Kさんのリクエストから作った、短編小説です。
世にも奇妙な世界に迷い込んだ少女の痴態をお楽しみください。
本編は【続きを読む】からなんですって!
「ごめんね?真実……」
「不甲斐ない父親で……すまん」
「いつか……また会えるよね?」
「ええ!もちろんよ!?」
「必ず!必ず迎えに行く!」
「約束だよ!?」
私がランドセルを卒業する少し前、もうあれから二年が経つ。
そして、未だあの日の約束は守られてはいない。
私を引き取ったのは父の友人を名乗る男。
人見 正男。
私が現在通っている人見学園の理事長である。
この学園には人見と言う性を持つ少女が何人かいる。
その少女達はみな私と同じように正男に引き取られた少女達だ。
正男とは直接話したことは無い。
『人見学園に転入し、寮で暮らすように』
そう書かれた手紙を父から渡されただけ。
後は代理の男がやってきて、車に乗せられた後急な眠気がして……。
気が付けば人見学園があるこの島に来ていた。
今でもこの島が日本のどこに位置するのか、そもそも本当に日本なのかもわからない。
島を出るにはフェリーに乗るしかないのだが、そのフェリーを学園生が利用するには正当な理由がいる。
そして私にはそれがない。
島の外に出たい。
この思いは日に日に強くなる。
だだっ広い島には、生活に必要な施設が全て揃っている。
全てがこの島の中で完結する。
それはつまり、この島の中で一生を終えろと誰かが言っているようで……。
この島に来た時から感じていた違和感。
常になにかに見られているような感覚。
妙に綺麗すぎる街並み。
島の人たちの不自然な振る舞い。
本当にわずかだけど、暮らしている内にそれらの違和感は大きくなる。
そして、時折見え隠れする非日常……。
それらは公然と行われているのにもかかわらず、周りの大人達はなにも言わない。
事件はおろか、噂にもならない。
いや、それらの非日常はこの島ではなんてことない日常である。
初めて経験したのはこの島に来てすぐのこと。
初登校の日、自己紹介でのこと。
「今日からこのクラスの一員となった人見真実さんです」
「は、初めまして。人見真実です、よろしくお願いします」
「先生!胸の大きさとオナニーの頻度が抜けてます!」
「……え?」
「あぁ、真実さんはこの島に来てまだ間もないから知らないのね?」
「なんのこと……ですか?」
「身体測定で測ったでしょ?」
「……え?」
転校初日の緊張なんて軽く吹っ飛んだ。
「まぁ、今日は初日ですし、後で個別に聞いてください。授業を始めますよ?」
当たり前のように授業に入る先生。
「真実さんはその空いた席に座って下さい」
「あ、私の隣だね?よろしくね?人見さん……じゃわかんないよね?いっぱいいるし。真実さんって呼んでいい?」
「あ、あの……う、うん」
「私の名前は塩田カスミ、Bカップ。オナニーは週に一回やってるよ」
なぜそんな恥ずかしいことを強制させられるのか。
なにかのドッキリかとも思ったが、その後も当たり前のようにクラスの子達から同じような自己紹介を受ける。
そして……流されやすい私も……。
「林……あ、違った。人見真実です……A……カップ……です。オ、オナニーは……したことありません……」
「あ、前は林さんだったの?」
「え?あの、は、はい」
私の恥ずかしい自己紹介の後も、特になんてこともなく会話は続く。
それだけじゃない。
みんながこぞってやっているお洒落もなにか狂っている。
私がこの島での生活に慣れてきたころ、街の女性達がこぞってスカートを短くし始めた。
初めはギリギリぱんつが見えないぐらいだったそれは、短ければ短いほどお洒落だという風潮になっていく。
最後には完全にぱんつが見えるようになった。
「ねぇ、真実?なんで真実はスカート短くしないの?」
「そうだよ!絶対短いほうが可愛いのに!」
「でも……その……見えちゃってるし……」
「そこが可愛いのに!」
「本当に真実って変わってるよねぇ」
「そ、そうかな?」
「ちょっとだけ!ちょっとだけ短くしたら?」
「恥ずかしいなら、ぱんつが見えないギリギリのラインにしたら?」
「え?あの……」
「これぐらい?」
「ちょっと!いや!」
「えぇー?これぐらいいいんじゃない?」
「そうそう、減るもんじゃないし」
「そう、かな……」
結局私もぱんつが見えるギリギリまでスカートを短くすることになった。
しゃがめばすぐに見えてしまう。
流行が止むまで、苦痛でしかたなかった。
「これ可愛いよね?」
「制服に会うよね!」
「それってさ、その……」
「ちんぽ型だよ?」
「ちんぽネックレス、今流行ってるんだよ?知らない?」
「知ってるけど……なんか……」
「あのCM見た?女の子がこれしゃぶってるやつ!」
「あ!見た見た!レロレロしてるやつね?可愛いよねぇー」
「こんな感じ?」
「ちょっ!やめなよ!みんな見てるし!」
「へ?なに?」
「本当に真実って恥ずかしがり屋だよねぇ」
「そんなんじゃ流行に取り残されるよ?」
みんなそれを普通にやっている。
男子もそれを変だと思っていない。
先生も彼氏にプレゼントされたと喜んでいたぐらいだ。
結局これも友達とお揃いという名目で、しばらく着けていた。
その後も変な流行は時折やってくる。
「これってこれであってるよね?」
「雑誌にはそうやるって書いてるよ?」
「どう?可愛い?」
「あの、それってなんかさ……」
「なに?真実?」
「変じゃ……ない?」
「そう?可愛いよ?」
「ダメダメ、真実ってばこういう流行には疎いんだから」
「着けてみるだけでもやってみる?私の貸してあげるよ?」
「い、いいよ……」
彼女達が付けているのは鼻フックというものらしい。
鼻が醜くひしゃげている。
それを可愛いと言いはるのだ。
それも、島全体が……。
私の常識が狂わされていく。
そんな気がした。
おかしいのは私?そうなの?
戸惑っているのは私だけじゃない。
私と同じ、人見の性を持つ人たち。
私と同じ、人見正男に引き取られたもの達。
でも彼女たちとの交流は叶わない。
何故かは知らない。
でも、そうなっている。
話そうとしても邪魔が入る。
それは時にどちらかの友達だったり。
見ず知らずの人だったり。
話しかけようとしても、急に引き離すように邪魔が入るのだ。
それも違和感の一つ……。
彼女に会ったのは、そんなある日のことだった。
私より一つ上の学年の、人見保奈美さん。
「これ可愛いよね!」
「鼻フックでしょ?知ってる!流行ってるよね!」
「ねえ!保奈美!保奈美も買いなよ!」
「は?なんで私が?」
「いや、なんでって……」
「そんな趣味の悪いもの、なんで私が着けなきゃならないのって言ってるの」
「そ、そんなことないでしょ?可愛いよね?」
「時間の無駄ね」
「え?」
「ちょっと保奈美……」
「私の名前を気安く呼ばないで?暇つぶしぐらいにはなるかと思ったけど、イラつくだけだわ」
「いや、あの……」
「なに?いつもニコニコ親切ぶって、私のこと誘導しようとしてるんでしょ?ねぇ、教えてくれる?あなた達は誰の命令でそれをやってるの?」
「保奈美!」
「なに焦ってるの?私、変なこと言った?言っちゃダメなことだった?」
「止めて!」
「ふっ、帰るわ」
商店街でその姿を見た時から、保奈美さんは私の憧れだった。
案の定話しかけようとしても邪魔が入るんだけど……。
でもある日、すれ違いざまに保奈美さんから手紙を渡された。
振り向きざまにされたウィンクを、今でも鮮明に覚えている。
『この島はおかしい、自分を信じて』
その手紙は私を変えた。
流されやすい私は、それでも周りに合わせて変なことをすることもあったけど、心までは変わらなかった。
自分の中の常識を信じ続けることが出来た。
あの日までは……。
「ぶひぃ!ぶびいい!」
「はは!ほらほら!もっと速く歩いてよ!」
「お尻振るの忘れてるよぉー?」
休み時間、学園を闊歩する上級生の中に、保奈美さんはいた。
裸に四つん這いで歩いてくる。
鼻フックでブタ鼻になっている。
以前あんなに否定していた鼻フックを、だ……。
「ほおら!もっとお尻上げなきゃ見えないよ!?」
「びひぃ!」
「きゃはは!尻尾が丸見え!」
尻尾……。
確かに生えている。
ピンクのクルクルした尻尾。
それはきっと豚の尻尾を模した物なのだろう。
どうやって付いているのだろうか……。
バンドの様なものは無い。
もしかして……お尻に直接……。
「ほ、保奈美さん?」
恐る恐る話しかけてみる。
「あら?あなた人見の……」
「ちょっと、いいの?」
周りの人がコソコソ話している。
「あ、あの!保奈美さんはなんでこんなことを!?」
「保奈美の知り合い?」
「ちょっと、保奈美じゃないでしょ?ただの豚に名前なんて無いじゃない」
「ぶ!豚って!これってイジメじゃないんですか!?」
こんなに怒ったのは初めてだった。
「え?イジメ?これはこの豚が悪いのよ?」
「そうそう、いつも授業中寝ていた罰よ?」
「ば!罰って!誰がそんな!」
「なにを騒いでいるの?」
先生がやってきた。
こんなことが許されるわけがない!
