最新出来ましたぁ。
催眠ではなく、どちらかというと催淫?
相変わらず変に長いですが、お付き合いして頂けると幸い。
本編は毎度おなじみ【続きを読む】からです!
「おはよう茉莉子ちゃん!ねぇねぇ!なんで茉莉子ちゃんはそんなに可愛いの!?」
「お、おはよぉ……な、なに?うぅ、可愛くなんてないよぉ……」
「あぁもう!可愛いなぁ!ギュってしていい!?ね!ね!?」
「もうしてるじゃんかぁ……」
背の順でも結構前の方である私より、更に小さな茉莉子ちゃんを抱きしめて頭を撫でまわす。
「みんな見てるよぉ?もぉ……」
「いいじゃん!女の子同士なんだし!」
「あぁ、紗々ちゃん……いい匂いがするぅ……」
「ほぉら、気持ちよくなってきたぁ」
「紗々ちゃん、私なんだか眠たく……」
「よぉしよぉし、眠ってしまえぇ……」
私の胸の中で本当に眠ってしまいそうな親友を抱きしめて悦に浸る。
授業が始まる前の気怠い朝の教室。
クラスメート達は私たちのことを気にすることもない。
まぁいつものことだからねぇ。
そんな中、一人真直ぐこちらに歩いてくる男子。
ダルそうな顔、こちらもいつものことだ。
昔から朝に弱いなぁ。
「なんだぁ?また二人でイチャイチャしてんのかぁ?」
「おはよぉ、カツオー」
「おおっす中島ー!野球しようぜ!?って誰がカツオだ」
「カツオもよしよしして欲しいのかぁ?んん?」
「バッカ!なんで俺がそんな!」
「そっかぁ、いいのかぁ……」
「えっと、その……なんだ、二人の時なら……」
「二人の時ならして欲しいのぉ?」
「……してもいいぞ?」
こいつは磯野勝臣。
某愉快な家族の長男のパチモンである。
「お前今失礼なことを考えなかったか?」
「思ってないにゃん?」
「にゃんって……」
顔を真っ赤にさせてキョロキョロしている。
こんなあざとい小技にいとも簡単に引っかかる。
馬鹿な男、それが磯野勝臣である。
「二人の方がラブラブだね」
「あ、起きちゃったんだ茉莉子ちゃん」
「ホントに寝たりしないよぉ」
いや、寝息立ててたけどね。
「いいなぁ、二人はぁ……」
「ん?なにが?」
「お似合いのカップルだよねぇ」
「ちょっ!茉莉子!お前なに言って!」
「そそそそそ!そうだよ!にゃに言っちゃってるのおお!?」
「動揺が半端ないねぇ」
「俺たちはただの幼馴染で!」
「そうだよ!こんなバスケ馬鹿!」
「あのね?二人が付き合い始めたのみんな知ってるよ?」
「付き合うってなんだよ!知らない!俺は知らん!」
「え?本当に隠してたつもりだったの?」
「茉莉子ちゃんは疲れてるの!もう少し寝た方がいい!」
「いや、もうすぐ授業始まるし……。てか、隠してるなら手を繋いで歩いたりしないほうが……」
「み!見てたのか!?いつだ!昨日の帰りか!?それともこの前の試合の後か!?いや!一昨日の休み時間なのか!?」
「ちょっとなに言ってんの勝臣!そんなこと言ったら私たちが、二人の時はいつも手を繋いでいようねって約束したのがばれちゃうじゃない!」
「二人の時はいつも手を繋いでいるんだねぇ……」
「ほらばれた!」
「お前のせいだろ!?」
「いや、二人とも悪いよぉ?」
もぉ最悪!
こんなのばれたらみんなに冷やかされる!
「あの二人また痴話喧嘩してるぞ?」
「気にすんな。いつものことだろ?」
「ホント仲いいよね。羨ましい」
「それより今日の宿題やった?ここ分かんないんだけどさぁ?」
クラスの奴らはすぐに自分たちの会話へと戻っていった。
「むしろ冷ややかだと!?」
「虚しい!なんか虚しいよ勝臣!」
「舞い上がってた自分たちが馬鹿みたいじゃないか!」
「ちょっとかまって欲しくて逆に秘密っぽくしてたのに!」
「クソお!覚えてろよ!絶対いつか冷やかされてやる!」
「二人とも落ち着くといい……」
茉莉子ちゃんさえ授業の準備を始めてしまった。
と、まあ順風満帆、幸せの絶頂にいる私は関内紗々。
最近この街に引っ越してきた、どこにでもいる女の子である。
最近来て早速彼氏つくるなんてやるじゃん紗々っぺ!って?
