツ姿と相まって、卑猥すぎる印象を与えている。

『じゃあこの対決の判定は!お客さんに決めてもらいましょう!より面白かったと思う方のボタンを押してください!』
『公平にお願いだよ!?どっちのファンかは一旦忘れよう!』
今更そんなことは関係ないと思われるが、二人は進行通りの内容を続ける。
観客たちは事前に配られたボタンを押して、より面白かった方を選ぶ。
最早そんな企画に参加する余裕はないはずの客たちも、なぜかボタンを押してしまう。

『判定は!』
『ああ!レミナだぁ!』
『よっし!私身体張ったからねぇ!』
『美音だって頑張ったのにぃー!』
いつものように楽しそうにはしゃぐ二人だが、判定の結果を聞いた瞬間に黒いマントを離してしまっているがために、お互い先ほどの卑猥な姿に戻ってしまっている。
観客の男性たちはそれを見逃すまいと瞳に焼き付ける。



「そんな……なんで!なんでこんな!嘘よっ!」
テレビの前でレミナが震えている。
そして今度は美音がボソボソと喋り始めた。

「あんな格好を見られたらもうアイドルでいられないよ……」
それはどうやら感想のようだ。
それに続いてレミナも感想を述べる。

「妊娠……してたらどうしよう……怖い……怖い、怖いよぉ……」
二人の泣き顔を見ながらほくそ笑む日比谷の姿を二人が視認することはない。



『じゃあ次は!誰でもやったことのあるあの遊びで勝負したいと思います!』
『分かった!じゃんけんだ!』
『シンプルすぎるわよ!てか美音は知ってるでしょ!?』
最早彼女たちのトークを聴く者はいない。
男たちは次の痴態に胸躍らせ、女たちは早く終わってくれるように祈っている。
着替えを済ました彼女たちは今、普段着の様なラフな格好になっている。

美音は白いパーカーの下に黄色いタンクトップ、ボトム生地のミニスカートを着て女の子らしく。
レミナは黒いジャケットの下にシンプルなシャツを着こみ、下もジャケットと合わせた黒いズボンを履いて、少しボーイッシュに決めている。
テレビを見ていた本人たちはそれが自分たちの私服だとすぐに気が付いた。
レミナだけ靴下を履いていないのは、先ほどオークションで売ってしまったからであろう。

『今度の勝負はこれ!『だるまさんが転んだ』です!』
『それだってシンプルじゃーん!』
予想と違ったからか、男たちは少し残念そうだ。
それとは反対に女性たちは、あくまで子供らしいその遊びに胸を撫で下ろす。

『でもルールはシンプルじゃないんだよ?』
『え?そうなの?』
『もう!美音ったら!ちゃんと分かってるの?じゃあルールを説明するから、美音もしっかり聞いておくように!』
『はいさー!』
ルール説明と同時にステージになにやらセットが運び込まれてくる。
それはバラエティ番組などでお馴染みの透明なお風呂と、なにやら服の様な物が何点か。

『今からだるまさんが転んだの要領であのお風呂まで進んでいきます、そしてお風呂に浸かって10秒耐えられたら勝ち!』
『あんまり難しくないね!楽勝!』
『でもお風呂に入る前に服は全部脱がなくてはいけません!』
それを聞いた瞬間男たちがまた騒ぎ出す。

『お風呂に入るんだから当たり前だよね!ま!それぐらいなら簡単だよ!』
『言うわね?ちなみにだるまさんが転んだのコールの後で動いたり、お風呂に10秒浸かれなかったりしたらペナルティーがあるからね!』
『なんですと!?してそのペナルティーとは?』
『それは……お楽しみです!』
『えぇ!?』
『というかそれは私も知りません!』
観客たちに笑いは一切起こらない。
それもそうだろう、今からステージの上で繰り広げられるのは、ジュニアアイドルのストリップショーなのだから。

『じゃあスタート地点に立って!』
『えぇ!?もう始めるの!?』
『お願いします!』
『待って!待ってよぉ!』
アナウンスでスリーカウントが取られた後に、録音された音声でだるまさんが転んだが流される。

〈だるまさんがころんだ〉
『ふ、余裕!』
『服脱ぐの忘れてるわよ?』
『ふわ!』
二人は数歩歩き、レミナはしっかりとジャケットを脱いで片手に持っている。

〈だるまさんがころんだ〉
『今度は脱げ!……脱げない!』
『ボタンはちょっと不利だったか……』
美音のパーカーは腕で引っかかり、中途半端に脱げている。
対してレミナはすでにシャツのボタンを上から二つ外し、胸元が少し露出している。

〈だるまさんがころんだ〉
『よし!脱げたよぉ!』
『甘いわね!私はボタン全部取れたわよ!』
美音がパーカーを脱いだだけなのに対し、レミナはすでにシャツの前を肌蹴て、黄色いブラを露出している。

『うおおお!レミナたんのブラジャー!』
『小さくて可愛い!』
男たちの熱狂をよそに、二人は微動だにしない。
動いては負けだから当たり前だが、レミナは露出したブラを隠すことも許されない。

〈だるまさんがころんだ〉
『よし!』
『うわ!美音早い!』
今度は美音が一気にタンクトップを脱ぐ。
勢いよく脱いだために、止まった後も大きな胸が揺れている。
対してレミナはシャツを脱ぎ終えたところ、勝負は互角に戻った。

『美音ちゃん早くブラ取って!』
『乳見せろー!』
先ほど胸を見せてしまっていた美音は、すでに観客からヤジを飛ばされるようにまでなっていた。
普通ならブラでも見ることは叶わないはずなのに、自らの価値を下げてしまっているようだ。

〈だるまさんがころんだ〉
『ふへ!』
『ちょっと大丈夫!?』
靴を脱いで、急いで靴下まで脱いだ美音だったが、急ぎ過ぎて前向きに転んでしまったようだ。
お尻を大きく突き出して転ぶも、コールの後に動こうとはせず、そのままの体制を保っている。
レミナはズボンのボタンを外してチャックを下ろした所で止まっている。

『おおお!美音ちゃんのパンツ丸見え!』
『カメラ!カメラ後ろから撮れ!』
客が言うまでもなく、カメラが転んだ美音を後ろから撮影する。
大きな画面に美音のお尻が映し出される。

『くそおお!うご、動かないぞ……』
『凄い執念ね!?』
〈だるまさんがころんだ〉
『はきゃ!』
『よし!』
会話の途中でねじ込まれたコールで美音は俯けに倒れ込み、レミナがズボンを足首まで下ろした。
レミナの黄色い下着が露わになるが、やはり観客の目は肥えてきており、更に激しい露出を期待するヤジが飛び交う。

『トロトロやるな!早く脱げ!』
『レミナ!早くマンコ見せろ!』
『美音も起きてケツ突き出しとけよ!そのままパンツずらせ!』
まるで場末のストリップ小屋のような下品なヤジ。
それでも二人は笑顔を崩さず競技に集中する。

〈だるまさんがころんだ〉
『こ、こう?』
美音はまたお尻を突き出し、ミニスカートが捲れているのも構わずにパンツを下ろす。
観客の指示通りに動いたのである。
先ほど何人かには見られていたが、今度は全員にハッキリと秘部を見せつける格好になってしまった。
宣言通り年のわりには剛毛な秘部が晒され、先ほどと同じように画面に映し出される。

『うわ!マジで汚いまんこだな!』
『毛むくじゃらじゃねえか!』
『ケツまで生えてんじゃねえの!?はは!』
最早観客たちはそこにいるのが自分の大好きなアイドルだとは思っていない。
まるでお笑い芸人を見るような、いやもっと格下の見世物を見るような感覚だ。

『だ!だめだめぇ!』
不意にレミナが叫ぶ。
その時……。

『ふぎ!』
ズボンを脱ごうとしていたレミナだが、足がもつれて転んでしまったのである。

『ああ!レミナアウトー!』
美音がそう叫ぶと同時にSEが鳴り、一旦競技がストップする。
美音はパンツが膝上まで上がった状態のまま待機し、レミナが残念そうに起き上がる。

『罰ゲームはなんだろうねぇ!』
『楽しそうねぇ、くそぉ……』
レミナの前にトランプの様なカードが差し出される。
どうやらこれを引いて対応した罰ゲームをするらしい。

『じゃあ……これ!』
レミナが引いたカードには浣腸椅子と書かれていた。

『なにこれ?』
レミナが不思議に思っていると、ステージに食卓にあるような普通の椅子が運ばれてくる。

『なるほど、だから浣腸椅子なのね……』
やれやれと言った軽い感想を述べたレミナ。
しかしそれは観客が思っていた以上の罰ゲームだった。

椅子の上には人の手を模した物が付けられており、それは所謂地獄突きのポーズを取っていた。

『これに座ればいいの?』
『ええっとねぇ、なになに?これに勢いよく座って、2メートル椅子を後方へ動かす。だってさ』
『それは辛いわね……』
カンペを読みながら説明する美音と、それを聞くレミナはいたって平常心だ。
しかし観客たちの戸惑いは大きい。

『じゃあやるわよ?』
『レッツゴー!』
それでも彼女たちは笑顔で進行を続ける。
レミナはゲームの性質上ズボンを完全に脱ぐことも、また履きなおすことも出来ない。
パンツのままそこに座り、ズボンで足が不自由なまま踏ん張り、腰を突き出して椅子を動かさなくてはならない。

『ふぅ……』
『自分の間でやっていいよ!』
『うん、ありがとう……』
あまりにも馬鹿馬鹿しいことをするのにも拘らず、顔は真剣そのものだ。
それがまた滑稽で観客たちの失笑を誘う。