「先生!こんなこと許していいんですか!?」
「こんなことって?」
「っな!見たらわかるでしょ!?保奈美さんです!」
「そうね、許されることじゃない」
「ほ!ほら!早く止めさせないと!」
「ちゃんと罰を受けてもらわないとね」
「……え?」
「食べて寝るだけなんてただの豚でしょ?」
「豚って……保奈美さんはただ、授業中に寝てただけなんでしょ!?」
「授業中に寝ることがいいことですか?違うでしょ?」
「そ、それは……」
怒りが頭を支配して、言いたいことが言えない。
「い、いいの……私はただの豚なんだもん……」
「ほ、保奈美さん?」
「豚にはお似合いの姿でしょ?ぶひっ!ぶひっ!」
「保奈美さん!嘘ですよね!?ねえ!」
「ナニイッテルノ?アタリマエノコトデショ?」
頭が真っ白になる。
「ほら!豚がいつまでも人間の言葉喋ってちゃダメでしょ!?」
「ぶぎいい!」
先生が保奈美さんのお尻を蹴りあげる。
でもなぜか保奈美さんは嬉しそうな顔をしている。
「おい!豚!俺の靴舐めて綺麗にしてくれよ!」
「ぶひぃー!はっはっはっはっ!」
「きゃはははは!ホントにやってる!」
「おい!尻振れ!尻!」
「ぶひっ!」
「次は屁だ!屁でもこいてろ!」
「ぶひいいい!ぷっー」
「ひー!ひっひっ!もう俺ダメ!腹よじれる!」
「尻尾落ちるぐらい本気で屁こくなよな!」
完全に言いなりになって、嬉しそうにみんなの玩具になる保奈美さんを見て、私はもうなにも信じられなくなった。
私の日常が狂い始めたのはそれからしばらくしてからだった。
あの日以来私は、なにを信じていいのか分からなくなっていた。
なにが常識で、なにが非常識なのか。
朝、登校途中のこと。
「真実おはよぉー」
「え、っとー。おは……よう?」
「なに?体調悪いの?」
「え?いや、そんなことないけど……」
おはようって言うのは当たり前?
何気ない会話をしながら学校へ向かう。
その間も疑心暗鬼に陥りそうになる。
「それで菊池くんがさぁー」
「うん……」
「あれ?靴履き替えないの?授業始まっちゃうよ?」
下駄箱で立ち往生する私を友達が急かす。
上履きに履き替えるのは正しいこと?
「あれ?なんか臭くない?」
「え?あぁ、田中君じゃないかな……」
「田中かぁ、あいつホント汗臭いよねぇ」
そういいながら友達は鼻に指を突っ込む。
「ちゃんとお風呂入ってるのかな?」
「聞こえちゃうよ?もう……」
私も鼻に指を突っ込んだ。
臭い時に指を鼻に突っ込むのは……普通、だよね?
「ちょっとトイレ行ってくる」
「あ、じゃあ私もちょっと……」
なんか落ち着かないなぁ。
トイレの壁が、上半身だけ透明なのは当たり前なのに……。
男女共有だから、男子と目が合う。
うぅ、おしっこしてる顔見られちゃったよ……。
「あれ?真実、どうしたの?」
「あ、なんかハンカチ忘れちゃったみたい……」
「そうなの?あ、でも今日って」
「あぁ、そうだよね。今日は私あの日だから……」
スカートの中に手を突っ込んで、ぱんつの中からナプキンを取り出す。
血が付いたそれを傍らに置いて、手を洗う。
「顔になんかついてるよ?」
「え?ほんと?」
不意に言われたため、濡れた手で顔を触ってしまう。
「あ、気のせいだった」
「もぅ、濡れちゃったじゃん……」
手と顔、濡れた部分を使用済みのナプキンで拭く。
不快感が私を襲うが、みんなやってるし……。
普通だよね?
「ちゃんとトイレ行っとかなきゃ、後で困るもんねぇ」
「そうだよね」
授業中にトイレに行くなんて……。
考えられない。
「あ、知ってる?この前隣のクラスで、授業中にトイレに行きたいって言ったやつがいたんだって!」
「う、うそ?だれ?」
「木田って知ってる?」
「あ、あのデリカシーない男子?」
「そうそう、あの非常識男」
木田君は学校でも有名な嫌われ者。
下品なことばっかり言う人だ。
「でも授業中にトイレだなんて……」
「そうよね?恥ずかしすぎるでしょ?そんなことするぐらいなら、裸見られた方がマシよね?」
「そうだよね?そんなこと言うなんて、死んだ方がマシだよ」
なぜかこの島の人は授業中にトイレに行くと言うのが、とても恥ずかしいことだと思っている。
確かに恥ずかしいけど、初めは私にはわからなかった。
でもこの島で暮らすうちに、みんなが口をそろえてそう言ううちに、そうなんだってわかった。
よかった、知らなかったら、言っちゃってたかもしれなかったから。
「あ、見て見て、日高先輩だよ!?」
「え?どこ?」
「あそこ!」
「ちょっ!指さしちゃダメでしょ!?」
「お?なに?真実ってば本当に、日高先輩のこととなると声が大きいわねぇ?」
「へ!変なこと言わないでよ!」
「ん?なに騒いでるの?」
「ふひゃああ!」
「ふひゃあって……真実ったら……」
急に先輩に声をかけられて驚いてしまった。
「真実ちゃんは今日も元気だね?」
「ひ!日高せんぴゃい!」
「噛んでるよ?てか先輩の前だけですよ?真実が元気なのって」
「そうなの?」
はうーー!余計なこと言わないでよおお!
「ふふっ、なんかわかんないけど、会えてよかったよ」
「ふへええ!?な!なんでですきゃあ!?」
「真実ちゃんみたら元気になるから」
「はふぅ?」
「朝一で会えるなんて幸運でしょ?」
「先輩、言いますねぇ?」
「ははっ、真実ちゃんは奥手っぽいからね?これぐらい言わなきゃ伝わらないでしょ?」
違う次元の話が繰り広げられていて、内容が掴めない……。
「じゃあね!真実ちゃん!」
「ほら、先輩行っちゃうよ?いいの?」
「へふぅ……」
息が止まるかと思ったよぉ。
結局ぽわーっとしたまま教室へ向かった。
「このように、頂点Aの角度が解れば、BとCも求められるというわけですね」
先生が黒板に書いた文字を必死に板書していく。
「ではこの練習問題を解いて貰いましょうか」
あ、今日私当たりそうなんだよなぁ。
問2は無理っぽいからせめて問1になって欲しい。
「問1を片岡くん、問2を人見さん。前に出て問いてみて」
うぅ、当たっちゃったよぉ。
ん?あれ?
「ん?なにしてるの?人見さん?あなたよ?」
「は、はい……」
わかってるんだけど……。
……トイレに、行きたい。
激しい尿意が私を襲う。
なんで?