まぁまぁ、褒めるなよ。
実は勝臣とは昔からの知り合い。
両親同士が仲良くて、よく一緒にご飯とか旅行とかしてたんだよね。
そして今年、お父さんの海外出張が決まって、私たちは日本に残ることになったんだけど、女二人じゃ不安だろうって、仲良しの家族がいるこの街に引っ越してきたんだ。
それで勝臣とも毎日顔を合わせることになったんだけど……。
たまに会ってた頃の勝臣は、なんだか私の知ってる学校の男子とは違って、ちょっと大人の雰囲気っていうか……まぁちょっと格好いいなって思ってた。
でもそれは大きな勘違い。
毎日学校で顔を合わすようになってすぐに化けの皮が剥がれ落ちた。
あいつはただのバカである。
でもそんな素の勝臣と、たまに見せる格好いい勝臣のギャップ?
それがまたいいなって思っちゃう私もいてだねぇ。
一か月前にあった大会の後で告白されたんだけど。
大活躍した後汗だくで私の所に来て、言いたいことあるからちょっと時間くれって言われた時はビックリした。
てか正直鼻血出るかと思うほど格好良かった。
「優勝したら言おうと思ってたんだ。紗々、お前のことが好きだ。俺と付き合ってくれ」
これは証拠物件として録音したものである。
後でメッチャ怒られたが絶対に消さない。
ちなみに大会っていうのは、ミニバスの大会である。
勝臣のいるチームは全国レベルで、勝臣を含めたスタメン五人が凄く強いんだぁ。
なんでも五人全員十年に一人の才能の持ち主で、これだけの選手が同じ時代に一度に集まるのは奇跡だって言われてて、周りからは奇跡の世代って呼ばれてるらしい。
脅迫状とか送り付けられなきゃいいけどね。
なんにせよ、本人には言ってやらないが私の自慢の彼氏である。
重ね重ねだが、私は本当に幸せ者だ。
格好いい彼氏がいて、引っ越してきたばかりなのに茉莉子ちゃんみたいな可愛い親友も出来て……。
あ、茉莉子ちゃんはね?
ふわふわした可愛い女の子でぇ、黒いロングの髪がいい匂いでぇ、小さくて恥ずかしがりやでぇ、いつもブルブル震えててキョロキョロしててもう超可愛いの!
勝臣か茉莉子ちゃんなら断然茉莉子ちゃんを私は選ぶ!
でもね?茉莉子ちゃんはただ可愛いだけの子じゃないんだぁ。
恥ずかしがりやなのに、転校したてで困ってる私に勇気を出して話しかけてくれて……。
結果その姿が可愛すぎて、私に捕獲されて愛で殺されたのです。
死んでないけど。
二人には感謝してるよ。
本当は不安だったんだよ?
引越しも、転校も……。
「ねぇねぇ、紗々ちゃん。帰らないのぉ?」
「ふえっ!?」
「授業中は寝ちゃダメだよぉ?」
「さっきのはホームルームであって、授業じゃない!」
「一緒だよぉ……さ、帰るよ?」
「うん!あれ?勝臣は?」
「愛しの彼氏さんは練習があるって先帰ったよ?」
「べ!別に!聞いてなんかないんだからね!」
「いやぁ、聞いてたよぉ……」
じゃあ今日は茉莉子ちゃんとラブラブ下校か!
間違えが無ければいいが……。
「でも人間は間違える生き物だよね?」
「紗々ちゃん、なんか目が怖いよぉ?」
とまあいつものように帰るわけだ。
茉莉子ちゃんの家は私の家より学校に近いので、途中からは一人。
さらに茉莉子ちゃんは習いものが多いので、今日は一緒に遊べないらしい。
「はぁ、勝臣も茉莉子ちゃんも忙しいなぁ。私もなんかやろうかなぁ」
なんて独り言ちていたら、もう家が見えてきた。
でもここから少し気を付けなければならない。
私の家は閑静な住宅街にある一軒家なのだが、その隣に場違いな物がある。
周りに綺麗な新築が並ぶ中、居座るようにそこにあるのはごみ屋敷。
外から見るとお化け屋敷みたいなそれは、近寄ると異臭が漂い、とてもじゃないが人が住んでいるようには見えない。
だが本当に迷惑なのはこの家の存在じゃない。
この家の住人だ。
そう、住んでいる。
この廃墟のような建物に。
それだけで真面な人間じゃ無いことは伺える。
表札には『志原』と書かれている。
クラスの子が言うには、昔からここにあったらしいが、以前は普通の家だったらしい。
それが家主夫婦が死んで以来、今の状態へ向かってまっしぐらだったそうだ。
原因はその夫婦の息子にある。
親の遺産で生活しているらしいその息子は、街でも有名な変わり者だ。
曰く彼はゴミを出さない。
人間生きていればゴミは少なからず出てくる。
なのに彼がゴミの日にゴミを出すことは無い。
異臭の原因はそれである。
それだけではない。
捨ててあるゴミを持って帰ったりもするらしい。
ゴミを溜めているだけじゃ飽き足らず、収集までするなんて異常としか思えない。
そして極めつけは性格だ。
キレやすくて挙動不審。
怖くて誰も文句を言えない。
噂によると文句を言った人間の家には、連日ゴミが投げ入れられるとか……。
そんな彼は学校からも注意がなされている。
朝早く学校へ行くため通りかかると、気持ち悪い目でじっと見られていた。
はぁはぁ言いながら家までついてきた。
声を掛けられて、意味の解らないことを言われた。
そんな話はクラスで聞くだけで矢継ぎ早に出てくる。
なんでも彼のような人をロリコンと言うらしい。
私たちみたいな子供にしか興味が無いんだって。
だから今ではこの道を通る女子はウチの学校にはいない。
私が転校してくるまでは。
だって仕方ないでしょ?