『行きます!ふん!』
思い切りよくレミナが腰を落とすと、ベストな場所に指が突き刺さる。

『ふごぉ!?ひ!ひっ!』
途端に情けない声を出して、レミナの整った顔が醜く歪む。
目や鼻が広がり、驚きと苦痛を表している。

『はは!なんだあの顔!』
『不細工だなぁ!』
『ふふ!いい気味!ほら!早く腰振って椅子動かしなさいよ!』
『レミナちゃん格好悪い!』
『ほんと、最低ね』
女性客さえからも見放されて罵倒され始める。
レミナはそれでも構わずに足を突っ張る。

『い!行くわよ!ふっ!ぬぎ!?うぐぐ!お尻にいい!お尻に入ってくるうう!』
『ケツだろケツ!』
『なに上品に言ってんだよ!』
『ケツううう!ケツの穴に指があああ!』
『ほら!もっと気張らないと終わらないわよ!』
『きゃはは!レミナちゃん面白い!』
笑われながらも腰を器用に振り、椅子を後方へ押していく。
鼻水を流しながら肩を震わせ、やっとのことで既定の位置まで椅子を動かした。

『はぁ、はぁ……ふぐ……』
腰を上げた時にまた無様な声を上げ、よろよろと歩き出す。
後ろから映し出されたレミナのパンツは、完全に肛門に入り込んでいた。

『罰ゲーム終了!さあ!元の位置に戻って!』
『ええ!?ちょっと休ませてよ!』
『勝負は非情なり!』
『ずるい!』
そして本当にすぐに勝負は再開される。

〈だるまさんがころんだ〉
『よおし!パンツ脱げた!そして立ったぞ!』
『ふん!私だってズボン脱いだわよ!』
美音は体制を持ち直してスカートとブラだけの姿に。
レミナは靴と下着だけになっていた。

〈だるまさんがころんだ〉
『よし!ブラも取れた!』
『私も!』
走りながらブラを投げ捨てる二人。
美音の大きな胸とレミナの小ぶりな胸が露わになる。
しかし観客はもうそれぐらいでは湧くことは無い。
次の展開に、いや二人が失敗することを期待している。

〈だるまさんがころんだ〉
『スカート取った!』
『私もパンツ脱げたわ!よかった!あとは靴だけ!』
人前で、しかも収録中に全裸になっているのにも関わらず、それを喜んでいる二人。
観客たちもそれを見て好き好きにヤジを飛ばす。

『おい痴女!もっと情けないポーズ取れよ!』
『そうだそうだ!サービスしろ!』
『なんか面白いことしなさいよー!』
あまりに勝手なリクエスト、勝負には一切関係ない。
しかし……。

〈だるまさんがころんだ〉
『ウキー!』
美音は腰を突き出し、尻を掻くようなポーズになり、鼻の下を伸ばしながら猿のモノマネをして止まった。

『美音やるわね……』
それを見たレミナは何故か驚きと共に焦りを感じる。
相手がそう出た以上は自分も乗っからないと空気を壊してしまう。

『なんだそれ!中途半端!』
『べダすぎだろ!ふざけんな!』
しかし客はそんなものでは満足できなくなっている。

〈だるまさんがころんだ〉
コールが鳴ると強制的に始まってしまう、レミナは考える時間もなく咄嗟に身体を動かした。

『う……』
『レミナどうしたの?行き成り座り込んで……』
次はレミナの見せ場だろうと思い、あえて自分はなにもせずに歩みを進めていた美音が不思議そうにレミナを見る。
なぜならレミナはただその場で胡坐を掻いて座っただけだからだ。

『い、いいから……早く次に……』
『なんだぁ!?試合放棄かよ!』
『ふざけんな!なんかやれ!』
客の煽りは無視して、美音はレミナを見つめる。

『なんか考えがあるんだよね』
『私を信じて……』
通じ合う二人の顔は真剣そのものだった。
そして……。

〈だるまさんがころんだ〉
『は、はぁはぁ……』
レミナは自分の靴を脱ぎ捨て、素足を持ち上げて親指を鼻に突っ込んだ。
カメラが回り込みその姿を正面から映し出す。
必死な顔をして足の指を鼻に突っ込み笑顔を漏らす姿も、足を上げたために丸見えになった幼い割れ目も包み隠さず映っている。

『な、なにやってんだ?』
『おいおい……』
流石に観客も少し引いている。
それでもレミナは笑顔のまま……。

『酸っぱい臭いで鼻が曲がりました!』
文字通り鼻を拉げながら言う美少女。
しばし沈黙が続くが……。

『く、くはは!なんだそれ!』
『笑える!確かに笑えるわ!』
『自分のクサい足嗅いでなにやってんだよ!』
『家でいつもやってるんでしょ!?キャハハ!間抜けすぎ!』
客に笑われてやっと安心するレミナ。
それをみて美音もやる気になってきた。



その後お風呂にたどり着くまで、二人は痴態を繰り広げながら時間を掛けて進んでいく。
美音がマン毛を引っ張ってマンコを開くと、レミナは乳首を引っ張って『大きくなぁれ』と必死におまじないをかける。
二人でコンビネーションを見せることもあった。
お互いの肛門を指で浣腸し合ったり、その指を相手の鼻に突っ込んだりしていた。
その姿全てがコールの後に停止した状態で見世物になるのだ。
観客たちはそれを見て大いに笑い、蔑み、彼女たちを貶めていった。



「ひ、酷過ぎる……」
「ねぇ、あれ誰なの?ねぇ……」
それを見ていることしか出来ない二人。
テレビを見ている現在のヒプノンは、最早心が壊れかけていた。



『よし!次で美音がお風呂に入れるね!』
『入ったら10秒間はそのままじゃないと罰ゲームだからね!』
『分かってるって!』
美音はお風呂の枠に捕まりながらあることに気付く。

『ねぇ、このお風呂すっごく湯気立ってるけど……』
『なんか熱そうだね……』
レミナが客のリクエストである『痴女のカエル』を自分なりにポージングしながら答える。
そしてまたコールが鳴る。

〈だるまさんがころんだ〉
『行くよ!あひゃっ!?あっつ!熱い熱い!ちょっ!ふばぼ!』
勢いよく入ったと思われた美音がお湯の中で暴れ始め、すぐに転げ落ちるようにしてお風呂から出る。

『ちょっ!大丈夫!?』
『熱すぎ!熱い熱い!』
確かに彼女の素肌は見てわかるぐらいに赤くなり、お風呂を出た今も熱さに耐えかねている。

『た!多分その隣の!それ冷たい奴だよ!』
『そ!そっか!』
レミナが指さしたのは桶に入った茶色い物体。
普通なら氷か何かだろうが、観客たちはそれがなにか分からなかった。
いや分かったかもしれないが、まさかそんなはずは無いと思ったのだ。
それでも美音は躊躇なくそれを手に取り、身体に塗っていく。
確かにそれは冷たいらしく、遂には身体全体で抱きしめるようにそれに密着する。

『はぁ、死ぬかと思ったよ……』
『それよりそれなんなの?』
『え?……クサっ!なにこれ!?』
『ま、まさか……うっ……』
近づいて臭いを嗅ぐレミナは、すぐにそれがなにか分かったようだ。

『これってうんこだよね?』
『えぇ!?うっそ!塗りたくっちゃったよ!』
『またお風呂入らなきゃいけないんだしいいんじゃない?』
『まぁそれもそうか』
人気絶頂のアイドルが、それも年端のいかぬ少女たちがそんな会話をしている。
あまりに度が過ぎたその光景に、観客たちは皆一瞬正気に戻った様に信じられないという顔になるが、それでもすぐにヤジを飛ばし始める。

『あ!でもでも!レミナ動いたから罰ゲーム!』
『違うでしょ?その前に美音がお風呂に10秒浸かれなかったから罰ゲームね?』
『ええ!?10秒ぐらい浸かったよ!』
『えっと……』
レミナが近くにいたADに時間を確認する。

『さっきのは3秒らしいわよ?』
『嘘おお!?』
『合計で10秒でいいらしいから、美音はあと7秒ね』
『無理だよぉ!』
『ちなみに失敗するごとに罰ゲームらしいから』
『ドヤ顔で言ってるけど、それってレミナも一緒なんだからね?』
『うっ……』
身体中便塗れになりながら美音が悔しそうな顔をする。
そうして今や誰も期待していない二人のやり取りが続けられ、美音が罰ゲームのカードを引く。

『なにこれ?ケツ花火?』
『うわ、これは酷そう……』
『嫌な予感しかしない……』
運び込まれたのは一本の花火。
これの用途はネーミングからして一つしかない。

『これってお尻に入れて火を点けるってこと?』
『そう!それと自然に消えるまで火を消しちゃ駄目ってルールもあるよ?』
『まぁそれはいいけど……入るかな?』
心配するところはそこなのか、正常な判断能力は失われている。
用意された花火は太く、直径1cm以上はある。

『私がさっき入れた指の方が絶対太いから大丈夫!』
『まぁやってみるね?』
またも軽いノリで承諾し、美音は足を広げて前屈をする。
股の間から顔を出して自らの肛門に無理矢理花火を押し込んでいく。

『う、うぅ……きついな……』
『押してあげよっか?』
『うん、お願い……』
『えい!』
レミナは遠慮なく突き刺さる花火の先を手で押し入れる。

『ふごおお!?』
『大丈夫?』
『う、うん……なんとか……』
肛門から花火を生やした屈辱的な格好のまま、前屈のポーズを保っている美音は、レミナから渡されたチャッカマンで器用に花火に火を点ける。

『わ!なんかちょっと綺麗!』
『こっちから見てると凄く恥ずかしい格好だけどね!』
肛門の花火から火が噴き出ている。
後は消えるのを待って抜くだけなのだから、もう終わったも同然と安心していたが。

『ね、ねぇ……この花火っていつ消えるの?』
『さぁ?でもかなり根元まで火薬が入ってるのね……』
肛門まで後5㎝ほどと言ったところまで火が来てしまっている。
次第に焦り始める美音。

『ちょっ!?ちょっと!これ危ないって!ひぃ!あ!熱い!熱いって!ひぎっ!?』
急にお尻を振り出した美音は、恐怖のあまり混乱してステージを駆け回る。
肛門から花火を噴き出したまま走るその姿はとても滑稽で、観客たちは非常に盛り上がった。

『はは!蛍かよ!』
『汚い蛍だな!』
『もうちょっとでお尻燃えちゃうんじゃない!?』
『見ろよあの顔!おもしれえ!』
観客席の前を行ったり来たりしてその痴態を見せつける。
遂に肛門ギリギリまで火が行った時……。
パンっという乾いた音と共に美音の短めの悲鳴が聞こえた。

『ひぎゃっ!』
最後の部分に爆竹が入っていたようだ。
破裂した瞬間飛び上がった美音は、そのまま倒れ込み潰れたカエルの様になっている。
それでも手だけは必死に動かしており、肛門を叩くようにして熱さを必死に我慢している。
カメラがその部分をアップで撮影し、軽く火傷した肛門と熱で更に縮れてしまった毛が画面に情けなく写る。

『これは……ビックリしたよ……』
『私もちょっとビックリ、最後爆発すると思わなかった』
『はは……』
しかしそれさえも笑い飛ばして美音は再度立ち上がる。
レミナは先ほどと同じ位置に同じポーズで立ち、美音は再スタート位置であるお風呂の少し前、レミナの少し後ろに立つ。

順当にいけばお風呂の目の前にいるレミナが入る番だ。
しかしここで事件は起こる。

〈だるまさんがころんだ〉
『ふぎっ!』
『……え?』
美音が転んでいるのだ。
どうやら足についた便で滑ったらしい。

『ってことは……』
『ちょおおおお!?美音連続アウトですかあああ!?』
『美音!罰ゲーム!』
『うわあああ!』
『この中から好きなカードを選んでね!』
『う……楽しそうだね……』
すぐに罰ゲームが書かれたカードを持ってきて、美音に差し出すレミナ。

『じゃあ……これ……』
『美音への罰ゲームはこちら!熱々お鍋!』
思っていたより普通の罰ゲームでホッとする美音。
しかしレミナは美音より笑顔である。
それを見て美音は少し不安になってくる。
しかし運ばれてきたのはやはりただの鍋。
今は蓋がされているので中は見えない。

『なんだ?ただのおでんか?』
『普通だな』
観客たちはよくある熱々おでんを想像したらしい。
しかしその予想はすぐに間違えだったことが分かる。
蓋を外して鍋の中をカメラが撮影し、その映像がスクリーンに映る。

『な!なんだ!?バイブ!?』
『棒が生えてんぞ!?』
『ちょっと待て!マジか!?』
『あれなぁに?』
『し、知らなくてもいいものよ……』
あまりに露骨なそれは、その用途を容易に想像させた。
熱々の鍋の中に入っていたのは、男性器を模して造られた張形、所謂ディルドだった。
しかし耐熱耐水の問題からか、それは電動の物ではなくシリコンで作られている。
その根元からは割り箸の様な物が生えており、そこを持つようになっているらしい。

『ええ?これ入れるの?』
『そうそう!あっつあつだよ!』
楽しそうに話す二人、しかしそれは拷問に近い、いや拷問そのものの行為である。

『勢いよく根元まで入れれば合格!後は抜くだけだから大丈夫だよ!』
『また簡単に言ってくれる……』
『じゃあどうぞ!自分のタイミングで!』
しかも無理やりやられるのではなく、自分自身でその行為を行わなければならない。
通常の精神状態では決して出来ないような自傷行為だろう。
それでも美音は腰を落とし、皆に見えるように前を向く。
右手で棒の先端を持ち、左手で秘部を弄って濡らしていく。

『ちゃんと入るかな?』
『まぁ処女膜焼き切れるだろうけど』
『仕方ないなぁ……』
今までも、そしてこれからも本当に好きな人と出会うまで大切にしていくはずだった物を、こんな罰ゲームごときで、しかも最低の形で失おうとしているのにも拘らず、美音はそれを承諾してしまう。
それも少しの躊躇いの後いとも簡単に、ヘラヘラ笑いながら熱々の棒を秘部に突き立てる。

『行きます!えい!』
美音が勢いよく突き立てた張形は意外にスルりと中に入っていく。
途中一瞬ビクッとした後に、遅れて先ほど以上に暴れまわる。

『ふおおお!ひぎいいい!ふぐうっ!ふがあふぎいいい!』
獣の様な声を上げながら飛び跳ね、必死に張形を抜いて投げ捨てる。
股間を押さえながら飛び跳ねる度に、便が大量に付着した胸を振り回しながら奇妙に走り出す。
その先には先ほど自らの身体に塗りたくった糞便があり。

『ふぎいい!ふう!ふううう!』
狂ったように自らの秘部の中に便を詰め込んでいく美音。
観客も、そしてレミナさえそれを見て笑っている。

『美音!これこれ!これで詰め込めばいいんだよ!』
『ふあっ!?ああ!』
レミナは先ほど美音が突っ込んだ張形をまた鍋で温めてから手渡す。
美音は混乱していたので、それを受け取ると張形の先で便を掬い取って秘部の中に再度入れてしまった。

『ふ、ふぎぎゃあああ!?ほひっ!ほっほ!ほにゅううう!』
股間を観客席に向けたまま仰向けで転がり、必死に張形を抜いてまた便を詰め込む。

『ひっでぇ、あれもう人間じゃねえよ』
『マジで軽蔑する』
『同じ女として恥ずかしいわ』
観客たちの心無い言葉が突き刺さる。
しかしそれは今暴れまわっている美音にではない。
それをテレビで見ている現在の美音にだ。



「こんな……だって私……初めてなのに……」
便塗れで分かりにくいが、美音の秘部からは明らかに処女を失った証の血が流れている。
そして画面の中の美音は今も処女を失ったばかりのそこに便を詰め込んでいっているのだ。

「み、美音……大丈夫?」
「もう、もういやあああ!なんなのよこれえええ!」
「お!落ち着いて!」
「落ち着ける訳ないじゃん!だってこんなの!こんなの酷いよおおおお!」
泣き叫ぶ美音に、ただ声を掛けることしか出来ないレミナ。
それでも番組は続いていくのだ。



『次は私が入る番だね!』
『絶対我慢出来ないって!』
『そうかなぁ?なんか出来そうな気がする!』
美音はすでに戦意喪失している。
最早立つことも無くただレミナのゴールを見守るようだ。
そして相変わらずのコールと共にレミナが動き出す。

〈だるまさんがころんだ〉
『よっ!……ひ、ひぎぎゃああああ!?あじゅ!あじゅいいい!』
必死の顔でレミナが暴れる。
勢いがあり過ぎて顔まで浸かってしまっていたらしい。
急いで上がると、もう便だと分かっているそれを全身に塗りたくる。
そして赤く茹で上がった顔にさえ、誰の物とも分からぬそれを塗っていく。

『熱すぎるよぉ!もう!これは無理じゃないの!?』
全身便塗れになったレミナが少し怒りながら言う。

『はいレミナ罰ゲーム!』
『うわぁ!ちょっと待ってよぉ!』
『はいはい!カード引いて?』
『しょうがないなぁ……なにこれ?マンテキマシーン?』
『なんだろうね?』
それとほぼ同時にステージに大掛かりなセットが持ち込まれる。
マシーンと言うだけあって電動式なそれは、ゴムの様な棒が自動で下から振りあがってくる作りのようだ。

『これでどうするの?』
『ええっと、この機械を跨いで立って下さいだって』
『こう?』
言われるままにレミナが機械を跨ぐ。

『このボタンを押したらこの棒が勢いよく半回転してアーチを描くとのことだよ』
『ええっとつまり?』
『ボタンを押したらレミナのまんこに棒が直撃する』
『な、なにそれ……』
急に顔を青ざめるレミナ。

『でもただボタン押すだけじゃ面白くないよね?』
『いやいや!充分でしょ!?』
棒はゴムと言ってもかなり固そうだ。
当たると痛いなんてものじゃないだろう。

『レミナ天才子役なんだからなんか演技してよ』
『え?演技?』
『お客さんからお題貰ってそれをするの、出来が悪いとボタン押すからね?私が合格をあげれば終了ってことで』
『そ!そんな急に!?』
『じゃあお客さんどうぞ!』
美音の掛け声と共に観客席から無数のリクエストが叫ばれる。
その中から美音が選んでレミナに伝える。

『じゃあ……あ!いいねそれ!街でパンツを売り歩く少女!』
『あ、あの……私のパンツ……買ってくれませんか?染みがいっぱい付いてて臭いも酷いんですよ?千円、いや百円でもいいですから!なんならマンコも付けます!だからパンツ買って下さい!この場で漏らしてもいいですから!』
迫真の演技でアドリブをこなす。
客の求める像を的確について、自分を卑下することも忘れない。
女優としてのスキルを無駄遣いしているとしか言いようがないが、その演技は本物だった。
しかし……。

『なんでもします!顔写真付きでネットで転売してもいいですから!だから!ふぎょおお!?う、うぅ……』
『不合格!』
ボタンは突然に押されて棒がレミナの秘部に直撃する。
その瞬間の映像がスローで繰り返し大画面に流される。
突然の出来事に飛び上がり、苦痛と驚愕に満ちた顔は醜く歪み、視線は明後日の方向へ向く。
股を軽く開いて内股だったポーズは瞬時に大股開きの無様なへっぴり腰に変わり、その当てられた秘部さえもアップの上に超スロー再生で流される。

『酷い顔だな!おい!』
『これでアイドルとかっ』
『てか女として終わってんだろ!』
『おい見ろよレミナのマンコ!波打ってんぜ!?』
『マジで女として終わったな!』
観客のヤジを聞く余裕も無く、レミナは涙目で美音に訴える。

『な、なんでぇ?』
『え?一発合格とかバラエティ舐めてんの?』
『そんな理由で……』
『次はねぇ……あ!それ面白い!滑りしらずのギャグマシーン!』
『ちょ!ちょっと!そんなの演技でもなんでもないじゃない!』
『ん?出来ない?』
美音が握っていたボタンに視線をやるだけで、レミナの顔が真っ青になる。
それもそうだろう、一発でも限界なのだ。
瞬時に全体が赤くなった秘部は、しばらく経った今でさえ継続して痛みが続く。

『レミナの一発ギャグシリーズ!』
無理矢理笑顔を作り、大きな声で宣言する。
もちろん足はまた開かれ、棒が当たる位置にまで戻ってきている。

『コマネチ!コマネチ!』
咄嗟に思いついたものがこれだったから仕方ない。
ただ全力で、しかも全裸で女性アイドルがやるそれはかなりのインパクトだった。
だがそれもこの特番を見ていない人にとってはだ。

『それで限界?』
『つまんねー』
客の声を聴いて美音がすぐにボタンを押そうとする。
それに焦ってレミナが動く。

『ビ!ビーチクビヨーン!ビーチクビヨーン!』
自分の乳首を摘まんで必死に前に伸ばし始める。
膨らみのほぼ無い平らな胸が伸びていく。

『乳首伸ばすのが趣味でーす!ビヨーン!グルグルグルー!』
伸ばした乳首を回転させる。
それに合わせてがに股になり、目線を上にしたまニヤニヤ笑う変顔をきめる。
しかしそれでも美音の顔はつまらなそうだ。

『ひ!左の鼻糞をー!?』
焦ったレミナはがに股のまま一心不乱に自分の鼻を人差し指でほじり始める。
鼻が醜く歪んだあまりの必死な形相に観客の笑いが起こる。

『右にワープ!』
今度は取れた鼻糞を逆側の鼻に突っ込んで塗りたくる。
何度も繰り返すうちに右側の鼻の穴はなにもしないでも鼻糞が見える程になっていた。

『おいおい!どんだけ内蔵してんだよ!』
『鼻糞溜まり過ぎだろ!キヒャヒャ!』
『レミナちゃん汚ーい!最低!』
『もっと面白いことしなさいよぉ!』
好き勝手に盛り上がる観客に、レミナはただひたすら従うことしか出来ない。

『じゃ!じゃあ!つ!次はぁ!』
また右の鼻の穴に指を突っ込んで指に大量の鼻糞を溜める。
更にだらしなく涎を垂らして開いている口に入れてモグモグと動かす。
最後に舌の先にそれを乗せて、そのまま舌を伸ばしてまた鼻の穴に戻そうと頑張っている。

『ま!まは鼻に!もほひまふ!』
必死になって舌を伸ばし、先ほどと同じように乳首を伸ばして回す。
観客からも流石に笑いが起こるようになってきたその時、なんの前触れもなくまたもボタンは押される。

『もうひょっろ!もうひょっろれぇ……ぬぎぐ!?ふぼおおおお!?くっ!くひいぃぃ!』
がに股だったからか先ほどより衝撃は強く、無防備だったレミナは棒に強打されると共に尻餅をついて倒れる。
秘部を押さえてのたうち回る姿は先ほどの何倍もウケていた。

『最高!やっぱこれだわ!』
『女の子がそんなとこ押さえて転げまわるなよ!』
『おい!倒れる瞬間の顔ヤバすぎだろ!人間じゃねぇよ!』
レミナの秘部はすでに赤を通り越して青くなり始めている。

『まったく、なんにも出来ないんだねぇレミナ』
『ひょ、ひょんな……』
すでに舌は戻っているはずなのに、呂律が回らなくなっているようだ。

『じゃあ救済措置ね!自分でボタン押しまくって、観客が全員オッケーくれたら許してあげる!もういいよって思った人はお手元のボタンを押してくださいねぇ!』
美音が言っていることの意味をいまいち理解しきれない。
レミナはなにを言っているんだという顔で美音を見る。
しかし当の美音はいつもの笑顔のまま倒れたままのレミナにボタンを渡すと、自分はさっさとカメラに映らない後ろの方にはけて行った。

『あ、あの……』
なんとか立ち上がり、レミナは震える身体でまた処刑台に立つ。

『ボタン押す前になんか言わそうぜ!』
『じゃあ皆で質問しようぜ!それに応えてからボタン押すってことで!』
『あ!じゃあじゃあ!』
どんどん話が進んでいく。
レミナの意見など誰も聞こうとはしない。

『トイレ以外でウンコしたことある場所!ここ一年で!』
『……え?あ、あの……』
もちろんそんな経験は無い。
しかし今求められているのは……。

『ま!毎日!学校の校門通るたびに漏らしてます!ぐびひぃ!』
根も葉もない話だが、今は観客に媚びるしか方法は無い。
その上で歯を食いしばりボタンを押す。
自分のタイミングなだけ、先ほどより衝撃は抑えられている気がする。
しかしボタンを押す恐怖は待つときの何倍も恐ろしい。
そしてその後も質問は続いていく。

『つい濡れてしまう瞬間!』
『道端に落ちてるうんこをパンツに入れた時です!ぬぎゅうう!』
『今まで貰った中で一番嬉しかったプレゼントは!?』
『ザーメンでガビガビになったブリーフでしゅ!にぎゃああ!』
『身体の中で一番可愛い場所は!?』
『つるつるマンコおおお!今真っ黒に充血してる筋マンでひゅううう!びひいいい!』
『いつもはどんなものマンコに入れてるのぉ!?』
『納豆うう!粘々の納豆かき混ぜて箸で突っ込んでまふううう!だから納豆臭いんでしゅううう!ぎいいひいいい!』
度重なる衝撃にレミナのマンコは使い物にならないぐらい歪んでいく。
綺麗な筋だったそれは腫れ上がり、元の形どころか原形をとどめることさえ出来てない。

『う、うぅ……』
『あ、レミナ!全員満足したみたいだよ!?』
『え?あ、はは……やった……』
流れる血は処女膜を失った証なのか、それとも皮膚が裂けて出たものなのかも分からない。
しかしこの後元通りに戻ることは無いことだけは確かである。

『え?なになに?』
美音とレミナが同時に指示を出すADのカンペに注目する。

『うっそおお!?もうちょっとなのに!?』
『ええ、今回は時間切れ、ドローとのことです』
『うう!私の方がいっぱい入ってたはずなのに!』
『いや、そうでもないよ?』
二人の会話は今まで通りに戻っていた。
しかしそれがあまりに不自然に映ってしまうのは、便塗れでボロボロになっている二人の姿があるせいに他ならない。



「……なによこれ」
テレビを見ていたレミナはそのあまりにショッキングな内容に動けないでいる。

「で、でもでも!あんなことになってたら普通気付くでしょ!?」
美音が縋るようにレミナに言う。
美音が言おうとしていることは分かる。
この収録以降、あんな状態の秘部を見ていたのなら正常ではいられなかっただろう。
つまり今この映像に映っているのは自分達ではないのではないか?

「そうよ、そんなはずない……」
レミナは恐る恐るその場でスカートごとパンツを引っ張り、お腹から秘部を覗きこむ。
しかしその手はすぐに離され、パチンという虚しい音と共に元に戻る。

「どう……したの?」
「いや……いやあああああ!」
レミナが見たのは絶望的な状態の秘部だった。
未だにどす黒く変色してしまっているそこは、ボコボコに腫れてまるで自分の身体ではないかのように感じられる。

「ま、まさか!そんなわけ!」
「なんで!?だって私!ずっと!」
そう、違和感なんて感じなかったのだ。
違和感どころではない変化があったのにも拘らず。
お風呂に入った時も、トイレに行った時も。

その後二人は押し黙り、番組もCMに入ったようだ。

「あ、あんな形で……美音の初めてが……もう死んじゃいたい……」
美音が恒例の感想を言い始める。
この時美音は気付きもしないが、外的には変化のない美音の秘部も、高温の張形を入れたことにより内部が致命傷を受けている。
とてもじゃないがもう普通のセックスは出来ないだろう。

「わ、私の……こんなんじゃ……お嫁さんになれない……」
泣き崩れるレミナは目に見える絶望と恐怖で頭がパニック寸前である。
実際はパニックにはなれないように脳を調整されているのだが、それに気付くことはないだろう。

「ふむふむ、前半はこんなもんかな。でもやっぱり落ち着いて見てみると、痛みで催眠が解けかけてるなぁ。羞恥心や自衛心が戻り始めてる。後半戦の前に再度かけ直してて正解だったな」
その声は二人には聞こえることは無く、いや実際には聞こえているのだが認識されることは無い。
日比谷は一人納得するとすぐに両隣に座る二人を交互に見て悪戯っぽく笑った後、座ったままの二人の秘部へ同時に軽く平手打ちをする。

「「ひぎっ!」」
同じタイミングで同じリアクションを取る二人。
やはり傷は癒えてはいない。

「はは、さすがだね、息ピッタリだ」
楽しそうに笑っているとCMが明けた。
ここからは後半戦、実はあの後現場は一旦お開きとなり、後半の収録は別日に行われている。
そして本当の地獄はここから始まる。
[ 2014/05/05 02:31 ] 小説 | TB(0) | CM(1)

初めまして。いつも楽しく拝見させていただいています。

催眠ものが好きで幼女も好きなのでR-13さんの作品もとても好きです。その中でもこの「栄光の架橋」は今までの人生でないくらいのエロの衝撃を受けまして、公開されたころは毎日のように、今でも週に一回くらいは読み返しています。
もうこの作品を公開されてから半年以上たちますが、今のところ後編を書かれる予定はないのでしょうか。もしそうだとしたら、ぜひとも続きを読みたいので後編の執筆をお願いできませんでしょうか。

突然で不躾かとは思いましたが、後編を読みたい気持ちが日に日に高まって抑えきれなくなってきたのでこうしてコメントすることにしました。よろしくお願いします。
[ 2015/03/05 23:34 ] [ 編集 ]

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