さっきトイレに行ったばかりなのに……。
「おお!うまくいってるみたいっすね!人見社長!」
「おいおい、社長じゃなくてここではプロデューサーだろ?」
「はい!人見さん!」
「まぁ、それでいいけど……」
俺の名前は人見正男。
一代で会社を興し、この放送局、そして舞台を作った男。
金持ちと貧乏人の二極化が進むこのご時世。
今や貧乏人は金持ちの玩具でしかない。
貧乏人が金持ちの言いなりになって遊ばれるのは、社会問題になっている。
それでもその欲望は尽きることなく、社会の裏側では貧乏人を売り物にしたコンテンツが多く出回っている。
その中でも今一番の人気となっているのが、俺が作ったこの番組。
『ザ・トュルーウーマン・ショー』
借金で首が回らなくなった家の娘を俺が引き取り、この外部との接触が出来ない島で生活させる。
島の人間は全員エキストラだ。
決められたセリフをしゃべり、役割を演じているにすぎない。
もちろんエキストラは全員貧民層から排出しているので、給料は格安。
しかも言えばなんでもやるのだから扱いやすい。
仕事があるだけでも御の字なのだろう。
でも彼女達は違う。
人見の性を持つ少女達、俺に買われた娘たちだ。
彼女たちには一切の指示も、そして情報も与えない。
彼女達は出演者であることも知らないまま、この島で非日常を過ごしていくのだ。
なにを感じ、なにをするも自由。
流されて非日常を日常として暮らすもよし、反発して制裁を加えられるもよし。
なんにせよそれらは全て、島のいたるところに仕掛けられたカメラによって撮影され、ショーとしてネットで配信される。
彼女たちにプライバシーなんてものはない。
部屋での様子や、トイレ、風呂、なんでも全てがコンテンツになってネットにあげられている。
使い古した下着などはもちろん売りに出されるし、時には排泄物さえも商品にされる。
なにも知らない少女が、ありもしない常識を信じて痴態を晒す。
今やこれは上流社会では大人気となっている。
本当に……下衆が多いと人生楽で仕方ない。
「あ、人見さん、真実が動きだしましたよ?」
「お?どうするんだ?」
真実には頻尿になる薬を常に投与し続けた。
医者の話が本当なら、今真実は排尿を我慢できない身体のはず。
犯罪だ?
なに言ってるんだ?
彼女たちに人権なんて無い。
まぁ実際あるもんはあるが、そこまで重要視されていない。
国は富裕層に媚を売るのに必死で忙しいからな。
「人見さん?早く前に出て問題を解いて?」
「は、はい……」
やばいよぉ、今動いたら漏れちゃいそう……。
でもトイレに行かしてくれなんて言うのは恥ずかしい。
あれ?授業中にトイレに行くのってそんなにダメなことだった?
この島に来る前までは、普通にあったような。
でも……無理だ。
そんなに恥ずかしいこと出来るはずがない。
今、こんなこと考えてる暇じゃなかった。
早く問題を解かないと。
頭がぼーっとする。
「人見さん!早くしなさい!」
「ひゃい……」
力の無い声で返事をしてゆっくりと立ち上がる。
立った瞬間、気が緩んでしまった。
生温かい感触が足を伝う。
口に力が入らず、軽く開いてしまっている。
周りから悲鳴が上がる。
下を向いたら、黄色い水たまりが出来ていた。
下着がグショグショで気持ち悪い。
あ、スカートも濡れちゃってる……。
涙が……止まらない……。
その日私はそのまま早退した。
と言うより、走って帰った。
寮は学校の敷地内。
授業中の今、誰に見られることも無い。
部屋で一人涙を流す。
漏らした方がマシ?
そんなわけない……。
どんなに恥ずかしかったか……。
怖くてみんなの顔を見ることが出来なかった。
でもきっと、笑っていた、馬鹿にしていた、気持ち悪がっていた。
もう嫌だ……。
私はもう……。
少し乾いて、冷たくなったぱんつを脱いでゴミ箱に入れる。
それから私は、学校に行かなくなった。
「髪、伸びたかな……」
寮の部屋で一人暇を持て余す私。
この部屋は二人部屋だ。
この島に来て初めて友達になったカスミと一緒の部屋。
カスミは本当にいい子だ。
この島に来て右も左もわからなかった私に優しくしてくれた。
たまに変なことを強要されるけど、それだって私が島に溶け込むためにしてくれているんだってわかってる。
それに今、私がこんなことになって、改めて彼女の存在が私の支えになっている。
カスミは無理に私に声をかけることも無く、あの日の話も全然しない。
学校に行こうと無理に誘うこともしない。
ただ、私の横で笑ってくれる。
「たっだいまぁー!」
「あ、カスミ……お帰り……」
そんなカスミでさえ、顔を合わすのは少し気が重い。
「なに?元気無いなぁ!お昼ちゃんと食べたの!?」
「うん……カスミが買って来てくれたパン、美味しかったよ?」
「そうでしょ?カスミちゃんのお勧めよ!?ちゃんとサプリも飲んだ?」
「うん……」
お肌がツルツルになるっていうサプリメント。
今流行っているからってカスミと一緒に買ったのだ。
思えばあれを飲み始めてから、おしっこが近くなった気がする。
「あの……さ?」
「ん?なになに?」
「このサプリってさ、副作用とか無いのかな?例えば、その……おしっこが近くなるとか……」
「……」
カスミの顔から笑顔が消える。
自分の失敗をカスミのせいにしたみたいに思われたかも……。
「真実、あんた……」
「ご、ごめんね?変なこと言った……」
「やっぱ引きずるよね?」
「え?」
優しく笑ったカスミが、私を抱きしめる。
「ごめんね?私、なんの力にもなれなくって……」
「ち!違うよ!?カスミは!カスミがいるから!」
「いいの!私が……もっとちゃんとしてたら……一人でそんな風にならなくて済んだのに……」
「カスミ……」
こんなに優しいカスミを疑うなんて……。
「みんな……元気?」
「うん、みんな全然気にしてないよ?もちろん私も!真実がいないと……寂しいよ……」
「うん……」
私なんかのために泣いてくれている。
止めよう。
もうウジウジすることなんて無い。
失敗は誰にでもあるんだ。
この島の人はみんないい人。
私に親切にしてくれる。
みんなを信じよう。
「私、明日から学校行くね?」
「真実?大丈夫?」
「カスミがいるから、大丈夫!」
「真実!」
より強く抱きしめられる。
胸が暖かくなる。
「ねぇ、真実!今日は一緒に寝よ?」
「えぇ?いいよぉ、一人で寝なさい」
「いいじゃんかぁ!最近連れないなぁ!」
最近はおねしょも多くなってるから……。
ごめんね?カスミ……。
「じゃあ今日は特別インタビュー!真実の親友役の塩田カスミさんにお越し頂きました!」
「よろしくお願いします」
「今人気の『真実、お漏らし編』で重要な役どころにいるカスミさんですが、どうですか?実際、現場の雰囲気とか」
「そうですね。日常編と違って、緊張感がありますよね。ミーティングとか多いですし、寝る時間があんまりありません」
「真実は学校に来れそうですかね?」
「あんまり言うと、ネタばれになっちゃうんであれなんですけど、皆さんのご期待には沿えると思いますよ?」
「おお!自信満々ですね!さすがは親友!」
「役、ですけどね?」
悪戯っぽく笑うカスミ。
カメラがスカートの中を撮っても、気にも留めないで話し続ける。
重要な役どころに着く少女には、ファンも多いのだ。
「今のお漏らし編に入ってから、困ったこととかありますか?」
「やっぱりサプリを怪しまれるのが怖いですね」
「あ、やっぱりあのサプリがそうなんですか?」
「はい、あれが頻尿になる薬なんですよ」
「カスミさんが飲んでいるのは?」
「もちろんただの空のカプセルです」
「もしかしてぇ?」
「やだなぁ、実は私も疑って中開けたことありますけど!」
「確かに!ちょっと怖いですもんね!」
会場がドッと沸く。
もちろん観客はファンの人たちだ。
「他にはありますか?」
「あ、あの子、薬のせいで最近ほぼ毎日おねしょしてるじゃないですかぁ?」
「あぁ、朝早く起きて洗濯してますよね」
「あれが臭くて臭くて!毎日隣でちびられたらちょっとねぇ?」
「うお!役とのギャップが激しいですね!」
「普段もあんなお人よしだったら怖いでしょ?」
「ですよねぇー」
その顔は完全に真実を馬鹿にしている顔だった。
「じゃあ最後に一言下さい!」
「えぇ、これから真実は一気に非日常に入っていきます。それに戸惑いながらも受け入れる……であろう真実の姿をご覧になって、大いに笑ってあげて下さい!」
「お、未来予知ですか?」
「予測ですよ、親友ですからね!」
「役、でしょ?」
「ふふっ」
ニヤッと笑った彼女に、役の時の様な温かみは一切感じられなかった。
そこにいたのは、金の為になんでもやる汚い女だけだった。
「うぅ、やっぱり怖いよ……」
「大丈夫!私がついてるんだから!」
遂に登校を果たした私だったけど、ぐずりにぐずってかなり時間が遅れてしまった。
それが良かったのか、ここまで誰とも出くわさずに済んだんだけど……。
「みんな中にいるよね?」
「当たり前でしょ?もう授業始まるよ?」
「そうだよね……」
「ほら!行くよ!」
「あ!ちょっと待って!」
カスミが私を引っ張って教室に入っていってしまう。
瞬時に目を瞑った私は、恐る恐る目を開けて周りを見渡す。
そこにあったのは、好奇の目でも、憐れみでも、ましてや馬鹿にするような態度でもなかった。
「おかえり!」
「遅いぞ!真実!カスミ!」
「こいつ人見がいないからって寂しがってたんだぞ!?」
「お!おい!言うなって!ち!違うぞ!?人見!いや!違わないけど!あの!」
「はいはい!男子うるさい!真実!授業始まるよ!さっさと席座んな!」
みんなの温かい言葉、笑顔、私はここにいてもいいんだ。
いや、ここでよかった。
みんなと会えてよかった。
「ただいま!みんな!」
「はぁーい、人見さん?それはいいからさっさと席についてね?授業始めるわよ?」
「あう、先生……」
「ふっ」
先生は声には出さず、口だけで『お・か・え・り』と言ってくれた。
午前は頑張って尿意に耐え、授業を乗り切った。
多分顔は赤くなってたし、もじもじしてたけど、みんな気付かないふりをしてくれた。
でも、これじゃあいつかまた……。
「ホームルームを始めるわよぉ?」
あ、次の授業はHRか。
「今日は特別に、人見さんについて、みんなで話し合いたいと思います」
「え?」
私の……こと?
「人見さん、前に出て?」
「え?は、はい……」
嫌な予感がする。
行っちゃダメだ、ここから先は、なにかが違う……。
「真実、頑張って」
隣の席のカスミが、私の手をギュッと握ってくれた。
大丈夫、私にはカスミが、みんながいるから。
先生の隣に立ち、先生がまた口を開き始める。
「人見さんのお漏らし癖を直すために、みんなで協力したいと思います」
「ふえっ!?な!ななな!」
私が驚いていると、みんなから次々に異議なしの声が上がる。
「じゃあ、クラスでのルールを決めましょう」
ルール……。
それは決して破ってはいけない、絶対のもの。
今まで破ったものがいないから、どうなるかわからないが、少なくとも私にそれを破る勇気は無い。
給食は手を使ってはいけないとか、教室の中ではブラジャーは外すとか……。
みんなで決めたルールだ。
「はい!」
元気よく手を挙げたのは、クラスの中心的存在の女子、天真爛漫で、私にも優しくしてくれる。
「同じ失敗を繰り返さないように、特訓をするべきだと思います!」
「そうね、具体的にはなにかあるの?」
「休憩時間にトイレに行くのは禁止っていうのはどうですか?」
「それはいいわね、決定よ。みんないいわね?」
「「「はーい!」」」
私が唖然としている間に決定したクラスのルール。
次いで他の子達からも次々に意見が出てくる。
「漏らした時は恥ずかしくてもちゃんと大声で謝罪するってのはどう?」
「あ!そんで!自分の服を脱いでそれで後始末するといいかも!」
「濡れた服はバケツ二つに分けて入れて、両手で持つのが常識だね」
「濡れたパンツは顔に被る!これは外せないでしょ?」
「それ全て採用ね、その状態で廊下に立ってもらいましょう」
最後に先生が笑顔で付け加える。
「わかった?人見さん?」
「え?あの?えっと……」
「廊下で他のクラスの子に何やっているか聞かれたら、ちゃんと説明するのよ?」
「あの……」
「みんなもやるのよ?人見さんだけじゃない。むしろみんなあなたの為に協力してくれるの」
「そうじゃなくって……」
「なに?」
「なんで、そんなこと……」
「なんでって、それが常識でしょ?」
「え……」
頭が真っ白になる。
みんなの方をゆっくりと向く。
「ジョウシキダヨ」
「アタリマエジャン」
「ナニイッテルノ?」
あ、そうか。
当たり前だよね?
はは……。
その日はそれで授業は終わり、寮に戻った。
「大丈夫だよ!私がいるでしょ!?」
「カスミ……そうだよね?トイレに行きたいって言うだけだもんね?」
「え?」
「……な、に?」
「いや、授業中にトイレに行きたいなんて、変態じゃん?」
「カスミ?」
「いや、そういう趣味だったの?」
「あ……」
マズイ、このままじゃ変な子って思われる。
「ま、まさか!冗談だよ!」
「そうだよね?はぁ、よかった」
「で、でも、それじゃあどうすればいいかな?」
「そうだよね?学校ではトイレに行けないんだもんね?じゃあ、寮でいっぱいしとけばいいだけなんじゃない?」
「そ、そっかぁ」
解決になってない。
だって、すぐにトイレに行きたくなるんだもん。
でも、カスミの笑顔を見ていたら、だんだんなんとかなるような気がしてきた。
「じゃ!寝よっか!」
「うん」
電気を消して、明日に備える。
あ、その前に、トイレ行っとかなきゃね。
「じゃあ教科書137ページ、濾過の方法の所を開け」
授業に集中するんだ。
尿意を忘れるぐらいに。
う、ダメだぁ。
尿意とか考えちゃダメぇ。
太ももを擦りつけて我慢する。
それでももうダメかもしれない。
でも、トイレに行きたいなんて言えないよぉ。
カスミたちに変態だって思われちゃう。
他の子達は平然と授業を聞いている。
なんでみんな平気なの?
「これが濾過の器具だ。構造はコーヒーを作るときなんかに使うやつと同じだな」
集中、集中。
「じゃあ実際にやってみるぞ?この濾紙の上に、不純物の混じった液体を垂らす」
集中しろぉー。
「するとポタポタと下から水滴が落ちてきただろ?これが濾過だ。濾紙の上には不純物だけが残る。そして、下のビーカーには綺麗な液体のみが摘出されるってわけだ。最後まで見てみよう」
先生が黙ると、教室中が一気に無音になった。
ぴちゃ、ぴちゃ。
水滴の音だけが教室に響く。
いやぁ、ダメぇ、そんなの聞いてたら……。
うぅ……。
「ん?どうした?人見?」
「あ!こいつ漏らしてるぞ!?」
「なに!?どういうことだ!人見!」
理科の先生が動揺している。
「おい!人見!漏らしたらどうするのか忘れたのか!?」
「真実!早く立ちなさいよ!」
「おいおい!みんなしてどうした!?早くトイレに行ってきなさい!」
「先生!これはクラスのルールなんです!」
「そうだよ!それにトイレに行けとか、セクハラですよ!?」
「す、すまん、そうだったのか。ほら!人見!ルールなんだろ?」
先生さえもやっぱり味方にはなってくれないらしい。
「わ、私は……お漏らしを……」
「聞こえねぇよ!」
「うっ……お漏らししました!」
「くっせぇ!」
「この小便女が!」
なんで?あんなに優しかったみんななのに……。
「謝罪はどうしたんだよ!お漏らし女!」
「ご!ごめんなさい!」
「なにがごめんなの!?」
「おしっこ漏らしてごめんなさい!」
「早く服脱げよ!」
「ひゃ!ひゃい!」
みんなの見たことも無いような怖い顔に驚いて、言われるままに服を脱ぐ。
みんな真剣に怒っているようだ。
服を脱いで下着姿になっても、エッチな目で見るような感じじゃない。
「うわぁ、ぱんつまでビショビショ」
「クッサ!スカート脱ぐ時凄い臭いしたんだけど!」
「ぱんつの色変わっちゃってるじゃん」
教室の中ではブラジャーは禁止なので、私はすでにぱんつしか身につけていない。
これも……脱ぐの?
「おい!人見!早くしろ!授業が出来んだろ!」
「はい!」
先生に怒られてすぐにぱんつを脱ぐ。
男の子に見られるのは初めてだ……。
顔から火が出るほど恥ずかしい。
「それで?この後どうするんだ?」
「ほら真実!先生が聞いてるじゃん!説明しなよ!」
「あ、あの、着ていた服で床を綺麗にします……」
「じゃあ早くしなさい」
「はい……」
裸で床を拭き始める。
しかも自分の服を雑巾代わりにして。
「惨めだな!」
「ケツ振って馬鹿みたい!」
「小便漏らすからそうなるんだよ!」
綺麗に拭いた床に涙が落ちる。
あ、また汚れちゃった……。
「これで終わりか?授業に戻るぞ?」
「まだですよ、先生」
「ほら!真実が早くしないから先生困ってるじゃない!」
「あ、う……」
諦めて私は濡れて汚れたぱんつを手に持った。
ビショビショになったそれは、持っているだけで不快感を感じる。
それでも意を決して顔に被る。
冷たい……。
「ははっ!バッカ見たい!なにこれ!」
「変態仮面じゃん!」
「しかもずぶ濡れ!」
「顔中おしっこまみれって!」
「どうなの!?どんな臭いがするの!?」
一人が詰め寄って聞いてくる。
「く、くさい……」
「そりゃそうでしょ!?私も臭いもん!きゃはは!」
とりあえず私は汚れた服を二つのバケツに入れて持ち、さっさと教室から出ていった。
早くあの場からいなくなりたかったから。
授業が終わるまで廊下に立っていた私は、ずっと自分のクサいぱんつの臭いを嗅ぎながら過ごした。
なんでみんなあんな酷いことを言ったんだろう。
信じてたのに……。
「真実?」
「カスミ……」
「教室入ろ?」
「いや……」
「真実?」
もう顔も見たくない。
みんな嫌いだ。
「真実!」
「人見!」
みんなが出てくる。
「ごめんね?」
「すまん!言いすぎだったか?」
口々に謝られる。
「みんなでね?決めたの」
「……なにを?」
「もしもまた真実がお漏らししたら、心を鬼にして思いっきり馬鹿にしようって」
「なんで!?なんでそんな!」
「そうじゃなきゃ特訓にならないでしょ?」
言葉を失う。
ここで私がなにかを言っても無駄だ。
だってそれが……常識なんでしょ?
「もう、服着ていい?」
「あ、その服は掃除当番が洗ってくれるから、帰りまではそのままでね?」
「そう……ありがとう……」
当たり前だよね。
普通だよ。
常識なんだ。
「あら?人見さん、裸なの?それになに?ぱんつ被ってるの?」
次の社会の先生が私を見て怪訝な顔をする。
「クラスのルールなんですよ」
委員長がそう言うと、納得して授業に入った。
あ、またおしっこしたい。
もう、我慢しなくてもいいよね?
どうせ裸なんだし……。
チョロロロロ。
「うわ!真実ったらまた漏らしてる!」
「なんだよ!ちょっと靴についちゃったじゃんか!」
「わざとやってるんじゃないの!?」
みんなは私の為に言ってくれている。
嬉しい。
「おしっこを漏らしました!みなさん!臭くてすいません!」
誰にいわれるでもなく、自分から宣言する。
「で?どうするの?」
社会の先生が困っている。
あ、そう言えば、制服はもう汚れちゃってる……。
どうするんだろう?
「2回目はぱんつでいいんじゃない?」
「そうだな!」
せっかく乾き始めてたのに。
でも仕方ないよね。
常識だし。
顔からぱんつを脱いで、床を拭く。
少ない量とはいえ、さすがにぱんつだけでは拭きとりきれない。
「足りないなら仕方ないな!」
よかった、許して貰える。
「口ですればいいんじゃない?」
あ、そうか、口で啜ればいいんだ。
ジュジュジュッ!
勢いよく自分のおしっこを吸い取っていく。
「きったねぇなぁ!」
「埃とかまで吸ってんじゃないの?」
「掃除機みてぇ!おもしれぇ!」
最後には舌でペロペロ舐めて綺麗にした。
そしてまた、誰に言われるでもなく、更に汚くなったぱんつを顔に被って廊下に出る。
へへ、なにやってんだろう、私……。
ぱんつはさっきより黒くなって、汚くなっている。
臭いも更にきつくなっていた。
「真実……ちゃん?」
「え?」
日高先輩?
「ちょっと!真実ちゃん!?なにやってんの!?」
あ、そう言えば、先生が言ってたな。
‐廊下で他のクラスの子に何やっているか聞かれたら、ちゃんと説明するのよ?‐
「授業中にお漏らししたので、ぱんつで拭いて、口で啜って……それで……」
あれ?なんで私泣いてるの?
当たり前のことしてるだけなのに……。
「そ、そうなの?あ、僕はね?授業で使う笛を忘れちゃって、それで……」
先輩がチラチラと私の裸を見ている。
こんな時なのに、なぜか私は嬉しかった。
だってそれは、私のこと女として見てくれているってことだから。
「あんまり見ちゃったら可哀そうだね!僕は行くよ!」
そう言って先輩は去っていった。
はは、私、なにやってるんだろう。
「真実!そろそろ電気消すよ?」
「そうだね……」
あれから学校が終わるまで裸で過ごし、その後は何事も無かったかのように制服を返してもらって寮に帰った。
汚くなったぱんつを履くのが、妙に嫌だった。
当たり前なのに。
「ねぇ?カスミ?」
「なに?」
「私、学校行きたくないかも……」
「真実?……みんなも協力してくれてるよ?」
「そうだよね?我がまま……なのかな……」
「私、気にしないよ?」
「うん……」
「本当だよ!?」
「知ってるよ……」
「真実?一緒に寝よ?」
「嫌だ……」
おねしょしてるの……ばれちゃうよ……。
「私知ってるよ?」
「……」
「おねしょのこと……」
「そっか……」
「知ってて言ってるの!」
「え?」
「気にしないって言ったでしょ?」
「カスミ?」
「真実のおしっこなら、いいよ?だから、一緒に寝よ?」
「カスミ……」
その日はカスミと一緒に寝た。
カスミに抱きついて、私より大きなカスミの胸に抱かれて寝た。
結局カスミのパジャマも布団も汚してしまったけど、二人で洗濯したらそんなに嫌じゃなかった。
それから学年が代わり、この学校での最後の年が始まった。
クラス替えは無く、クラスのルールもそのままだった。
毎日のように、授業中に漏らしては馬鹿にされる日々が続いていく。
でも仕方ない、トイレに行きたいなんて恥ずかしいことは言えないから。
ある授業参観の日、もちろん私の両親は来ないけど、他のみんなは結構見に来ていた。
「あら?あの子なんか変じゃない?」
「え?ちょっと……まずいんじゃないの?」
「すいません!人見真実!授業中にお漏らししました!」
「お父さんも見にきてるのに変なことしないでよね!」
「そうだよ!臭いなあ!」
「すいません!すぐ拭きます!」
私はすぐに服を脱ぐ。
もう慣れている。
「うわ、結構胸あるな、あの子」
「なに若い子の裸見て喜んでるの?娘の前でしょ?」
「すまんすまん」
恥ずかしくなんて無い、常識だもん。
でも……やっぱり涙は止まらなかった。
マラソン大会でも……。
「はぁ、ダルいなぁ」
「ホントホント、寒いのにマラソンとかありえないよね」
「あれ?真実?どうしたの?」
「えっと、あの……もう、ダメぇ……」
「うわっ!またもらしたの!?」
「ちょっと!これからマラソン大会よ!?」
「あーぁ、体操服がビショビショじゃん」
「これはもうあれだよね?」
「あれしかないよね?」
だいたい予想はつくけどね……。
「ほら、先生やみんなに宣言しなきゃ」
「う、うん。あの!みんな!私、人見真実は!マラソン大会が始まる前に校庭でお漏らししました!」
「ちょっとまたなの?」
「うわ!ほんとだ!」
「短パングチョグチョじゃん!」
「なに?なんかちょっと嬉しそうな顔してない?」
「裸で島中走り回れるのが楽しみなんじゃない?」
最近なんだかおかしい。
こうやってみんなに馬鹿にされるのが嫌じゃない?
あ、先生が来た。
「人見さん?またなの?今日はマラソン大会なのに……」
「すいません、私尿道緩いので、すぐおしっこ漏らすんです」
最近はこうやって自分で自分を貶めるようなことを言うことさえある。
「野外活動と言えど、ルールはルールです。いつも通り丸裸になって、顔にその臭いぱんつ被って走りなさい」
「はい!ありがとうございます!」
先生の指示には感謝する。
これも常識だよね。
結局裸で走ることになってしまった。
道行く人が私を見て驚いている。
学校では慣れてるけど、外で見られるのは一段と恥ずかしい。
「なに?あの子なんで裸なの?」
「お!なになに!変態か!?」
「私はお漏らしした罰としてこの格好で走っています!」
「ひひゃひゃ!あの年でおもらしって!」
「やだ!拭いてないんじゃないの!?ちょっと下の毛濡れてるわよ!?」
「いやいや!あれは感じてるだけだろ!」
「う……うぅ……」
恥ずかしい宣言をしながら走り続ける。
私にだってわかんないよ……なんで濡れてるの?
走ることによって、ぱんつの臭いがより鮮明に感じ取れる。
頭がボーっとしてくる。
私は最後には笑っていた。
校庭にいた生徒たちに指を指されて馬鹿にされる。
それでも私はニヤニヤしていた。
なぜかは……私にもわからない……。
毎日のようにぱんつを被っているせいか、妙にあの臭いで落ち着くようになっていた。
寮に帰った時も、妙にぱんつの臭いが恋しくなる。
「ん?真実?なにそわそわしてるの?」
「え?……いや、なんでもないよぉ……」
「最近よくボーっとしてるよね?」
「そうかな?あぁ、ちょっとトイレ行ってくるね?」
「うん……」
カスミに変に思われたかも。
でも、自分をコントロール出来ない。
トイレに籠った私は、ぱんつを脱いで自分の鼻に近づける。
「クンクン……乾いちゃって臭いが薄いかも……」
一番色が濃くなっているところを執拗に嗅ぐ。
「舐めたい……」
おしっこの味も病みつきになっている。
最近は一回目のお漏らしでも、仕上げと称して舌で舐めたりしているぐらいだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
気付けば私は浅ましく舌を伸ばして、それを舐めようとしていた。
「なに……してるんだろう」
ふと我に返って涙が出てきた。
私、どうしちゃったの?
「いやぁ!最近の真実は凄いですね!」
「追いつめられて、いい感じに壊れてきてるからな」
日も暗くなった編集室で、男二人がなにやら話しこんでいる。
「そう言えばあれ、本当にするんですか?」
「修学旅行のことか?あぁ、そのつもりだ」
「いやぁ、それ自体は別にどうにかなりそうなもんですけど、サプライズのほうは……」
「なんだ?反対か?」
「あいつがなんて言うかなって……」
「大丈夫さ、金に釣られた人間は、そうそう目が覚めたりしないもんだ」
「社長がそう言うなら信じますけどね」
「プロデューサーと呼べ」
「はいはい、じゃあ連絡取ってみますね」
「そうしてくれ」
正男は一人になった後自嘲気味に笑うと、煙草に火を点け出来あがった映像を見つめる。
「この子は本当にいい商品に成長してくれたよ、でもここからだ。これからもっと面白くなるぞ……」
窓から外を見渡すと、島全体が一望できる。
この島で一番高いビルの最上階。
そこから自分が作った箱庭を見つめ、満足したようにまた作業に戻った。
「修学旅行?」
「そうそう、どこ行くか知ってる?」
「この島に旅行するような場所あるの?」
「と思うでしょ?」
ある日の夕食時、寮の大食堂でカスミと二人でご飯を食べている時のこと。
「私も例年通りどうせあの温泉地帯で、ご宿泊コースだと思ったんだけど……」
「あぁ、北の方にある温泉地帯?私行ったこと無いなぁ」
「あれ?そうだっけ?って違う違う、今年は凄いって噂なの!」
「凄いって?」
授業中、とりわけ罰を受けている時以外はいたって普通な友人達。
その違和感に初めは人間不信に陥りかけていたが、最近ではこんな状態にも慣れたのか、割りきって普通に接することが出来るようになった。
「きっと真実喜ぶよぉ?」
「もぅ、勿体付けないで教えてよ……」
「なんとね?島の外に行くんだって!」
「え?ええええええ!?」
「ちょっ!真実!?声おっきいって!」
「あ……」
周りのポカンとした視線が突きささる。
「ご、ごめん……」
顔を赤らめて座りこむ。
「もう、真実ったら。いつもあんな恥ずかしい格好してるのに、まだその恥ずかしがり屋治らないの?」
「それとこれとは別だよぉ。っていうかそれ本当なの?」
「先生が話してるの聞いたから眉つばでは無さそうだよ?」
「ホントに?出られるの?この島から……」
「真実ってば外に行きたいってずっと言ってたもんね」
「うん……」
外の世界を見ればなにか変わる気がする。
この島での常識が通用しない外の世界なら……。
「私島の外に出るの初めてだよぉー」
カスミたちも気付いてくれるかもしれない。
この島の異様さに。
でももし、間違っているのが私なら?
……それでもいい。
私は知りたいんだ。
なにが正しくて、なにが間違っているのかを。
「じゃあ今日はこの学校での最後の思い出作りとなる、修学旅行についてお話します」
「ちょっと先生!その言い方ちょっとずるいよ!」
「最後とか言うなよぉー」
「ふふっ、ごめんごめん。行き先が決定したので、発表するわね?」
先生はごほん、と改まってみんなを見渡す。
「行き先は……京都です!」
「なあああにいいい!?」
「ちょっと!京都って!?」
「あ!あれか!?本島のあれか!?」
「やばい!私島から出るの初めて!」
「そんなの私もだよ!」
みんなが一斉にざわめき立つ。
本当だったんだ……。
本当に……島から出られる?
「予算とか時間の関係で、3泊2日になっちゃうんだけど……」
「全然いいぜ!?」
「だってあれだよ!?本島だよ!?」
「その内2泊は移動中のフェリーになっちゃうのよねぇ」
「んん!?」
「ってことは実質1泊?」
「それって修学旅行としてどうなんだ?」
「んーー、でも本島に行けるならよし!」
みんなはああだこうだと意見を交わしている。
みんなの顔を見ていると、どうやら楽しみなのは私だけではないみたいだ。
「じゃあ細かいことはまた追々決めていくとして、今日は班決めだけしちゃうわよ?」
「よぉーし!テンション上がってきたああ!」
みんなの高揚につられるようにして、私も話の輪に混ざる。
今はただこの旅行を楽しもう。
嫌な考えには蓋をして、楽しいことだけを考える。
そうして何ヶ月かを過ごし、遂に旅行の日がやってきた。
「真実?真実!」
「ふぇ?うぅん……」
「起きなって!もうすぐ着くよ!?」
「え?」
行きのフェリー、昨日ぐっすり寝たはずなのに、ずっと寝ちゃってたんだ。
「わぁ!凄い!あれが本島!?」
「帰ってきた……」
そこに見えるのは何気ない船着き場。
でもそれはあの島の景色が偽物の様にさえ思えるほど、自然な感じがした。
「では、午前は予定通り清水寺を見学します。班行動を守って、周りの迷惑にならないように気をつけてね?」
「「「はぁーい!」」」
平日なこともあってか、行きかう人は少ない。
それでもこの人たちは島の人では無い。
そう考えるだけでなにか得体のしれない期待が膨らんでいく。
しかし結局午前は特に変わったことも無く、残すところ午後の自由時間のみとなってしまった。
「さてと!ちゃっちゃと回るわよぉ!?」
「カスミったら、張り切ってるね」
「そういう真実だっていつもよりテンション高いじゃん!」
「そうかな?」
私の班はカスミと私、それと菊池くんと原田くんの四人。
「人見!今日はいつもの無しで頑張れよ!?」
「うっ……うん」
「おい菊池、そういうこと言うと人見が余計気にするだろ?」
「そ、そっか。ごめんな?」
「いいよ?心配してくれてるの、知ってるしね」
二人は男子の中でもよく私と話すほうだ。
菊池くんはたまに空気を読めてないところがあるけど、根は優しくて面倒見がいい。
原田くんはいつも落ち着いてて、とても同い年には思えないぐらい大人っぽい。
「なにしてんの!?置いてくわよ!」
「ちょっ!カスミ!?先行くなって!」
「はは、それじゃあお前が迷子だっつーの」
「ふふっ」
みんなといるのが楽しい。
心配事を忘れるぐらいに。
でも気を緩めちゃダメ。
いつまたあれが来るかわかんないし……。
最近では私の尿道は我慢することを忘れてしまっているらしい。
たび重なる失禁を繰り返すたび、どんどん緩くなっていく。
この旅行中はトイレに行ってもいいということになってはいるが、いつでもトイレに行けるわけじゃない。
気を付けないと……。
「へぇ、ここが高台寺かぁ」
「ねねが建てたんだよな?」
到って普通の修学旅行。
なにもおかしなところは無い。
周りの一般客も……。
思ったより島の人と違いは無い。
島で感じていた違和感。
なにかセリフをしゃべっているようなあの感覚。
ここの人たちも同じに感じる。
やっぱり私の考えすぎだったのか。
「おーい!人見!置いてくぞー!」
「え?ごめん!今行く!」
駆けだそうとした時、心臓がドクっと鳴る音がした。
「ん?真実?どうしたの?」
「……うそ」
「おい、人見?どうした?」
「……お父さん?お母さん?」
そこにいたのは楽しそうに歩く二人。
間違えようがない、私が会いたくて会いたくて仕方がなかった二人。
「え?ま、真実?」
「な!真実なのか!?」
「お父さん!お母さん!」
私は反射的に抱きついた。
でも頭の隅っこで近づいちゃダメだって信号が出ている。
なにかおかしいのだ。
でも私はそんな考えを払拭するように二人を呼ぶ。
「お父さん!お母さん!会いたかった!会いたかったよおおお!」
「真実……」
「ごめんな?辛かっただろ?」
そう言って撫でるお父さんの手は、柔らかくて大きくて……。
でも……。
「お父さん……時計買ったの?」
「ん?これか?まぁな、安いもんだよ?」
今言うべきことではないのかもしれない。
でも言わざるを得なかった。
だってそれはどう見ても高級な時計。
借金で全てを失い、それを返すために必死に働いている人間が買えるものでは決してなさそうな……。
「お母さんのバック……」
「これ?可愛いでしょ?」
私でも知ってるブランドのバックだ。
まだ借金が無かった時でさえ、手の届かないような高級なバックだったはずだ。
それだけじゃない、二人が身につけている物は明らかに高級なものばかりだった。
「……ねえ?二人は今……なにしてるの?」
聞いちゃダメ。
頭では分かっていても、口に出てしまった。
必ず迎えに行くと約束してくれた。
その為に頑張って働いているに違いないのに……。
「今ね!二人で旅行中なの!」
「お父さんたち、新婚旅行とか縁がなかったから。今新婚旅行をやり直してるんだよ」
「この後エステに行くのよ!?あ!よかったら真実も来る?」
「おいおい、お父さんも真実と遊びたいぞ?」
「えぇ?じゃあエステは中止にして三人で美味しい物でも食べに行く?」
「あ、でも真実は学校の行事かなにかで来てるんだろ?」
「それもそうね。あんまり連れまわすのはよくないわね」
ナニヲイッテイルノ?
新婚旅行?エステ?美味しい物?
そもそも私が聞きたかったのはそんなことじゃない。
今どうやって借金を返しているのかだ。
「ね、ねぇ?借金は……」
「借金?あぁ、それなら返し終わったぞ?」
「あ、真実、これさっきそこで買ったネックレスなんだけどね?」
返し終わった?
ならなんで私を迎えに来ないの?
お母さんが高そうなネックレスを私に見せてくる。
私はそれを思いっきり手で払いのけた。
「ちょっと!なにするの!」
「なにしてるんだ真実!お母さんに謝りなさい!」
「……」
「これ高いのよ!?貧乏人が何年働いても買えるような値段じゃないんだから!」
「そうだぞ!?貧民の年収ぐらいはする代物なんだぞ!?それをお前は!」
バシッ。
お父さんに頬を叩かれた。
お父さんにも、お母さんにも、手を挙げられたことなんて無かった。
それを……こんなものを叩き落としたぐらいで……。
二人の声が遠い。
カスミたちがなにか言っているが、それも聞こえない。
ただ、股の部分に慣れた感覚が広がっていくだけ。
気持ちいい。
おしっこ漏らすのって、こんなに気持ち良かったんだ。
我慢なんかしなくてもいいんだ。
あったかぁぃ……。
「人見真実、公衆の面前でお漏らししました……」
「真実?聞いているのか!?」
「ちょ!ちょっと真実!あなたもしかして!」
私は自分でもびっくりするぐらい笑顔だった。
誰に言われるでもなく服を脱ぐ。
下着も脱ぎ棄てて、着ていた制服で地面を擦る。
おしっこが染み込んだ砂が制服を汚す。
「汚してしまったので綺麗にします……」
「お!?なんだ!?裸だぞ!?」
「すっげえ!結構可愛いぞ!?」
周りの人も気付いたのか、人だかりが出来る。
ここは島じゃないのに……。
「すいません、すいません」
私は投げ捨てたぱんつを拾って顔に被る。
それを見てみんなが笑っている。
さっきまで優しかったカスミも、菊池くんも、原田くんも。
「お前修学旅行に来てまでお漏らしすんなよ!」
「クセえなぁ!こんなのと同じ学校だと思われると恥ずかしいだろ!?」
「真実!?あんた本当は裸を見られたいだけなんじゃない!?」
「そうだそうだ!汚いぱんつ被って、喜んでんじゃないのか!?」
「お!見ろよ菊池!こいつ濡れてるぞ!?」
「お!?これはおしっこじゃないだろ!?」
「うっわ、汚い……。なに発情してんの?」
三人の罵声が気持ちいい。
「真実!あなたお母さん達にまで恥をかかせて!」
「お前はいい年をしてなにをしてるんだ!お父さんはお前をこんな露出狂に育てた覚えはないぞ!?」
「いやらしい!わざとまんこ見えるように足広げてるの!?」
「そんなに男を誘惑したのか!この淫乱雌豚め!」
実の両親に馬鹿にされても、心が痛くない。
むしろ気持ち良くなるぐらいだ。
「あいつ言ったら犯らせてくれるんじゃねぇ?」
「やめとけって、親も一緒っぽいぞ?」
「でもその親も一緒になって馬鹿にしてるぞ?」
「ちょっと言ってみるか?」
「オナホールで一人寂しくするよりはマシだろ」
「小便まみれの汚い穴だけどな」
見ず知らずの人が私をいやらしい目で見てくる。
まんこの疼きが止まらない。
「あの子あの年であんなプレイにはまっちゃって、人生終わってるわね」
「うっわ!ぱんつ被ってんの!?」
「ちょっとぉ!あの子自分の汚れたぱんつ舐めてない!?」
「ほんとだ!吸ってるよ!?」
「あ!自分で弄り始めた!」
「公開オナニーとかマジ笑える!」
「動画撮らなきゃ!」
お姉さん達が私の不様なオナニーを携帯で撮影している。
きっとネットにアップされるんだ。
私の浅ましい姿が誰でも簡単に見れちゃうんだ。
「……もっと、もっと見てえええ!私の!真実の変態お漏らしオナニーもっと見てええええ!」
「はは!豚がなんか言ってるぞ!?」
「いいぞ!もっと腰振れ!腰!」
「鳴けよ!豚!」
「はいいいい!ぶひいい!ぶひっ!ぶぎいいい!」
周りが煽ってくる。
私は見ず知らずの人たちの命令の言いなりになる。
「もう!あんたなんか娘じゃないわ!」
「そうだな、お前みたいな臭い女が娘だと思われるのは心外だ」
「ま、元々戸籍上あんたはもう私達の娘でもなんでもないけどね!」
「清々したよ!はははっ!」
お父さんとお母さんはもう、お父さんとお母さんでは無くなったらしい。
でもいいの。
だって気持ちいいんだもん。
「おい!これ舐めろ!これ!」
「ぶひいい!はっ!はっ!はっ!」
お父さんより年上の男がちんぽを露出して近寄ってくる。
島ではたまに見る光景だ。
あの時は異常に思えたのに、なんだやっぱりこれが当たり前なんだ。
私は四つん這いで近づいていき、男の汚いちんぽをぱんつ越しに舐めまわす。
「おおお!いいぞ!オナホールより劣るが、タダだから許してやるよ!」
「じゅぼっ!じゅぼおお!ジュルジュルジュル!」
必死になって舐めまわす。
ぱんつごとちんぽを咥えこんで頭を前後する。
「おい!こっちも犯すぞ!」
腰を持たれた。
あぁ、そっか、私犯されるのか。
「ぷはっ!はい!汚い処女膜付いてますが、よければぶち込んで下さい!臭い小便まんこをザーメンで綺麗にしてくだしゃいいい!」
「よおし、じゃあお望み通り犯ってやるよ!挿れると同時に感謝しろ!」
「ひゃいいい!ぐひっ!?にぎいいい!ありがとうごじゃいましゅううう!」
まんこが痛い。
いや、熱い?