隣の家なんだから……。
お父さんが安くいい家が買えたって喜んでいたけど、こんな落とし穴があるとはね……。
噂は本当だ。
いや、それ以上。
私は毎朝登校する時に声を掛けられる。
あまり相手にしないようにしてるから、内容はあまり聞いていないが、気分がいいものではない。
それだけじゃない、窓からじっとこちらを覗いているのだ。
私の部屋は一階で、まだカーテンは取り付けられていない。
至急注文を急いでいるのだが、お母さんに任せたのが失敗だったか……。
彼の部屋の向かいにあるらしい私の部屋は、常に彼に監視されている。
私の部屋の窓と、向かいの部屋の窓とは庭を挟んで少し距離がある。
それでもカーテンのついてない私の部屋は、いつでも向こうから丸見えなのだ。
結果私はあまり部屋には近づかない。
こっちを見てニヤニヤしている彼を見たくないから……。
「おかえり、紗々ちゃん……」
「……」
最悪だ。
なんで帰りまで会っちゃうかな。
まさか家の前で待ち伏せしてたの?
私は無視して通り過ぎようとする。
「今日のパンツはイチゴの奴かな?」
「……っはぁ!?」
驚いて振り返ってしまった。
そしてすぐ気が付いて上を見上げる。
ベランダにある物干し竿、確かによく見れば私の下着も見えるだろう。
「なに驚いてるの?僕は紗々ちゃんのことならなんでも知ってるよ?えへへ……」
二チャッとした粘液の音がして、汚い口が笑みに変わる。
ボロボロになった黄色い歯が出てくると同時に、酷い口臭が臭ってきた。
「昨日が青色の新しいやつでしょ?それでその前が黄色いリボンのやつ。そろそろイチゴかなって思ってさ……」
男が一歩近づくと、口臭だけでなく汗が腐ったような体臭も強くなった。
ボロボロの服は、太ったお腹に押し広げられて更に見っとも無くなっている。
「パ、パンツ……見せてくれるなら……お小遣いあげるよ……ね?ほら、僕正解が知りたいだけなんだ……」
汗だらけの顔は醜く歪み、薄い髪が風に揺られて気持ち悪い。
見ているだけで吐き気がする。
「ち、近づかないで……」
「な、なんで?僕、紗々ちゃんとお友達に……」
「やぁっ!」
手を出して来たので驚いて転んでしまった。
「ああ!パンツ!イチゴのパンツだ!はぁ!はぁはぁ!ひひっ!」
言われてすぐにスカートを押さえる。
「正解だったね。ほら、お金……」
男は財布から一万円札を何枚か渡そうとしてくる。
「い!いりません!」
「なんで?見せてくれたのに……ふひっ!」
どうかしてる……。
私は震える足で立ち上がり、玄関に向かって走った。
「あ、紗々ちゃん!ハンカチ落としたよ!?」
「いりません!」
最後なにか言っていたが、どうでもいい。
泣きそうになりながら玄関に座り込む。
怖かった……。
「おかえり、紗々。どうかしたの?」
「お母さん……うぅ……うわぁぁん!」
お母さんに抱き付いて泣き喚いた。
安心したら我慢してた緊張が解けてしまったようだ。
「そう……お隣さんがねぇ?」
「もう!なんなの!?あいつ!」
「こら紗々、年上の人にあいつなんて言っちゃダメでしょ?」
「だぁかぁらぁ!あいつは危ないやつなんだよ!?」
「よく知らない内から決めつけちゃダメよ?まずは信じることから始めなきゃ」
「お母さんは人が良すぎだよ!あ、それ取って?」
「はいはい、これね?」
母娘二人で台所に立ち、夕飯の準備をする。
一般的なご家庭でもありがちな風景かもしれないが、我が家は少し違う。
「ねえ紗々、これってどんどん小さくなるけど、もっと沢山買ってきた方がよかったのかしら?」
「あああ!お母さん!皮剥き過ぎ!てかそこもう皮じゃなくて実だから!人参が鉛筆みたいになってるじゃん!一本の人参から削り出した至高の野菜スティックになってるから!」
「あらあら、紗々はよく喋るわねぇ。あれ?いつのまにか人参が無くなったわよ?」
「聞くことを放棄した!?ああもう!全部笹掻きみたいになっちゃったじゃん!」
「柿?あらあら、紗々?これは人参と言ってねぇ……」
「うん……あとは私がどうにかするから、お母さんはお皿の準備してて……」
このように、我が家の主婦は頼りない。
母にして女子力ゼロなのだ。
無理はない、私を生むまでずっと女優として仕事していたのだから。
演技派女優島倉紗世。
映画にドラマ、果ては海外の作品にまで顔を出す超一流の女優。
若くして私を生んだので、惜しまれながらの引退だったそうだ。
って言われても、私にとってはただのダメな主婦にしか見えないんだけど。
むしろ再放送のドラマとか見てて、お母さんが普通に出てくる時とかはなんか恥ずかしい。
いつものお母さんじゃないお母さんがそこにはいて……。
そして私の後ろにはいつものダメなお母さんがいる……。
「紗々ああ!お皿がああ!きゃああ!また割れたああ!」
「もう……座ってて下さい……」
私を生んでなお、誰もが振り返る絶世の美女であり、天然で可愛い私のお母さん。
大きくなれば私も、お母さんみたいな美人になれるのかな?
「お父さん次はいつ帰ってくるって?」
「まだ先になりそうだって言ってたわよ?」
「そっかぁ……」
「紗々……寂しい?」
「ん……ちょっとね?」
「そっか、よかった」
「いやいや、なんでよかったのよ」
「紗々がお父さんのこと大好きでよかったなって」
「もう……お母さんってば……」
お母さんはお父さんが大好きである。
夫婦だからまぁそうであってもらわなきゃ困るんだけど、見てるこっちが恥ずかしくなるぐらい……その、まぁ……イチャイチャするのだ。
せめて子供の前で何度もチュウするのは止めて欲しい。
そしてワザとらしくこっちを見て「妹か弟欲しくない?」って聞くのも止めて欲しい。
「お母さんは大丈夫なの?」
「なにが?」
「隣のやつ、お母さんにちょっかいかけてない?」
「挨拶しても返してもらえないぐらいなのよねぇ。恥ずかしがりやさんなのね」
「本当に大人には興味ないんだ……」
「そうなの?」
「ロリコンなんだって……」
「昔流行ったわよね」
「そうなの?」
「懐かしいわねぇ、ロボコン……」
「私はビーファイター派だけどね」
「ビーファイターとビーロボカブタックがゴッチャになるわねぇ」
「全然別物だよ!……うん、ロリコンとも別物だけども!」
「紗々は物知りねぇ」
「てかお母さん!私のパンツ外に干すの止めてよ!」
「カブタックからパンツの話に飛ぶとは凄いわねぇ。さてはトビマスカイと合体したのね?」
「ジェットモードへ、スーパーチェンジですぅー!って言わすなや!」
「やっぱりカブタックが好きなんじゃない」
「パンツよ!パンツ!あいつに見られてるの!気持ち悪いから外に干さないで!」
「えぇ?でも外に干さないと、干したなぁーって気分にならないわよ?」
「匙加減じゃい!そっちの匙加減の問題じゃい!」
「しかたないわねぇ、中で干しますよぉ。紗々もお年頃ねぇ……」
「ふぅ……そういうことにしといていいからお願いね?」
「はいはい」
きっとこいつはまたやる。
私の刑事の勘スキルが上がった瞬間である。
部屋の蛍光灯が点滅している。
面倒くさいなぁ、買いに行かなきゃならん。
まあ別にパソコンの光があれば夜は生活出来るし、本を読むのに面倒なだけか……。
仕方ない、しばらく夜のオカズはパソコンで調達しよう。
僕はそんなことを考えながら足で床のゴミを蹴散らす。
こうやってると開いてないカップ麺がたまに出てくるのだ。
「お、あった」
ビンゴ、シーフードか。
穴が開いてないことを確認し、お湯を沸かしにキッチンへ向かう。
両親が死んでからこっち、もう僕に文句を言うやつは誰もいなくなった。
一人で住むには少し大きいこの家も、二階は全部ゴミで埋まった。
一階も一部屋はゴミ箱みたいなもんだし、この生活スペースだってゴミで溢れ返してはいるが……。
ただ虚しくパソコンを弄ったり、エロ本を読んだりして毎日を無為に生きてきた。
なんの意味もない人生。
自分でも分かっているつもりだ。
でもそれももう終わり。
今の僕には生きる目標がある。
最近隣に越してきた関内紗々ちゃん。
天使に恋をしてから僕は変わったのだ。
短いツインテールにあどけない笑顔。
無駄なものなど一つもついていないペッタンコボディー。
細い足も手も折れそうなぐらい繊細で……。
あの子が現実の世界で生きていることが、不思議でならないほどの奇跡。
言わば憧れだった。
隣の紗々ちゃんの部屋を覗いているだけで満足だった。
洗濯物のパンツを見て、オナニーするのが日課だった。
夜中に窓から寝ている紗々ちゃんを見守って、毎朝挨拶して……。
そんな憧れは、今日遂に愛へと変わった。
紗々ちゃんは僕にパンツを見せてくれて、更にはハンカチまでくれたのだ。
すでにこのハンカチで10回は抜いている。
チンコに巻き付けて何度も出したせいか、ベチャベチャで汚い布に成り下がってしまったが……。
今日も夜になって紗々ちゃんが部屋に戻ってくる。
紗々ちゃんのパジャマ姿を見たことがある人間はそういないだろう。
僕だけの紗々ちゃん……。
あぁ、今日も可愛い……。
そうだ、今度デートに誘おう。
二人で公園に行って、美味しいアイスを食べるんだ。
その後は僕の部屋に来て、二人で……。
「えひゃっ……えへへ……」
こうはしてられない。
デートに行くなら、格好いい服の一つも用意しなければ。
確か一階の物置部屋に、使えそうな服があった気がする。
「んー?ないなぁ、これか?」
物で溢れかえったこの部屋は、僕が拾って集めたものでいっぱいだ。
いつか使えるだろう代物を拾い集めた。
中にはただのゴミにしか見えないものもあるが、僕には分かる。
きっと骨董的価値があるに違いない物たちばかりである。
「ん?なんだこれ?」
その中から一冊の本が見つかった。
「こんな本拾ったっけか?」
まぁ拾った物全てを覚えているわけではないのだが。
「ん?何語だよこれ」
見たことない象形文字の様な文字で書かれたその本は、物語に出てくる古文書の様でもあり……。
「契約……ん?」
あれ?なんで今僕これが読めたんだ?
驚いて他のページを捲るも、やはり読めない。
しかし一ページだけ、なぜか読めるページがある。
「これも知らない文字なのに……」
なぜだ?なぜこれは読めるんだ?
気になって内容を確認してみる。
「恋心……操る?……自分の……」
所々が薄くなって読みにくい。
それでも全て読むとだいたいのことは分かった。
「つまり、自分が持っている誰かに対する恋心を、他人にあげられるってわけか?それも想い人の対象は自分になる……」
これが本当なら……凄い?
でもこれを使うと僕の紗々ちゃんへの想いが無くなるってわけだろ?
まぁキャンセルも出来るのか……なら試してみてもいいかもな……。
なにせ僕の紗々ちゃんへの恋心はかなり大きいのだ。
これと同じだけ、誰かが僕を好きになるってことだろ?
紗々ちゃんに使えたらいいのだけれど、そうすると紗々ちゃんは僕のことを好きになるが、僕が紗々ちゃんのことを好きな気持ちが無くなる。
それじゃあ意味が無いし、紗々ちゃんが可哀想だ。
というか、そんなことしなくても思いは成就するだろう。
「って……なに真剣に考えてるんだろう……」
いやいや、これはよくある展開じゃないか?
騙されたと思って使ってみたら、本当に出来ちゃってっていう……。
夢のエロ主人公フラグ……今立ってませんか?
「や、やってみるだけ……」
なになに?
この本を持ったまま、そいつの目の前で呪文を唱える。
そして最後にそいつのフルネームね?
「うわぁ、簡単すぎるわぁ……」
もうちょっと難易度高い方が信憑性あるのになぁ……。
ともあれやってみれば分かるか。
これぐらいならリスクも少ない。
しかし知り合いなんていない僕には、この程度のことでも試せる相手が……。
「いる……」
隣の家の頭空っぽな元女優。
紗々ちゃんのママだから顔は結構似てるし、その上馬鹿だからいくらでもごまかせそうだ。
年増に興味はないが、お試しだしやってみる価値はある。
「今なら紗々ちゃんは寝てる……」
時刻は夜の10時。
まだあいつは起きているだろう。
「……ふふ」
さぁ、失敗しても大丈夫。
勇気を出して行ってみようか。
ピンポーン。
「はぁい、どなたですかぁ?」
「……」
予想通りなんの警戒もなく玄関を開ける。
そして僕を見て一瞬驚くも、嫌な顔一つせず挨拶をする。
「あら、こんばんは。今日はどうなさったんですか?」
僕は本を開くと、呪文を唱え始めた。
なぜか読めるその文字は、発音してみるとより違和感がある。
まるで喉が勝手に動いているかのような……。
「……」
黙って聞いている紗々ちゃんママをよそに、呪文は終わりを告げた。
後は名前を言うだけだ。
今の性は紗々ちゃんと同じ関内で決まり。
ウィキが本当なら、名前は芸名が本名である。
じゃあこれがフルネームで間違いないはず。
「……関内紗世」
その瞬間本が光り出す。
表紙に描かれた魔法陣の様なものが浮き出し、僕の胸の前で回っている。
成功した?
嘘だろ?
一瞬身体がドクッと脈打ち、次の瞬間魔法陣が小さくなって紗々ちゃんママの右手の甲に移る。
紗々ちゃんママも僕同様に一瞬身体をビクつかせ、手の甲に張り付いた魔法陣は、徐々にその輝きを押さえていった。
「私、いったいなにを……」
記憶が混乱しているのだろう。
当たりを見渡している。
「あ、あの……」
僕は小さい声で話しかける。
「はい?」
なんだ?あれだけ大仰なことが起こって失敗か?
「あ、あなたは……」
いや、見るからに顔つきが違う。
少し頬が赤らんで見える。
「あの、良ければ上がっていきませんか?せっかくなので」
「はぁ……」
なにがせっかくなのか。
しかし成功したのは確実だ。
いくらこいつが馬鹿だからって、親しくもない僕を家に入れるような真似はしないだろう。
玄関で靴を脱ぎ、家に入っていく。
なんだろう、胸に穴が空いたようだ。
本当なら紗々ちゃんの家に入れた喜びで、悶え死んでもおかしくない。
それが今はなんとも思わないのだ。
これが恋心を移すということなのか……。
今となっては、なんで紗々ちゃんを好きだったのか思い出せそうもない。
そんなことを考えていたら、いつのまにかリビングに通されていた。
もちろん紗々ちゃんに興味が無くなったからといって、このババアに興味が出たわけでもないので、なにがどうということもないのだが……。
「ごめんなさい、こんなものしかお出しできないけど……」
出てきたのは高そうなコップに入ったお茶と、見たことない高級そうなお菓子だった。
「嫌味っぽい……」
口をついて出た言葉に紗世が反応する。
「ご!ごめんなさい!そんなつもりじゃ!」
なんだこれ?必死だな。
ちょっと面白いじゃん。
「す、すぐに取り替えますので……」
「早くしろよ。コーラ無いの?あ、そのお菓子は置いていけ」
調子に乗って命令してみると、ババアはペコペコしながらコーラを買いに行った。
元大女優が自分に媚びへつらうのは悪気がしない。
少し遊んでやるか……。
それにしても広い家だなぁ。
新しいしなんだかいい匂いがする。
僕は紗世がコーラを買いに行ってる間、家を探索することにした。
今のあいつなら怒ることもないだろう。
と言っても、紗々ちゃんの部屋には入れない。
起してしまうと面倒だろう。
このババアは今僕に惚れているが、紗々ちゃんは違うのだ。
ばれない程度に遊ぶしかない。
それなら行く場所はあいつの部屋かな。
僕はしらみつぶしに部屋を見て回る。
目的の部屋は二階の奥にあった。
恐らく夫婦の寝室兼自室なのだろう。
他とは違い広く造られている。
「ここでズコバコやってんのかねぇ?」
これまた高そうなベッドへダイブして、布団を無駄に荒してみる。
しかしここの父親はあまり見たことが無い。
恐らく単身赴任かなにかだろう。
念のために帰ったら聞いておいた方がいいかもな。
「あ!こんな所に!」
「おう、帰ったのか……」
走って買ってきたのだろう、少し髪が乱れている。
「そ、そのぉ……なにをしてるんですか?」
「あぁ?ベッドで寝てる」
「そこ、私のベッドで……」
「ダメなの?」
「いや!そうじゃなくて!ちょっと……嬉しい……」
へぇ、年増だけど案外可愛いじゃん。
「お前の旦那は今日帰って来ないのか?」
「え!?……はい」
少し躊躇ってからそう答えた。
恐らく旦那がいるのに、僕を好きになった自分に困惑しているのだろう。
「そうか、じゃあちょっと遊ぶか」
「遊ぶって……いいんですか?」
もじもじしながらこっちを見てくる。
これが幼女だったらなぁ……。
てかこの本があれば幼女もモノに出来るんだし、今からでも他のに乗り換えるか?
いやいや、名前調べたり大変だし、今はとりあえずこいつで遊んで帰るとするか。
「いいけどさ、面白くなかったらすぐ帰るから」
「はい!ありがとうございます!」
心から嬉しそうにするおばさん。
確かに美人だな。
でも僕の好みではない。
「お前さぁ、旦那も子供もいるのになに期待してんの?」
「……それは」
「ねぇ?僕になにして欲しいの?言ってみてよ」
「え?……あの」
口ごもる。
やはり自制心もあるのか。
「なにして欲しいか言えば、やってあげるかもよ?」
「ほ、本当ですか!?あ!あの……一度でいいので……セックス……」
「ククッ!」
大女優が顔赤らめて僕に不倫セックス希望してくるなんて。
これはこれで面白いな。
「なに?僕のチンポ入れたいの?」
「は、はい!」
「旦那もいるのに?」
「旦那は今……海外ですので……」
「旦那のことは好きじゃないの?」
「今は……あなたの方が……」
「子供が下で寝てるのに、旦那じゃない男のチンポ欲しがる母親ってどう思う?」
「最低です……」
「ほら、ちゃんとお願いしてみろよ」
「は、はい……子供が下で寝ているのに、旦那を裏切って……チンポ……おねだりする私を……犯してください……」
へぇ、実はなかなか頭の回転早いじゃん。
瞬時にこのセリフを言えるのは凄いね。
さすが元女優。
「でもなぁ、僕ババアに興味ないんだよね」
「え!?」
おいおい、どんだけビックリするんだよ。
自分がババアだって自覚なかったのか?
これだから自信たっぷりの美人女優は嫌いなんだよ。
「お前何歳?」
「34歳です……」
「34歳子持ちは完全にババアだよ」
「そんな……」
「それでもまぁ、僕を楽しませてくれたら考えてやるよ」
「本当ですか!?あの!なんでもします!」
「そうだなぁ……じゃあ……」
僕は思いつく限りの悪意を込めて、次々に指示を出す。
それを聞きながら紗世は時に顔を赤らめて、時に焦りの表情を浮かべながらも頷いていく。
「よし、じゃあ撮影開始しようか」
「は、はい……」
僕はカメラをセットして紗世を捉える。
この人妻は今、とてもカメラに映されていい格好はしていない。
網目の荒いストッキングの下はノーパンで、濃いマン毛が見えてしまっている。
もちろんスカートもズボンも履いていない。
上は無駄にデカい乳が放り出されており、マジックで先が黒く塗りつぶされている。
乳房や腹にも落書きが書いてある。
チンポの絵や卑猥な言葉、電話番号に住所まで。
極めつけは顔だ。
さっきまで履いていた黒い下着は、顔を覆うように被されて、両目と頬しか見えない。
しかもその中心、鼻に当たる場所は濃くなっており、秘部が濡れていたことを表している。
まぁ被る前に軽くオナニーさせたからだが。
「じゃあいくぞー。スタート」
僕は監督気分でスタートを切る。
紗世は卑猥で滑稽な格好のまま、更に腰を落としてガニ股になる。
「イェーイ!みなさん!こんばんは!みんなのオカズ!島倉紗世だよ!」
馬鹿みたいにピースしながら腰を振る。
その表情に躊躇いはなく、まさに女優であった。
「まずは自己紹介から!年齢34歳!年増でごめんね!マンコも臭いグロマンです!」
紗世は腰を突き出し、ストッキングの上からマンコを開いて見せる。
言う割には綺麗だが、マンビラが開花した大人のマンコが見えている。
「おっぱいはなんとEカップ!大きいけど最近垂れてきてます!」
実際にはそこまでだらしなく垂れ下がってはいないが、真っ黒に塗った乳首を引っ張り、自分から下に伸ばしている。
「こうやっていつも乳伸ばししてるの!もっとエロい乳マンコにするために!」
乳が伸びる度に両乳房に書かれた『無価値乳』『ご自由にお揉み下さい』の文字も伸びている。
「お願いです!哀れで卑しい私に!あなたのおチンポ様を恵んでください!ご奉仕させて下さい!」
片手は乳首を引っ張りながら、もう片手でストッキングを破りマンコを露出させる。
僕は固定カメラに顔が映らないように、下からフレームインする。
映っているのは僕のチンコだけだ……多分。
何度か練習したからきっと映ってない……はず。
変態ババアははぁはぁ言いながら、僕のチンポを血走った目で見つめている。
自分のパンツの臭いで更に興奮してるんだろう。
頭おかしいな、気持ち悪い。
「ちんぽ……ちんぽぉ……」
うわ言の様に呟きながらマン汁を垂れ流す。
汚いマン汁が僕の身体に落ちてきて少し不快だ。
「そんなに欲しいならちゃんと宣言しろ。自分がなんでこれが欲しいのか、そのためにどうするのかをな」
「はい!」
頬を赤らめて嬉しそうに返事をする。
相変わらず荒い鼻息のまま、ちんこギリギリまで腰を落としてカメラを見つめる。
「私は……夫である忠司さんを愛し、娘の紗々を愛しています」
そう言った紗世の顔は、急に清楚な女性のそれに戻っていた。
「忠司さんと出会って、恋をして、やがて全てを捨ててでも、彼と共に人生を歩みたいと思うようになりました」
旦那とのなれそめを話す紗世の顔には、もちろんさっきまで履いていた汚れたパンツが被さったままだ。
「そして天使のように愛らしい娘、紗々を授かり、母として、妻として、幸せな日々を過ごしてまいりました」
両手は足の太ももに置かれており、破れたストッキングからはマンコが丸見えだ。
「離れていても愛し合える、優しくも逞しい忠司さん……」
我慢できなくなってきたのか、チンコの先にヌチャヌチャしたマンコが何度もキスしてくる。
「ドジな私を助けてくれる、それでいて無邪気で愛らしい紗々……」
次第に腰が前後に動き、亀頭でマン擦りを始める。
「私の掛け替えのない家族……でも……でも……」
前後に動く腰は、時折亀頭の先が入ってしまっている。
すでに僕のチンコはババアの愛液でビチャビチャになっていた。
「このおチンポ様の為なら!全て捨てます!忠司さんも紗々もいらない!このおチンポ様を入れていただけるなら!もうなにもいりません!」
前後の動きは止まり、上下の動きに切り替わる。
それでもまだ一線は超えておらず、先が出たり入ったりしている状態だ。
「おチンポしゃまあああ!34歳の中古で無価値な汚いマンコでえええ!おチンポさまの童貞喰わせてくだしゃいいいい!」
僕は返事の代わりに力いっぱい紗世の乳に平手打ちをした。
垂れ乳は無造作に揺れ、赤く腫れ上がる。
それと同時にババアのマンコが僕のチンコを包み込んだ。
「ぬひゃあああ!いいいい!これこれこれこれええええ!このチンポおおお!これがほしかったのおおお!旦那の極小チンポじゃなくてえ!この大きくて臭いチンポおおお!紗々の笑顔も吹っ飛ぶ気持ちよさああ!ぬひひひひ!ケツ振り止まらにゃいのおおお!」
狂ったように腰を動かすババア。
さすがに僕も初めての経験だから、気持ちよさにもっていかれそうになる。
これすぐに逝っちゃうなぁ。
「おい、すぐ出そうだわ」
「ホントにいいい!?出してえええ!中にいいい!子宮汚してえええ!紗々が産まれた子宮ううう!汚い精子で汚してええええ!」
「うっ!マジですぐ出る……」
「ごめんなさい!ごめんなさい忠司さん!このおチンポ様を一回入れてもらうために!あなたを捨ててごめんなさい!でもおおお!愛してりゅのおおお!おチンポしゃま愛してましゅううう!」
「うっ!うぅ……はぁ……」
「にひいいい!あったかいいい!完全に子宮占領されてりゅうう!孕みましゅっ!絶対に孕みましゅううう!」
涙を流して喜ぶ変態ババアは、見てて可愛そうになるぐらい哀れだった。
「ほら、早くどけっ」
僕は紗世のケツを叩いて退かすと、カメラを持って立ち上がる。
「はひぃぃ……」
紗世はマンコから精子を垂らしながら立ち上がる。
「娘にもちゃんと謝りに行くんだよな?」
「なんでもしましゅ……」
顔は卑しく歪み、だらしない笑顔が張り付いている。
そのまま精子を垂れ流しながら娘の部屋へと向かう。
僕はカメラを持ったまま後を追いかける。
起さないようにゆっくりと部屋に入ると、紗々ちゃんのベッドに近づく。
時折カメラと娘を交互に見てニヤニヤ笑う姿は、変態以外の何物でもなかった。
よく寝ている紗々ちゃんの顔を跨ぐようにして立つ紗世。
当然マンコから垂れた精子が紗々ちゃんの顔を汚す。
「ごめんねぇ、紗々……私、おチンポ様咥える為なら、紗々の顔にマン汁ブレンドの精子引っ掛けるような変態ママなのぉ……」
そのままマンコを紗々ちゃんの鼻に近づける。
「あなたが産まれた子宮で、今弟か妹が産まれるのよぉ……。きっとこの人に似て気持ち悪い顔の子供だけど、紗々ちゃんの弟か妹なんだから、可愛がってあげるのよぉ?んんっ!」
声を押し殺して喋っていたが、最後鼻先にマンコを擦り付けた時は声が荒げたようだ。
「んん……くしