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夏色

新作でけたぁ!
まさかの短編『夏色』です!
R-13色の強い作品になってます。
本編はお馴染み【続きを読む】からどうぞ!





「ちょっと清文!なにやってんの!?学校遅れるでしょ!?」
「あ、おはよう夏色。味噌汁が熱くて飲めないから、今冷ましてるんだよ」
「なんで朝ごはん堪能しようとしてんの!?今何時かわかってる!?」
「食べ物を粗末にしてはいけなよ。ちなみに今8時だよ?時計忘れたの?」
「あああー!もう!私が飲む!」
「あ!ちょっと!」
私は机の上に置いてあった味噌汁を奪い取ると、一気に飲み干した。

「があああ!熱い!」
「味噌汁って飲むであってるの?食べる?吸う?啜る?」
「どうでもいいから急いで!」
清文の手を取り引っ張る。

こんな瞬間がたまらなく幸せに感じる。
こんな風に自然に手を握れるようになるなんて思ってもみなかったから。


私の名前は石井夏色。
そのまま『なついろ』って読む。
お察しの通り両親がファンなのだ。
私が生まれた日に夏色って曲が発売したらしい。
当日に考えるのは止めようよ……。

現在は徒歩で通える学校に通っている。
まだ入学して間もないけど、だいぶ慣れてきた感じ。
中学生の時は最後ちょっと変な感じになっちゃってたから、心機一転って感じ?


幼馴染の清文とは家が近所で、親同士の仲がいいこともあって、小さいころからずっと一緒にいる。
頼りない清文を放っておけない私は、ずっと清文のことを弟のように思っていた。
実際清文も私のことを、姉のように慕ってくれていたと思う。

とは言っても思春期真っただ中の私達は、中学に上がる頃には学校で話すことは無くなっていた。
清文が入っていたバスケ部のマネージャーをやっていたので、それなりに話す機会はあったのだろうが、なぜか学校で話すのは照れ臭かったので極力避けていた。

元々清文が心配でマネージャーを始めたのに、本末転倒かなとも思っていたが、それはそれで居心地はよかった。
今思えば、頑張っている清文を確認出来ればそれでよかったのだろう。


そんなこんなでいつも私の手を握って、後ろからついてきていた清文は、着実に男の子になっていった。
運動神経が壊滅的に悪い清文は、帰宅部に負けるぐらいバスケは下手だったけど、誰よりも努力していた。
後輩たちより早く来てシュートの練習をして、先輩たちより長く居残ってハンドリングをし続けた。
最後に綺麗に体育館を掃除して、それを待っていた私と二人で帰るのが定番になっていた。

部活が終わればいつもの二人に戻る。
普通に話もするし、冗談も言う。
レギュラーになれずに恵まれないながらも、直向きに努力する姿を見ていて、いつしか掃除が終わるのが待ち遠しくなっている自分に気付く。

三年生の夏、最後の試合のころだった。
私はやっと自分の気持ちに向き合えた。
清文が好き。

明日の試合が終わったら、告白しよう。
結果がどうであれ、流れで言っちゃおう。
そう固く心に誓ったのを覚えている。



「お疲れ様!疲れたでしょ?ほら、スポドリ冷やしといたよ?」
「お、さんきゅ!ひやああ!生き返るわぁ!」
「そんなことより……」
ニヤニヤしながら見ている私をいぶかしむ清文。

「なに?どしたの?」
「この度はおめでとうございます」
うやうやしく頭を下げる私に、照れくさそうにする清文。
頬をかきながらそっぽを向いている。
うん、可愛いじゃないか。

「あ、ありがと……」
「やっとだね」
「試合に出れるってわけじゃないけどね」
「それでも……だよ」
「ま、嬉しいのは本当だね」
「もう!照れちゃってぇ!この!」
「ちょっ!止めてよ!もうヘトヘトなんですよ!?」
「へへぇー」
今日の練習の最後、ミーティングで明日のレギュラーが発表された。
そこで今まで三年間呼ばれることの無かった清文の名前が、その最後に加えられたのだ。

「監督言ってたよ、同情とかじゃないって」
「まじで?」
「ちょっと遅かったけど、間に合ったなって言ってた」
「……」
「おやおや?泣くのは早いのでは?」
「……ぃてねぇょ」
月が昇り始めて薄暗い帰り道。
なんだか自然と手をつなぎたくなるのを我慢しながら、家まで帰った。



「清文!アップしとけ!」
「ええええぇ!?ぼ!僕ですか!?」
試合当日、ベスト4を懸けた大事な試合。
ここで負ければ夏が終わる。

点差は1点、さっきから取ったり取られたりで落ち着かない。
残り時間はあと5分、ここが正念場だ。

「ミドルからのシュート、今のお前なら絶対に外さない」
「いやぁ、それはどーかと……」
「誰が体育館の鍵閉めてたと思ってんだよ」
「え?」
「お前がどれだけ練習してたか、そんで、どんだけ成長したのか、俺は全部わかってる」
「監督……」
「行って来い、勝つためにお前をレギュラーに入れたんだ」
「……はい!」
マネージャーとして同じくベンチに座っていた私。
こんなに胸が躍る瞬間は産まれて初めてだった。
嬉しいとか、頑張れとか、もうすぐ終わっちゃうんだとか、まだ続けていたいとかそんな全部の感情が、一気に最高潮になった感じ。

勝っても負けてもきっと後悔はしない。
多分試合に出てる清文見たら、私泣いちゃうよぉ……。

ボールが外に出て、審判から交代のコールが出る。
清文の頑張りをずっと見てきた仲間たちが笑顔で送る。
コートにいたキャプテンが小声で「遅せぇよ」って言って笑ったのがわかった。

整い過ぎているぐらいの活躍の場、こんな時に限って失敗するのが清文だがそれでもいい。
なんだよぉ、まだ試合再開してないのにもう涙出てきちゃったじゃんか……。


「な!き!君!止めなさい!」
その時急に会場の雰囲気が変わったのが分かった。

「うっせぇ、触んな」
氷のように冷たい声。
客観的に聞けば綺麗な声なのに、なんでこんなにも聞き心地が悪いのだろう。
誰でも無い、聞き覚えのあるこの声の主は……高田道成。

誰もが目を疑った。
そこには審判を殴り続ける高田の姿があった。


会場が凍りつく。

誰も動けない。

審判が必死に抵抗する声だけが会場に響き渡る。


その日の試合、私達のチームは失格となり、夏が終わった。



高田道成、中学から同じ学校となった彼は、容姿端麗文武両道、なにをやってもそつなくこなす人間だった。
しかし生活態度は限りなく悪く、良くも悪くも常に注目の的だった。

彼がバスケ部に入ったのは、私達が二年生の時の夏。
一つ上の先輩たちの、最後の試合が始まる前だった。
ふらっとやってきた彼は、ただ黙って監督に入部届けを渡し、ミニゲーム中の先輩たちからボールを易々とスティールし、怒った先輩たち全員を抜き去りシュートを決めた。

その瞬間からレギュラー入りが決定し、常に試合のスタートメンバーに選ばれた。
試合では常に大活躍するが、気が乗らなければ試合に来ないことすらある始末。
去年の先輩たちが最後に負けたのは、高田が来なかったせいでもあった。

それに加え、彼が練習に顔を出すことは初日以外なかった。
それでも勝つために、監督は高田を起用し続けたのだ。
初めそのことについて、チームのメンバー全員から不満の声が上がっていた。
それを押さえたのが他でもない清文だったのだ。


「強いやつが出るのは当たり前だろ?練習頑張ったやつが出るんだったら、とっくに僕が出てるじゃん?」
怒っていたみんなの空気が変わった。
なにせみんなが怒っていたのは、清文を思ってのことだったからだ。
それに、頼もしい仲間が入ったことに変わりはなかったのだし。

「お前がそう言うならいいけどな」
「きよっちはホントお人よしだわ!」
「自虐ネタかよ!ははっ!」
「なんだよぉ、笑うなって。ホントのこと言っただけだろ?」
いつもそうだった、清文は誰かを恨んだりしない。
誰かのせいにしたりなんかはしない。

そんな清文だから、バスケはあんまり上達しなかったけど、この部活に必要な存在であり続けたんだ。


そんな清文の気持ちも、チームの期待も、私達みんなの三年間も、全部、全部、全部全部壊して、彼、高田道成は言った。

「飽きたから帰りたかったんだよ、それなのにあいつが邪魔した」

なんのことについてなのか、その時聞いていた私ですら一瞬分からなかった。
……審判を殴った理由らしい。

それだけ言って、高田は本当に帰ってしまった。
その後長い停学になった彼が戻ってきたころには、すでに卒業式の準備が行われていた。


清文は……笑わなくなった。
いや、それ以前に話さなくなった。

もちろん、告白なんて出来なかった。
それでもずっと、そばにいた。

学校では恥ずかしいとか、そんなのもうどうでもよかった。
昔とは逆、ずっと清文の後ろをついていくようになった。

ただ違うのは、会話が無いこと、清文も私も笑えないこと。

事情を知っていた学校の友達は、私達のことをそっとしていてくれた。
だからこそ、ずっと二人。
ただそばにいるだけ、誰も話しかけない。
周りにどれだけの人がいても、あの時私達は二人きりだった。


卒業式の前日、清文が言った。

「ねぇ夏色」
久しぶりに聞く清文の声は、知らない人の声みたいで少し怖かった。

「身体鈍っちゃったよ、またトレーニング付き合ってね」
まだぎこちないその笑顔は、痛々しくて、それでも、力強く感じた。

「清文が好き……」
「そうだといいなって、ずっと思ってた」
その日私達は幼馴染から恋人となった。
そしてまた、前を向いて歩き始めることが出来た。
二人で、一歩ずつ。



「そう言えば今日もバイトなの?」
「バイトじゃなくてお手伝いね?」
「お金貰っちゃったんでしょ?」
「だってぇ、断るとおばあちゃんが悲しそうな顔するんだもん……」
「閉店までいるんでしょ?部活終わったら直接店に行くよ」
「ん、おっけー」
清文は今でもバスケを続けている。
やっぱり下手で、レギュラーへの道はまた遠くなってしまったけど、前とは違う気がする。
なんて言ったらいいかわかんないんだけど、ええっとぉ……格好よくなった?
ってこれじゃあただの惚気だね。

朝練が無い日は一緒に登校、清文が部活の時間は、私は隣町のお花屋さんのお手伝い。
それが終わったら一緒に帰る。
たまに……公園で話してから帰るのが、ちょっと大人みたいで気に入っている。

「なつ、おはよー」
「あ、さつき、おはよー」
「清文くんもおはよー」
「うん、おはようございます」
「なんで敬語?ふふっ」
「えぇ?挨拶だから?」
最近の私の悩み、それは『清文が密かにモテているのでは疑惑』に尽きる。
下手だけど頑張る清文節は、どうやら私でなくても効果があるらしいのだ。
それに加え清文の人のよさ、親しみやすさがここに来て完全に邪魔である。
やっぱりマネージャーになって、常に監視しなきゃダメなのか……。

「なに?変な顔して」
「変な顔で悪かったわね。どうせさつきの方が可愛いですよぉーだ」
「え?なに?怒ってるの?なんで?え?」
ばーか。

私は清文を置いてさっさと歩いていく。
ちなみに清文は上靴がなかなか履けないという、馬鹿みたいなタイムロスで留まっている。

すたすたと歩いていく私。
階段の角を曲がった時に、丁度降りてきた人とぶつかってしまった。

「いたっ!……ったぁ、ごめんなさ……」
「……」
心臓が止まるかと思った。
殺されるのかと思うぐらい鋭い目つきで睨まれる。

……高田道成だ。

「……」
「……どけ」
短くそう言うと、すでに尻もちをついている私を、足で退けて歩いていってしまった。

「あれ?どうしたの?そんなとこで座って」
よかった、清文は気付いてないみたい。

不幸にも私達は高田と同じ学校に進学してしまった。
せめてもの幸いは、今のところ彼がバスケ部に所属していないことである。
まぁ希望があっても、事件を起こした高田を迎え入れるほどバカではないだろうが。

進学してから二カ月が経とうとしている今、私達はいつものペースを取り戻しつつあるが、依然として高田のことは無視し続けている。

と言っても、向こうから接触してくることなど皆無な上、学校にもあまり来ていないようなので関係ないのだが。
今ももう始業の時間だというのに、外履きに履き替えている。
それなら初めから来なけりゃいいのに……。


「夏色?なにしてるの?遅刻するよ?」
「んえ?」
「んえってなんなんだろうねぇ」
「忘れろ」
自分から止まっていたくせに、先を急ぐようにその手を握る。
今はただ、その温もりがあればそれでいい。
清文の手を握っていると、そう思えるのだ。



「ありがとうございましたー」
恋人へのプレゼントだろうか、色とりどりの花束を買って帰る青年を見送る。

「なっちゃん、疲れただろ?お菓子食べるかい?」
「もぉ、おばあちゃん、さっき休んだばっかでしょ?」
ここは隣町の花屋。
入学してからすぐのころ、道で困っているおばあちゃんを助けたことから縁が出来た。

沢山の荷物を持って歩くおばあちゃんを手伝って目的地まで行くと、そこは小さな花屋さんだった。
聞くと、娘夫婦がやっていた花屋なのだと言うが、最近二人が事故で亡くなってから、おばあちゃんが一人で切り盛りしているらしい。

大切な娘を失った心の穴を埋めるように、ひたすら働いているおばあちゃんを想像してしまい、私はその日からちょくちょく遊びに来るようになった。

初めの日はお客さん、その次の日からはすでにお手伝いになっていた。
別にバイトをしている気はなかったのだが、月末におばあちゃんがお給料をくれた。
多すぎると返したのだが、悲しそうな顔に負けて受け取ってしまった。

薄々思い始めてきたのだが、あの顔はごり押しする時に計算でやっている気がしないでもない。
恐るべし、年の功。


「でも美味しいお菓子、買ってきたのにねぇ……」
「あぁ、もう!食べます!食べたいです!」
「ふふっ、なっちゃんは本当に可愛いねぇ」
「もぉ、おばあちゃんには勝てないや」
「もうすぐ閉店の時間だし、店じまいしてゆっくり食べようか」
「そうしちゃいましょうか」
ということで、二人でお菓子を食べながら、清文を待つこととなった。

店を閉めると言っても、シャッターはないので外に出している花を中に入れて、扉に鍵をするだけだ。
最後に中から『CLOSE』と書かれた札を下げて終わりだ。

店の机に二人で座り、柔らかいスポンジケーキの様なお菓子を食べる。
今は人生の先輩であるおばあちゃんに恋愛相談中だ。


「それは拙いねぇ、清文君を好きな子も着実に出てくるだろうねぇ」
「やっぱり!?どうしよぉ……」
「大丈夫、なっちゃん可愛いんだから、自信持ってね?」
「そんなことないもーん」
「毎日迎えに来る清文君だよ?安心しな」
「そうかなぁ」
ドンドン、と扉を叩く音がする。
清文が来たのかと思ったがどうやら違うらしい。
清文なら携帯で先に電話してくるだろうし。

「お客さんかな?」
「急な買い物かねぇ?どれ、出てやろうか」
「あ、いいよ、私行ってくる」
外は真っ暗で相手の顔は見えない。
でも背恰好からしてやっぱり清文じゃないみたい。

「お客さんですかー?」
「……」
呼びかけに応答が無い。

ちょっと変だと思ったが、外の道は大通りだし、まだ人もまばらにいる。
危険はないだろうと思い、扉を開ける。



「黙れ」
相手の顔を見た瞬間、突然それだけ言われた。
声が出ない。
なんだろう、恐怖とか驚きとかそういうので出ないんじゃない。
本当に声が出せない。

「清文が迎えに来たと言って店を出ろ」
「おばあちゃん、清文だったみたい、今日はこれで帰るね?」
「あら、そうかいそうかい、片づけはいいから早く帰りなさい」
「じゃあねぇー、おやすみー」
驚くほどスムーズに言葉が出る。
頭で考えてない言葉がだ。

「清文に用事が出来たから一人で帰るとメールしろ」
私は無言でメールを打つ。
すぐに返信があった。
内容を見たかったけど、すぐに高田が言った。

「ついてこい」
それ以降話さなくなった彼の後ろを、黙ってついていく私。
その時の私が感じていたのは、戸惑いや恐怖なんかじゃなかった。
直感的な絶望、それが彼、高田道成という男を表す全てだと感じ取っていたのかもしれない。



どこに連れていかれるのかと思っていたが、そこは見知った場所、というか我が家だった。
両親と私の三人暮らし、なんてことない平凡な家庭。
パパがローンで買ったらしいこの一軒家に、高田が入っていく。
私はその後ろをついていくしか出来ない。

拙い、なんでこんな状況になってるかわからないけど、このままじゃパパとママに迷惑がかかるかもしれない。
必死に抵抗して身体を動かそうとするも、ぴくりとも動いてくれない。

「あら?なつ、帰ってたの?」
「黙れ」
「……」
やっぱり同じだ。
ママは驚いて声を出そうとしているが、全然聞こえてこない。

「ん?なんだぁ?なつだったんだろ?」
リビングからパパの声がする。
高田がリビングに入っていく。
新聞を読むパパの後ろに立ち言葉を放つ。

「黙れ」
「……」
男の声にビックリして振り返るパパ。
でもやっぱり声は出ない。

「お前とお前、自室に戻り朝まで寝ていろ」
「「……」」
二人は黙ったまま二階にある寝室へ向かった。
よかった、どうやら二人に危害は及ばないようだ。

「水、持ってこい」
わが身の心配をする前に次の命令が来る。
どうやらなぜかは解らないが、高田の命令には逆らえないらしい。

冷蔵庫に水を取りに行く。
しかしミネラルウォーターが無かったため、浄水器から直接コップに注ぎ持っていく。

パパの席であるリビングのソファーに、土足で座っている高田にコップを渡す。
一口含んで高田が嫌な顔をした。
立ちあがり私の顔を覗き込むと、そのまま口に含んだ水を顔に吐きかけられた。

冷たい、そしてなにより不快感が身体中を襲う。
それでも顔を拭うことすら許されない。

「お前は俺に嫌なことをされるたびにお礼を言え」
「ありがとうございます」
その命令こそ嫌なことであったのだろう。

「ちゃんとしたミネラルウォーターを買ってこい」
どうやら浄水器の水じゃあ満足できなかったみたいだ。
なんだろう、不思議と落ち着いている。
それはそうだろう、パニックに陥っている暇はない。
このままでは私の大切な人たちに被害が拡大する可能性がある。
そうなる前になにか手を打たないと。

水を買いに行こうとした私を高田が呼びとめる。

「おい、待て」
そう言うと高田は私のカバンを漁り始めた。
なにをされるのかと思ったが、筆箱からマジックを取り出しただけだった。
本当になにがしたいのかわからない。
相手の出方を伺っていると、信じられない言葉が聞こえた。

「スカートを捲れ」
やめて……。

「もっとだ、腹が出るぐらい捲れ」
やめて!

まだ清文にもちゃんと見せたこともない下着を、あろうことか大嫌いなこいつに自ら見せている。
身体中に悪寒が走る。

「ありがとうございます」
「ん?あぁ、そうか。なにを感謝してるかちゃんと付けくわえろ」
「ぱんつを見て下さってありがとうございます」
悔しい……。
身体が動いているなら、真っ先に殴っていただろう。

あぁ、ああああ!
高田の手が私の下着に伸びてくる。

やめてえええ!
触らないでええ!

目を瞑りたくても自由にならない。
真直ぐ向いたままの私には、高田の手元は見えないが、触ろうとしていることは分かる。

くっ!
……え?

意外にも高田は私に触れてはこなかった。
ただ、マジックで下着になにか書かれているようだ。
あぅ、お気に入りのやつなのに……。

書き終わった高田は再度私に命令する。

「水を買った自販機の受け取り口に、そのぱんつを脱いで入れてこい」
え?
今、なんて言ったの?

その言葉の意味を考えている内に、私は家の近くの自販機の前に来ていた。
お金を入れてミネラルウォーターを購入する。
その流れで、自然に下着を脱ぐ。
お気に入りの白いシルクの下着には、黒のマジックで私のフルネームが書かれていた。

下着を脱いだのでスカートでは心細い。
風が吹くたびに胸がドキドキする。
幸い脱ぐ所は誰も見ていなかったようだが、このぱんつは見られてしまうだろう。

つい、ぱんつの汚れを確認したくなった。
でもどうせ身体が動かない……。
あれ?動く!

そう思った瞬間駆けだそうとした。
しかしそれは叶わない。
一瞬手は動いたのに……。

再度汚れを確認しようとぱんつを顔に近づけると、なぜかその行動は考えた通りに遂行できた。
少し黄ばんでいる……。
この黄ばみを見知らぬ誰かに見られるのだ。
しかも名前入りで……。

いっそ本当に見知らぬ人であってほしい。
下手に知り合いにだけは見られたくない。

祈っていても結果は変わらない。
私の身体はまた自動で動き、ぱんつを自動販売機の受け口に入れた。



帰った私は挨拶の代わりに高田に言った。

「私の黄ばんだぱんつを放置させていただき、ありがとうございます」
「はいはい。あぁ、そうだ、しゃべっていいぞ。ただし、大声はなしだ」
「変態野郎、地獄へ落ちろ」
第一声はそれだった。
むしろそれが全てか。

「質問は?」
こいつはきっと感情が欠落している。
なにを言っても無駄だ。

「これはどういうこと?」
「おおざっぱな質問だな、でもまあいい」
そう言うと高田は初めて笑った気がした。

「俺の命令は絶対。これだけだ」
「超能力かなにか?」
「さあな、俺も知らない。気がついたら使えるようになっていた」
「私をどうする気?」
「あ?ただの暇つぶしだ。飽きたら捨てる」
腐ってる。
人として、いや、こいつはもう人では無い。

「なんで私なの?」
「今日ぶつかっただろ?」
「確かに……それがどうしたの?」
「痛かったんだ」
別に黙れと命令されたわけではない。
しかし言葉が出なかった。
冗談を言っているのではないことぐらい目を見たらわかる。
こいつは本気で言っているのだ。
ぶつかられて痛かったから、私を玩具にすると。

「……どうしたら、許してくれますか」
「許さない、なにがあっても絶対」
「き……」
言葉にしようとしてすぐに止めた。
清文や両親に迷惑をかけないで。
そう言ったところで、こいつに要らぬ知恵を付けるだけだ。

「なんだ?」
「い、いつからそんな能力が?」
別に興味はないが、苦し紛れだった。

「最近。入学してからか?」
「どうやってそんな……」
「わかんねぇな。気が付いたらこうなってた」
「なんで……説明してくれるの?」
「別に?暇だから」
どうしよう、まったく解決の糸口が見つからない。
こいつの気が済むまでやらすしかないのか?

あんなことを?
さっきのでさえ、もう街を歩きたくなくなるぐらいのトラウマになっているのに?


「じゃあ質問タイム終了な。なにして遊ぼうかなぁ」
なんとしてでも清文達に被害が及ばないようにしないといけない。
でもどうやって……。

「お前は俺の質問に全部答えろ」
「わかった……」
どうしよう、なにか考えないと……。


「お前がやられて一番嫌なことってなんだ?」
「……」
え?今なんて言った?

「清文や両親を巻き込むことです」
「そっか、じゃあそれやろう」
「やめて、いや、お願いだから、他に何でもやるから、だからお願い」
「黙れ。お前はヘラヘラ馬鹿みたいに笑ってろ」
「へ、へへへ、へへ……」
私の顔がニコニコ笑っている。

もうダメだ……。
こいつは、止められない。



「いやぁ、星が綺麗で最高の散歩日和だな」
「やめて、パパ、正気に戻って……」
「ん?今人間の声が聞こえたぞ?」
「ぶっ!ぶぎぃ!ぶひっ!」
「ははっ、いい子だいい子だ」
今私は裸に首輪を付けられて、四つん這いで夜道を歩いている。
首輪から伸びるリードを持っているのは、ニコニコ顔のパパだ。

あの後パパはこいつの命令で、私を無理やり裸にして、暴力によって夜の散歩を強要している。
私はなにも知らない素振りをするように命令されているので、パパは私を無理やり露出させていると思っているだろう。

蹴られた脇腹が痛い。
早く服を脱げ、ケツをもっと振れ、人間の言葉をしゃべるな、お前は豚だろうが。
暴言と共にひたすら同じところを蹴られた。

私は命令によりなにも知らない素振りをしているので、スムーズにパパの言うことを聞けない。
いや、自由に動けても、ここまでのことをスムーズに進めることは出来なかっただろう。

人通りが少ないとはいえ、さっきから何人かにすれ違っている。
大抵みんな見て見ぬふりをすると見せかけて、チラチラと私の裸を見ている。
膨らみが大きくなってきた私の乳房が、重力で垂れ下がり揺れている。

「お、酔っ払いが来たぞ?」
「パパ、止めようよ、怖いよ……」
「あいつの足元にすり寄ってこいよ、ブヒブヒ言いながらな」
「そんな!なにされるか!ぐぎいい!」
また脇腹を蹴られた。
手加減してないらしく、一回ずつ激痛が走る。

「ふひぃー!飲み過ぎらぁ、おっと危ね。こけるとこだったわぁ」
「ぶひぃ!ぶひ!ぶひぶひ!」
「ん?……なに?」
お父さんより年上に見える頭の禿げた汚いおじさんだった。
私はそのおじさんの足にすり寄り、ブヒブヒ鳴いてみせた。

「えぇぇ!?なにこれ!?夢!?酒の力すげぇ!」
「ぶひぃー」
「そいつ頭がおかしくてね、遊んでやってくれませんか?」
「な、あんたは?」
「そいつの飼い主ですよ。なに、金なんかとりません。それにそいつ初物ですよ?」
「ままま!まじか!」
パパ?嘘だよね?
操られてるって言っても、それは、それだけは……。

「触ってもいいのか?」
「もちろん、小便飲ませようがサンドバックにしようがあなたの自由ですよ?」
「ふへへ!どうせ夢だ!好きにやるぜ!」
私に跨るようにして上に乗ったおじさんの手が、胸に当たる。
そのまま鷲掴みにされて揉みしだかれた。

「おお!やわらけええ!本物みたいだ!」
「ぶひい!」
「けへへ!この雌豚が!ガキのくせにエロい身体しやがって!こうしてやる!」
「いだい!いだいいだい!」
四つん這いのまま両胸を無理やり外に引っ張られた。

「ほら!気持ちいいって言え!」
「いたいよおお!」
「おい!その人の言うことを聞け!じゃないと……」
パパが咄嗟に私に命令する。
高田の命令では無いので絶対性はないが、今の私は高田の操り人形にすぎない。

「き!気持ちいいです!」
「はっはっは!最高の奴隷だな!」
夜とはいえ、住宅街の道の真ん中、いつ誰が来てもおかしくない。
そんな中、いつのまにかおじさんも裸になっていた。

不愉快な温かさが背中に伝わる。
鳥肌が立ってもおかしくないのに、それすら私の意志とは無関係らしい。

「おい!おじさまのちんぽ欲しいですって言え!」
背中に乗られたまま、鼻の穴に指を突っ込まれて上にあげられる。
豚鼻のまま私は叫ぶように言う。

「おじさまのちんぽ欲しいです!おねがいします!ちんぽ下さい!」
「どうしよっかなぁー」
おじさんは私のお尻を叩いたり、大切な所を刺激したりしながら考えるふりをしている。

「おい、そこにガニ股で立ってみろ」
「はい!」
言われた通りにガニ股で立つ。
身体の辛さは感じるので、この体勢は正直きつい。

「さっき俺がしたみたいに鼻に指突っ込んで持ち上げろ!セルフ鼻フックだ!」
「ひゃい!」
惨めだ。
なぜこんな汚いおじさんに、清文にも見せたことのない身体を、しかもこんな恥ずかしい格好まで見せないといけないのか……。

「そのまままんこを平手で叩け!」
「こうですか!」
パチッ!と乾いた音が響く。
加減はしているらしくそこまで痛くはないが、大切な部分を自分で叩くという行為自体が胸に突きささる。

「そうだ!何度も叩け!」
「はい!」
くっ!何度もとなるとかなりきつい。

「どうだ!気持ちいいだろ!」
「ひゃい!まんこ叩くの気持ちいいです!」
「ひゃはは!なぁ、お前本当に処女なのか?」
「は、はい!処女です!」
「キスはしたことあるか?」
「ありません!」
「そうかそうか、好きな人とかいないのか?」
「います!」
「お!?いるの!?なんてやつだ?」
「清文です!」
「そうか、じゃあこういいながら……」
私は指示を受けておじさんの目を見る。

「清文、ごめんね?私のファーストキスは、おじさんのちんぽ様にあげることにしました。二回目はおじさんのケツの穴だから、三回目は清文にあげるね?」
そう言うと、私はおじさんのカスの様なものが大量についたそれに可愛く口づけをした。

「よし、そのまま動くなよ?」
私は少し口を開くと、そのまま先っぽを咥える。
苦い味としょっぱい味が口に広がる。

「よぉし、出るぞー」
「うぅぷぃ!」
その瞬間、おじさんの尿が私の口の中を満たしていった。
殆どは口から漏れていったが、結構飲み込んでしまった。
更に口に残った尿はそのまま貯めて、口を開いておじさんに見せた。

「よぉし、うがいしろ」
「がらがらがらがら」
「よぉくブクブクしろよぉ?」
「ブクブクブクブク」
「よし!飲み込め!」
「ゴクッ!」
「感想は?」
「美味しかったです!ちんぽにファーストキス奪って貰えてうれしいです!その上おしっこまで恵んでいただき、私は幸せ者です!」
「よしよし、いい子だなぁ」
そう言いながらおじさんは後ろを向く。
私はためらわずにおじさんのお尻の穴にキスをした。

「よし、そのまま舌で舐めろ」
「レロレロレロ」
「ちんぽ擦りながらだ!」
「ふっふっふっふ!」
「舌を中に入れて!そう!そのまま前後に!」
「ひゅっ!ひゅっ!ひゅっ!」
「おおっと!」
「いたっ!」
不意にお尻で顔を突き飛ばされた。

「危ない危ない、逝くところだったよ」
倒れた私に覆いかぶさって、固くなったそれが私の大切な所に当てられる。

「逝くなら中で出さないとね」
え?嘘でしょ?

「じゃあおねだりしてみて?」
「私の臭い処女まんこにチンカス付きちんぽ様ぶち込んで下さい。おじさまのチンカスだらけになったまんこで、赤ちゃん孕みますので、奥でザーメン出して下さい」
「めんどくさいからお前が動いてよね?」
おじさんが私を持ち上げて上に乗せる。

「もちろんです!ふんっ!」
私はそのまま腰をおろして、汚いそれを咥えこんでしまった。

「おおお!絞まるうう!いいねええ!ほら!動け!早く!」
「くひいいい!はいいい!」
私は痛みだけを受けながら、高速で腰を動かし続けた。

「ほら!さっきみたいに豚鼻やれよ!」
「ぶひっ!ふぎ!ふぎ!ぶぶひ!」
死にたい死にたい死にたい死にたい。

「おねだりは!?」
「中でどびゅどびゅ出してくらはいー!はらむかりゃ!ぜっひゃい孕みますからあああ!」
殺して殺して殺して殺して。

「孕んだ赤ちゃんどうするの!?」
「男なら捨てましゅ!女なら育てて肉便器にしまひゅうう!」
……。

「でるよおおおお!ううっ!」
「ぬぎいいい!あつい!あづいいい!きもぢいいおおおおお!いぎゅううううう!」
キモチ、イイ……。

パパがお腹を抱えて笑っている姿を見て、意識が途絶えた。



「起きろ」
「……え?」
目が覚めたらそこはまた私の家だった。
外は明るくなっている。

私は咄嗟に自分の身体を確認したが、やはり脇腹は赤く腫れており、大切な所も赤くなっている。
それどころか未だに白い液体が付着している。

「私の処女を捨てて下さってありがとうございます……」
「ん?あぁ」
「……パパは?」
「それのことか?」
パパはリビングの隅っこで小さくなっていた。
黒かった髪が真っ白になっている。
小刻みに震えながら、ブツブツとなにか言っている。

「パパを壊して下さって……ありがとうございます……」
「いちいち律儀だな」
自分で言うようにしたくせに……。

「なんで、こんな酷いことが出来るの……」
「さぁ、わからん」
「わからないってそんな……」
「なにが酷いのかわからん」
わかってたのに。
こいつに言葉は通じない。


「そんなことより次の遊びを始めよう」
「もう……止めてよ……」
「次は母親を使うか」
「ママは関係ないじゃない……」
「ん?だからなんだ?」
なにを言っても心に届いてない。

「そうだなぁ……お前、母親のどんな所が好きなんだ?」
「若くて綺麗で、それなのにサバサバしてて、悪いことは悪いってちゃんと言えるとこです」
「へぇー」
自分で聞いたくせに対して興味無いとかどういうこと?

「昔ママと電車に乗ってた時、痴漢してる人がいて、その時その人をママが捕まえて……」
「腹減ったなぁ」
ホントムカつく……。

「こんな人になりたいって思いました……」
「よし、わかった」
お前にママのなにがわかるっていうの?

「父親があれじゃあ食っていけないだろ?母親に仕事してもらうか」
「は?」
「場所は……ここでもいいけど、駅前の方がやり易いか」
「なんのこと?」
「じゃあ準備するか……お前は俺の朝飯でも作っててくれ」
なんで私が……。
でも勝手に身体は動いてしまう。


朝食を作り終わったものの、高田が食べに来ることはなかった。
ママと一緒にどこかへ出かけたっきりだ。

不意に携帯が鳴る。
知らない番号……。

「はい」
「今すぐ昨日の花屋に来い」
その瞬間新たな絶望が私を襲った。
まさか、おばあちゃんにまで迷惑が……。


走って花屋に向かったが、店は開かれていなかった。
昨日私が掛けた『CLOSE』の札がそのままになっている。
鍵は……開いているようだ。
中は電気が付いていないので、暗くてよく見えない。
人がいるのはわかるのだが……。

「おばあちゃん?」
私がそっと中に入ろうとすると、女性の甲高い声が聞こえた。

「あぁ!もっと!もっと下さい!」
「へへっ!いいぞ!ほら!いくらでも突いてやる!」
すぐにわかった。
でも理解したくなかった。

そこにいたのは、変わり果てたママの姿。
私の制服を着て、知らない男と交わっている。
しかもよく見れば店の外からでもわかる所で……。


「おお、来たのか」
高田がおばあちゃんとお茶を飲んでいる。

「なにを……してるの?」
「本番ありの風俗だよ」
「……どういうこと?」
「あの格好で電車に乗って、男を誘うんだ。あ、お前の制服借りてるぞ?」
そんなのはどうでもいい……。

「惨めだろ?ぱんつ見えるぐらいスカート短くして、電車で男に触ってもらうんだよ」
ママは自分で腰を押し付けて、見たこともない顔をしている。

「ほとんどのやつはドン引きだけど、たまに触ってくるやつに言うんだよ」
男はママの髪を乱暴に掴んで笑っている。

「続きはこの店でってな。ちなみに料金は一回三千円だ。良心的だろ?」
「ふぅ!出した出した!おい!兄ちゃん!ホントに三千円でいいのか!?」
「ん?あぁ、家主はこいつだ」
高田はおばあちゃんを指さす。

「えぇえぇ、代金三千円ですよ」
「おう!じゃあこれでっと……。よかったぜ!また来るわ!」
「事前に電話して頂戴ね?この子基本的に客引きに出してるから」
「わかった!ん?なんだ!こんな若い子もいるのか!?」
「だめよ?その子は違いますからね」
「なんだ……。まぁあのババアでも充分絞まるからいいけどよ!じゃあな!」
おばあちゃん?
なに言ってるの?

「なっちゃん、これからはお店のお手伝いは、あの子にやってもらうわね?」
「おばあちゃんまで……」
「普通のお花を売るより儲かって大助かりだわ。これで娘夫婦も浮かばれるわね」
「そんなわけないよ……」
わかってる。
おばあちゃんも命令されただけなんだ……。

「どうだ?これで食っていけるだろ?一回の客で千円がお前ら家族の取り分だ」
「千円?」
「残りの二千円はこの婆さんの取り分だ」
あんなに頑張って、千円ぽっち……。

「ん?なんだ?不服か?年寄りは大切にしないとな。俺でもそれぐらいはわきまえてるぞ?」
ママが立ちあがってこっちに来た。

「あら、なつ……。来てたの?」
「ママ……」
「制服汚れちゃってごめんね?新しいの買ってあげるから……」
「そんなのどうでもいいよ……大丈夫なの?」
「吐き気がするぐらい嫌よ……知らない男に媚売って、こんな惨めな姿で外に出て……」
「あ……」
「それでも……身体が勝手に動くの……どうしようもないの……わかるでしょ?」
「ごめんなさい……」
「なんでなつが謝るの?あ……」
ママはそのまま出ていった。
身体が勝手に動いたのだろう。
高田の命令で、また電車に乗る為に……。

「よし、じゃあ婆さん、掃除頼んだぞ?」
「はいはい、前より楽になったよ。ありがとう」
「あぁ、気にするな。お茶美味かった」
「また飲みにおいで」
「よし、じゃあ行くか」
そして私は高田に連れられて店を出た。


「なんだ、浮かない顔だな」
「どうやったらあれで機嫌よく出来るって言うの?」
「なんだ?婆さんも楽になってよかったじゃないか」
「おばあちゃんはあんなことしたくて頑張ってたんじゃない……」
「花を売るのには変わりないだろ?」
こいつなりの冗談なのか、本気で言っているのか。
もうどうでもいいけど……。

「次はどこに連れていく気?」
「学校だよ」
遂に、清文の番ってわけね……。



到着したそこはバスケ部の部室だった。

「今ここに清文以外のバスケ部が揃ってる」
「清文は?」
「監督に引きとめるように命令しておいた」
いつのまに……。
行き当たりばったりじゃないってことか。

「今からお前はここに入って全員を誘惑しろ」
「な、なんで私がそんな……」
「清文をレギュラーに推薦してくれるなら、なんでもするって言うんだ」
「……なんで?」
こいつ、なに言ってるの?

「俺も気になってたんだよ。俺のせいであいつ試合出れなかったんだって?」
清文は、下手だけど頑張ってて……。

「でもやっぱり下手くそだから、今も試合出れそうにないだろ?」
少しずつだけど認められてきてて……。

「だからこれは俺なりの罪滅ぼしだよ。ほら、早く行って肉便器になってこい」
そんな清文の頑張りを……。


「みなさん、私の身体に興味無いですか?」
いやああああああああああ!



「おい!豚!起きろ!」
「ふえ?」
「ふえじゃねえよ!清文来ちゃうだろ?」
「そうだよ、さっさと帰れ。お前が言ったんだろ?清文には内緒って」
「は、はい!」
私は精子でグショグショになった服を着て、急いで部室を出る。

あれから清文はチームの総意でレギュラーになった。
監督まで私を利用するようになったので、簡単にことは運んだ。

「あ……」
制服についた精子をティッシュで拭きとっていると、清文からメールがきた。

『校門で待ってる』

私はバスケ部のマネージャーになった。
でも、前みたいに清文が居残りして練習してる所を見ることは出来ない。
その時間が、私の本当の仕事の時間だから。

「おっそいよ」
「清文が早すぎなんだよ」
「着替えて来るだけだからね」
「もう、ちゃんとシャワーぐらい浴びればいいのに」
「臭う?ん?そう言えば変な臭いするな……」
「そ!そう!?そんなことないよ!」
「そう?」
「そうだよ……」
清文に嘘をついている。
それは事実。

高田の能力には隙がある。
命令を遂行する上で、邪魔にならないことなら自由に出来るのだ。

水を買いに行った時、私がぱんつを確認できたのは、それがぱんつを置くことに支障ないから。
あいつの命令は清文をレギュラーにするために、私がみんなの肉便器になること。
清文に言ってはいけないとは言われていない。

だからこの生活は、私が清文に本当のことを言えばそれで終わる。
でも……。

「最近調子良くてね!なんだか知らないけどレギュラーになれたし!期待してるってみんな言ってくれるしね!」
こんな清文見てたら……言えないよ……。

「先輩達、なんでかいつも僕が帰るまで部室で待っててくれるんだよなぁ。たまには一緒に帰った方がいいのかな?」
「そう……かもね……」
「ほんと、いいチームに恵まれたよ!」
「よかったね……」
不意に指先が触れ合う。
いつもなら握っていたその手を、私は払いのけた。

「え?」
「あ……ごめん……」
「ん?あぁ、そ、それよりさ!こんどどっか遊びに行かない!?次の日曜休みだし!」
「ご、ごめん……その日用事あって……」
「そっか……」
私みたいな人間が清文に触ることなんか許されない。
ごめんね……。



「おじゃましまーす!」
「へー!私服可愛いじゃん!」
「気合入ってるねぇ!」
私は今、いつか清文とデートする時に着ようと用意していた服を着て、バスケ部のみんなを家に招き入れている。
清文の誘いを断った日曜日。
今日はここで好き放題されるらしい。

「家の人誰もいないんだよね?」
「はい」
パパはあれから病院で入院している。
病院といっても、精神病院だけど……。
ママは今日も花屋で仕事をしている。
私の制服を着て……。

「じゃあ思いっきりハメ外そうぜ!」
「お前らー!近所にばれない程度にしろよ!?」
もちろん監督もついてきている。
頭は禿げてて、お腹も出ている。
昔はどうだか知らないけど、とてもバスケが巧いようには見えない。


「ここが夏色の部屋?」
「おおお!女子の匂いがする!」
「なったんのベッドにダーイブ!」
中学に上がった時ぐらいから、清文さえも入れたことのない自室に、6人もの男性が入ってくる。

「しかし監督も人が悪いよなぁ」
「スタメンのみ慰安旅行をプレゼント!だもんなぁ」
「俺こんな本気でバスケしたの初めてだ!ってぐらい頑張ったよ!」
「てか頼めばいつでも家に入れてくれそうだけど」
「お前らに任せてたらいつばれてもおかしくないからな。こいつの管理は俺がする」
今私を使うのには監督の許可がいることになっている。
試合でいいプレーをしたりするとボーナスが付くらしい。
おかげでウチのバスケ部は、最近地域でも有名な強豪校になっている。

そのせいで清文はレギュラーにはなれても、試合にはあまり出れないのだが。
たまにお情けで出られるぐらいだ。

「お!なったんのぱんつ発見!」
「俺にも見せろ!」
タンスが勝手に荒らされてる。

「結構黄ばんでる!」
「ちゃんと洗濯してるの?」
「すいません……」
恥ずかしい……。

「なぁ!夏色の母ちゃんの部屋ってどこ?」
「なんだよ、お前婆専?」
「ばっか!お前見たこと無いだろ!?俺入学式手伝ってて見たんだけどヤバいぞ!?」
「お!?これ!?これが夏色の母親!?」
「そ、そうです」
机に飾っていた写真を見ながら男子が騒いでいる。

「お前ら静まれ!」
「んだよ監督……」
「夏色、今すぐ母親の下着を全部ここに持ってこい!洗濯前があればなおよし!」
「さっすがだぜえええ!」
「監督の采配は常に冷静かつ正確だあああ!」
なんで私がこんなことを……。


「これです」
「おお!意外に大胆なやつ履いてるな!」
「これとかTじゃん!」
「洗濯前は!?」
「無かったです」
「んだよおお!」
男子達がママの下着を嗅いだり履いたりして遊んでいる。
すでに全員全裸だ。

「お前ら遊んでていいのか?」
「お、そうだった」
「他の奴らに頼まれてたんだよなぁ」
なんのこと?

「今日は夏色のAVを撮影します!」
「いえええい!」
下らない……。

「俺たちばっか楽しんじゃ悪いもんな」
「だって俺たち!仲間だから!」
「なんていう圧倒的な友情!」
「えー、では説明しまーす!せっかく自宅だから、普段のなったんの姿を中心に撮りたいと思います!」
普段の姿?

「これ台本ね?」
「シーンごとに撮るから順番に覚えてってねぇ」
「それには我がバスケ部全員の夢を詰め込んでおいた」
「各自好き放題書いたからえらいことになってるな!」
「じゃあ早速撮影開始しますか!」
どうにでもなれ……。



「うーん」
ベッドの中、ワザとらしい伸びをして寝起きを演出する。

「今日もいい天気ね」
なんだこれ、いるのか?

「朝の体操しなくっちゃ!」
私は起き上がりベッドの上でパジャマを脱ぎすてる。
下着はつけておらず、すぐに全裸になってしまった。

「では、朝のおまんこ体操!」
M字開脚になってカメラに見えるように座る。

「まんこを開く運動!開いて!閉じて!開いて!閉じて!」
指で開いたり閉じたりしながらリズムをとっていく。
もちろん笑顔でだ。

「クリを回す運動!あん!いち!にぃ!うん!いち!に!」
クリトリスを指でつまんで回していく。
変に声が出てしまう。

「腰を前後にピストンする運動!いち!に!いち!に!」
腰を浮かせて前後に振る。
カメラの後ろには姿見があるので、馬鹿みたいな顔がよく見える。

「ケツまんこを開く運動!開いて!閉じて!開いて!閉じて!」
後ろを向いて土下座のようなポーズになり、お尻を突きあげる。
指を舐めて人差し指を二本お尻に入れる。
すんなり入ってしまうようになったのが怖い。
開くたびにスゥスゥして気持ち悪い。

「鼻まんこを広げる運動!グリグリ!グリグリ!」
さっきまでおしりに入っていた指を鼻に突っ込む。
そのまま奥にねじ込んだり戻したりする。
みんなが笑うので、なんども撮り直しさせられた。

「まんことケツまんこを突く運動!ひぃち!にぃ!いい!にぃ!」
ガニ股になって、汚くなった指を前後に入れて、速いペースで出し入れする。
もはやただのオナニーだ。

「いきゅううう!はぁはぁはぁ……」
そのままベッドに倒れこむ。
そのシーンはそこで終わった。


「今日の朝ごはんはなんにしよう……」
次は台所での撮影だ。
服を着せてもらえたのは幸いだった。

そこにはすでに材料が揃えられている。
これが材料だとすればだが……。

「まずは下ごしらえからね」
私は筒状のゴムを手に持つ。
オナホールというらしい。
監督愛用の品だそうだ。
さっき使って洗っていないとかで、凄い匂いがする。

「まずは中のソースを取り出してぇ」
逆さにしてお皿に出す。
黄ばんだ精子が出てきた。

「残さずカスまで取り出さなきゃ」
スプーンを突っ込んで残りの精子とカスを取り出す。

「んー、ちょっと摘まみ食い!」
そのままスプーンに口を近づけ、舌を出して舐めとる。

「うん!美味しい!」
苦い……今すぐ吐きたい。

「最後まで使わなきゃ勿体ないわね」
私はゴム状のそれを裏返し、ぱんつを脱いでそのまま大切な所に入れた。
上からぱんつを履きなおし抜けないようにする。

「締りが悪いから栓しとかなきゃね!」
確かに最近セックスのしすぎで締りが無いように感じる。
こんなものを飲み込んでしまう程度には。

「次はこれかぁ、これは新鮮だからそのまま使いましょ」
さっきみんなが私やママの下着で出した精子だ。
全部コンドームに入って縛ってある。

「でもこれだけじゃ足りないわねぇ……」
私は相変わらずの大根芝居で考えるふりをする。

「そうだ!」
私は思いついた顔をして、お皿を床に置く。
片手にはコップを持つ。

「さっき入れたばっかりで勿体ないけど」
ぱんつを脱いでオナホールを抜きとる。
そのままガニ股になって腹部に力を入れる。

「ふぅーん!」
無駄な掛け声と共に私は排泄した。
見られるのは悲しいかな慣れている。
ただ撮られるのはやはり恥ずかしい。

おしっこをコップに出し、その後うんこをする。
おしっこはコップに入りきらずにそのまま床に垂れ流しているし、うんこも半分以上お皿からはみ出している。

「失敗失敗!」
濡れた手を髪で拭き、コップを置く。
おしっこを舐めとり、うんこを素手でお皿に乗せる。
もちろん指についたうんこは舐めとり、汚れた床も埃ごと綺麗に舐めとった。

「摘まみ食いばっかで太っちゃうよぉ」
出したもの食べただけで太らないよ。

その後私は監督の精子と私のうんこを素手で混ぜ合わせ、具と称した五つのコンドームを中に入れて形を整えた。

「朝ごはんだから手抜きは仕方ないよね!」
充分手が込んでるよ。

「じゃあいっただっきまーす!」
ほ、本当に食べるの!?

私はリビングにそれを持っていき、カメラに撮られながら愛用の箸でそれを口に持ってくる。
一口大に切ったそれには、コンドームが一つ入っている。
無理だよ!

「はぐ……もぐもぐ」
口の中に酷い味が広がる。
ゴムなんか噛み切れる訳ない。
それでもプチっという音と共に、切れたそれから生温かい精子が出て来る。

徐々に汚物を飲み込みながら、最後に残ったコンドームをコップに入ったおしっこで飲み込んだ。

「うん!美味しすぎて濡れてきちゃう!」
私は履きなおしたぱんつの上から秘部を弄りながら、とろけた顔で完食させられた。


「食べた後はちゃんと歯を磨かなきゃね!」
歯を磨かされるらしいが、今いるのはトイレだ。
そこにはキャプテンがさっき使ったまま、流されていないそれらが残っている。
渡されたのはいつも私が使っている歯ブラシでは無く、馬鹿が見つけてきた溝掃除用の使い古しの歯ブラシだ。

私は躊躇なく歯磨きごと便器に手を突っ込む。
底の方に沈んだうんこに先端を擦りつけ、そのまま歯を磨く。
口の隅々までうんこの味が広がる。

歯が真っ黒になったのをカメラに見せてから、便器に顔を突っ込む。
便器内の汚水を啜り、ブクブクとうがいをする。

そのまま飲み込み、カメラに向かってピースする。

「歯磨き完了!」
自分では見えないが、恐らく歯は汚れたままだろう。


「暇だしこれでも見ようかな」
私はリビングでテレビを付け、DVDをセットする。
流れたのは私が部室で犯されている映像だ。

「あぁ、坂本さんのおちんぽ様すっごい固くなってるぅ」
私は食い入るようにテレビを見ている。
当たり前のようにリモコンの隣に置いてあったバイブを手に取り、ぱんつの上から刺激し始める。

「あぁ!突いてぇ!もっとおお!焦らしちゃいやぁ!」
妄想しながら一人でオナニーしている演技をさせられる。
次第に服をはだけていき、下とお揃いの青い水玉のブラが出てきた。

「乳首もせめてぇ!早くぅ!」
ブラを脱ぎ、バイブを乳首に当てる。
胸に埋めてスイッチを入れ、振動とうねりを楽しむ。
その隙にぱんつを手早く脱ぎ、足を広げる。

「あぁ、私あんなことまでしてぇ……」
画面には誰のかわからないぱんつを顔に被って、腰を振りながら踊っている私が映っている。

「はぁ、はぁ、もう我慢できない!」
そう言って私は脱いだ自分のばんつを顔に被り、バイブを入れた。

「ほぅん!いい!いいい!」
激しく動かしながら立ちあがり、ガニ股でテレビに近づいていく。
テレビに移った男性器をぱんつごと舐める。

「クサい!私のおぱんつクサくて美味しい!ちんぽ様咥え過ぎてまんこがちんぽの味になってりゅう!」
私の声で変なことを言わないで!

「ああ!足りない!足りないよぉ!ケツまんこも使ってええ!」
指を三本お尻に入れて、腰を振っている。

「すごいい!私オナホールみたいに使われてりゅう!そうなの!私はちんぽケースなのおお!ちんぽ入れてないと不安でしょうがないのおお!入れてよおお!ちんぽ入れてええ!」
狂ったように指とバイブを動かす。
ぱんつを咥えこみ、ジュルジュル言いながら口の中で租借する。

「なんでもします!どんなエッチなことでも!惨めなことでも!ちんぽの為なら清文も家族も友達も!なんでも売りますから!クラスの子の着替え盗撮します!ママのぱんつも持ってきます!言われたらなんでもしますから!お願いです!おちんぽしゃまくだしゃいいい!」
うるさいなぁ、あぁ、私の声か……。

「いぎゅうう!いぎゅうううう!」
ビクビクと身体を動かし、立ったまま逝ったらしい。
カーペットは私の愛液でグショグショになっている。
どうやらおしっこも少し出たみたい。


撮影はそれで終了した。
その後はいつも通り何度も犯されて、休憩だと言われて滑稽な芸を披露させられるのを繰り返した。

「裸踊りももう飽きたなぁ」
「じゃあまたケツ破壊する?」
「いや、これ以上やったら締りもクソもねぇだろ」
「あ!俺いいこと考えた!」
「なになに?」
「ここにオナホールがあります!」
「勝手に一人でしこってろ」
「違うよ!こうするんだよ!」
私はお尻を持ち上げられ、お尻の穴に無理やりオナホールを入れられた。

「なったん!こう言って!ね?」
「私はオナホールホルダーです」
「めっちゃいい!なにそれ!オシャレ!」
「いいだろー」
私はそのまま犯された。
いや、犯すともいわないか。

「なかなかいいかも!なったんの締りの悪いケツよりだいぶいい!」
「オナホ以下かよ!」
「オナホホルダーだからな!」
「いいねぇ!一家に一台欲しいね!」
私ってなんなんだっけ?
オナホホルダー……?

「じゃあ俺まんこに入れる!」
「おい!俺のオナホ咥えろ!」
「はい、私はオナホホルダーですから……」
オナホホルダー。
そうか、私は……。



「ねぇ夏色、夏色ってば!」
「え?あぁ、なに?」
清文がなにか言ってる。
私は夏色じゃなくて、ただのオナホホルダーなのに。

「最近元気無くない?」
「そんなことないよ」
「そう?」
いつもの帰り道、もちろんまんことケツ穴には使用済みのオナホが入ったままだ。

「あ、メール……」
「誰から?」
「ママ」
ご主人様からメールが来た。

「ちょっと夏色!なにしてるの!?」
「え?鼻くそほじってるだけだよ?」
「そ!そんなことこんなとこでしちゃだめでしょ!?」
「そうなの?」
ご主人様の命令だから仕方ない。

「夏色疲れてるんじゃない?」
「そうかなぁ?」
「ってえええ!なになに!?」
「へ?」
今度はスカートの中に手を入れて、まんこを掻き始めた。

「ちょっとおお!見えちゃうって!」
「はぁ?クンクン、クッサ!」
「夏色?」
指を嗅ぎながら嫌そうな顔をする私を、怪訝な顔で見つめる清文。

「ねぇ、今日ウチに来ない?」
「ウチって夏色の!?」
「うん」
「い、いいの!?」
「たまに来るじゃん」
「でもこんな時間だよ!?おばさんに迷惑じゃないかな……」
「ママ今日帰ってこれないって」
「ちょっ!ってことは……」
「来ないの?」
「い!行きます!」
あぁ、ちんぽ欲しいなぁ。

「な、夏色の部屋に入るのって久しぶりだなぁ……」
「そこ座って?飲み物入れて来る」
「あ、はい」
めんどくさいけど仕方ないか。

リビングに行くとご主人様達がいた。

「本当に清文来たのか?」
「はい」
「じゃあサービスタイムだな」
「ちょっとパンチラとかして誘惑してこい」
「でも絶対身体に触らせるなよ?」
「当たり前です。私の身体はご主人様達の物ですから」
それより早くちんぽ欲しいなぁ。

「それからな……」
ご主人様達からの指示をしっかり聞いて、また部屋に向かう。


「お待たせ」
「お、おう……」
所在なさ気に座っている清文。
ご主人様たちならすぐにでもタンス漁って、ぱんつが汚いって褒めてくれるのに。
情けない……。

「ふぅ、あ、昔のアルバム見る?」
「お、いいね!」
「ちょっと待ってね?」
私はベッドの下の引き出しに向かう。
四つん這いになってお尻を上げる。
短くしたスカートからぱんつが見えているはずだ。

ちなみにこの部屋の状況は、隠しカメラでリビングにいるご主人様達にリアルタイムで見られている。

「ん?どこかなぁ」
私はお尻を振りながら探すふりをする。
ぱんつはオナホで少し盛り上がっているので、違和感があるだろうが、童貞の清文にはわからないだろう。

「あ、あったあった」
「そそ!そう!」
声が上ずっている。
ちゃんと見ていたらしい。

「一緒に見よ?」
「あ、ああ!」
私は清文の近くにより、上目遣いで言う。

「これ小さい時のだな!」
「清文も私も裸だね」
「二人でお風呂入ってる時のか!」
「この時の清文のおちんぽ、小さかったよね」
「えええ!?」
「今は大きくなったの?」
「ちょっ!ええ!?なに!?」
「ねぇ、見せて?」
「ええ!?おおおお!?なっ!」
「見せてくれないの?」
「ちょっと待って!ふぅ……」
深呼吸し始めた。
どうでもいいから早く終わらせたい。

「見たいの?」
「うん」
「い、今はダメ!ちょっと待って!」
それからしばらく目を瞑って深呼吸していた。
勃起したちんぽを治めているのだろう。


「ちょ、ちょっとだけだよ?」
そう言って清文はズボンを脱ぎ始めた。
ボクサータイプのブリーフを脱いだ瞬間、私は我が目を疑った。

「え?どこ?」
「ど、どこって……ここ……」
「小さい……」
「そ、そうかな……」
「変わって無いじゃん……」
「ちょ、ちょっとは大きくなったんだけど……」
「それって大きくなるの?」
「え?あ、あの……」
言われてなぜか少し小さなそれが上を向く。

「ねぇ?」
「あの、これ、今大きくなってる……」
「……私、お風呂入ってくる」
「え!?な、なんで!?」
「ここで待ってて」
そう言うと私はタンスから下着とパジャマを取り出す。
その時わざと別のぱんつを落としておく。

「ちょちょ!夏色!?」
私は声を無視して部屋を出る。


「ご主人様……」
「よし、よくやったぞ」
「やっべ!まじおもしろい!」
「さあて!時間ないし始めるか!」
「はい!おちんぽ様欲しくて仕方なかったんです!」
「おいおい、あんまり大きい声出すなよ?」
「はい」
「じゃあオナホホルダー出して?」
「はい」
私は四つん這いになってぱんつを脱ぐ。

「お、誰だよー使用済み入れっぱなしのやつ」
「あ、わりい、俺だ」
「お、ケツのやつは俺のだな」
「ったくよぉ」
乱暴に両方のオナホが抜かれ、新しいオナホが入れられる。
まんことケツにオナホを入れてもらい、口にも咥える。

「よし、やるぞぉ」
「うっとぉ……はぁ、やっぱこのオナホは最高だな」
「お前なに使ってんの?」
「妹オナホ」
「それパッケージに絵が書いてるだけだろ?」
「ばっか!それで妄想するんだよ!こんな子のまんこなのかぁって!」
「どんな絵?」
「これこれ!今日はこれ見ながらやるんだぁ」
「お前そういうの好きな?」
私のケツまんこを使って下さっているご主人様は、パッケージの絵にキスしながら腰を動かしている。

「お!見ろ!清文のやつ夏色のぱんつ匂いながらシコり始めたぞ!」
「おお!みっじめぇ!」
「って俺らもやってたけどな」
「俺らは許可ありきでやってたんだから違うっしょ?」
「俺なんかさっきまで履いてたぱんつちんこに被させて、夏色にシコらせたことまであるしな!」
「俺はその上ぱんつごとフェラさせたことまであるっての!」
「きゃははは!」
ご主人様達が喜んでくれている。
オナホホルダーとして、これほど嬉しいことはない。


「お!おかえり!」
「うん、ねぇ、疲れちゃったから帰ってもらっていい?」
「へ?……あ、あぁ、いいよ?」
「じゃあね?」
「うん、また明日……」
清文は肩を落として帰っていった。

「終了ー!」
「清文君残念でしたー!」
「じゃ、俺らは続きやるか!」
「そうだな!」
「あ、あの……」
「ん?なに?」
「オナホじゃなくて、私のまんこを使ってくれませんか?」
「はぁ?お前のまんこ緩すぎて使えねぇじゃん?」
「で、でも……ちんぽ様が欲しくて……」
私はオナホホルダーの分際でなにを言っているんだろう……。

「そんなことより夏色!お前お菓子買ってこいよ!」
「あ、俺ピザポテトな!」
「三ツ矢サイダー忘れずに!」
「代金は身体で払ってこいよぉー」
「って!冗談だぞ?わかってるか?」
「やめとけって、こいつマジなんでもするぜ?」
「わりぃわりぃ、代金はお前払っといてぇ」
「はい……わかりました」
私はそのまま家を出る。



コンビニの前で見知った人に会った。

「ん?お前は……」
「あ……」
高田道成……。

「誰だっけ?えぇっと……」
そっか、覚えてさえ無いんだ……。

「わりぃ、なんだっけなぁ」
「私はオナホホルダーです」
「あ?……へぇ、あっそ」
「あ、あの!」
「なに?」
「わ、私のまんこを使ってくれませんか?」
あんなに嫌いだったのに。

パパを壊した男。

ママを汚した男。

そして、清文の努力を二度も踏みにじった男。

それでも……。

「お願いです!ここで!ここでもいいから!ちんぽ様入れて下さい!」
「はぁ?なに言ってんの?」
「ほ!ほら!こんなにグショグショなんです!」
私は急いでぱんつを脱いで、スカートを捲って見せる。

「クセえまんこ見せんなよ」
「あ、あの!ほら!」
私は濡れたぱんつを顔に被って腰を振る。

「おちんぽ様!私のまんこ犯して下さい!」
そのままにじり寄っていく。

「うっせぇ、寄るな」
「うげっ!」
まんこを蹴られて後ろに倒れる。

「これでも入れとけ」
高田は道に落ちていた空き缶を蹴飛ばす。

「あぁ、ありがとうございます!へへっ!へへへ!」
私は狂ったように空き缶をまんこに入れた。

「はぁ!はぁ!ちんぽを入れてくれなくてありがとうございました!」
「は?入れて欲しかったんじゃなかったのか?」
「え?」
本当だ、なんでだろう……。

「はぁ、付き合ってらんねぇ」
そう言って高田道成は去っていった。
きっとまた、暇つぶしをしに。
[ 2013/05/23 05:53 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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