なんだよかった、気持ち良くなってきた。
「まぁまぁだな。おい!もっとケツ振れや!」
「ぶひっ!」
「おい!口も使えよ!あったま悪いなぁあ!」
「しゅいましぇええんん!じゅぼっ!レロレロレロレロ!うごっ!?うげぇ!」
お尻をベシベシ叩かれるたびに腰を振る。
髪の毛を掴まれて、無理やり喉の奥までちんぽを挿れられる。
周りからは馬鹿にされ、動画や写真を撮られて、友人に笑われて、親に捨てられた。
でも……それらの全てが気持ちいい。
「いぐううう!いにっ!ふごっ!いっぎゅううううう!」
それから先の記憶は無い。
気付いた時には精液まみれでフェリーに乗っていた。
ぱんつはより汚くなっていたが、顔に被ったままだった。
息を吸うだけで吐きそうな臭いがしてくる。
口の中が気持ち悪い。
チン毛がいっぱい入っていた。
鼻の穴に詰まっているのは……チンカスか。
服はなにも着ておらず、まんこの中にはゴミの様なものが詰まっている。
食べかけのなにか、コンドーム、虫の死骸。
それらは全て精液と愛液でコーティングされている。
まだ奥になにかあるみたいだが、指が届かない。
お尻の穴からも煙草の吸殻が出てくる。
あ、ガムも入ってた。
「気付いた?」
「……カスミ?」
「あれからあんた次の日の朝まで犯され続けたのよ?」
「そうなの?」
「さすがに付き合いきれないし、私達も危ないからってホテルに帰らされて、翌朝拾ってフェリーに乗せたの」
「そうだったんだ……」
「残念だったね」
なんのことを言ってるんだろう。
心当たりが多すぎてわからない。
「ホテルで遊ぶの、楽しみにしてたのにね?」
「……そうだね」
そう、あれは当たり前の日常でしかない。
私はお漏らしの罰として脱ぎ、興奮して痴態を晒し、同意の上で玩具になったのだ。
「先生怒ってたよ?門限破りだって」
「……そっか」
「後で一緒に謝ってあげるね?」
「ありがとう……」
「おおい!みんな!トランプしようぜ!」
「あ!私も行く!真実?行こう?」
「私はいいや」
「なんで?」
「また、おしっこ出てきちゃったから、舐めて綺麗にしないと」
「そっか、臭いからもう行くね?」
「うん、ごめんね……」
私は一人席についたおしっこを舐めとっていく。
ついでに席を汚す精子も。
みんなの楽しそうな声が遠くで聞こえる。
私も早く終わらせて参加しなきゃ……。
「大成功でしたね!」
「いやぁ、これは売れるぞ!?」
「しかし大変でしたよ!」
「そうだな、ばれないように周りをエキストラで固めたり、エグいぐらい汚れたあいつを運んだりなぁ」
「終わってみれば楽しかったですね」
「久々に島を出たしな」
「それにしても、もうすっかり人気女優ですね」
「女優、と言うのは語弊があるかな」
「確かに、演技してるわけじゃないですもんね」
「そう、ただの変態だ」
「ははっ!本当、人見社長ってドSです!」
「楽しんでるお前もな。父親なのに最低だろ、実の娘にあそこまでするか?」
「それじゃなきゃもう逝けないんですよ。仕方ないです」
「ははっ。さぁ、こっからは卒業式に向けてまた忙しくなるぞ!?」
「えぇ?少し休みましょうよ……」
「そうだな?明日からは本当に奥さんと旅行でも行ったらどうだ?」
「は?なんであんな年増と?どうせ行くならエキストラの奴隷とセックス旅行でしょ?」
「娘じゃなきゃ逝けないんじゃなかったのか?」
「え?そんなこと言いましたっけ?」
「ほんとお前ってやつは……」
「卒業生代表、人見真実!」
「はい!」
壇上に登り、予定調和の様にそこでおしっこを漏らす。
「すいません!卒業式なのにお漏らししました!」
私は手を垂直に挙げて宣言する。
「最後まで汚ねえなあ!」
「この露出狂!」
「変態公衆便所!」
「いつもみたいに腰振って媚びろよ!糞女!」
「最後だしあれもやってよ!」
みんなが口々に好きなことを言う。
私はなにもしないでもぱんつ丸見えのスカートを捲って、思い切り力む。
すぐにびしょ濡れのぱんつは茶色く染まっていく。
「人見真実!全校生が見ている前で糞を漏らしました!ぶひいい!」
「最低!卒業式が台無しじゃない!」
「ほんとにやる!?なに考えてんの!?」
「出過ぎだろ!あれ!ぱんつからもれてぼとぼと落ちてるぞ!?」
「ひぃ!ひぃ!やっべぇ!笑いすぎて腹いてぇ!」
私はうんこまみれのぱんつを脱いで、一旦床に置く。
鼻フックを取り、汚ぱんつを顔に被る。
生温かいうんこが顔にへばりつき、快感が身体中を襲う。
再度鼻フックを装着すると、鼻の穴にまでうんこが入ってくる。
「ほら!お顔綺麗にしないと!」
「そうだ!あれやれ!あれ!」
「やっぱ最後に見とかないとな!」
「はい!真実!汚い顔を綺麗にします!」
私は腰を落としてガニ股になり、臭いまんこを突き出すと、汚れたぱんつの上から顔をゴシゴシする。
手の動きに連動して、腰をヒクヒク前後に動かすのも忘れない。
「おおい!腰も動いちゃってますよぉ!」
「ねばねばした臭い愛液まで飛び散ってんぞ!」
「ずびまぜん!ぐざくでずびまぜん!」
顔を擦りながら、大声で謝罪する。
しゃべる度に口の中にうんこが入ってくる。
「そのまま逝け!」
「いやいや、さすがに顔擦るだけじゃ逝けないんじゃない?」
「いや!あの豚なら逝ける!」
「そうだ!逝け!」
「「「逝―け!逝―け!」」」
「ぶべえええっ!いぶううう!いぐっ!いぐうううっ!」
そのままコールが続き、私はしばらくして身体をびくつかせて逝ってしまった。
卒業式が終わり、壇上を綺麗に舐めとりながら思う。
こんな生活も終わるのだと。
卒業してもまた島の学校に進学するだけだが、あのクラスでは無くなる。
クラスのルールも無くなるのだ。
今度はちゃんと言おう。
授業中でも、トイレに行きたいと言えばいい。
死ぬほど恥ずかしいことだが、変態の私に怖い物は無い。
そう……思っていたあの頃が、懐かしい。
「人見真実!授業中に猿のようにオナニーしていたので!罰としてクラスの全員に犯されます!」
「犯して欲しいだけだろ!?」
「まったく、毎回付き合うこっちの身にもなれよ?」
「臭いまんこじゃ萎えるんだよなぁ」
「すいません!すいません!エッチなことしますから!どんな無様なことでも!恥ずかしいことでもなんでもしますから!犯してええ!まんこほじくってええええ!」
私の絶叫はいつまでも続く。
二度目の妊娠をして早5ヶ月、服を着ていれば目立たないが、脱げばぽっこりしたお腹が顔を出す。
窓の外を見ると、日高先輩がこっちを見ている。
授業中なのになにしてるんだろう。
あ、目があった。
……凄く不快そうな顔をされた。
いつか先輩にも使って貰えると嬉しいな。
そんなことを考えていると、お腹の中の子が少し動いた気がした。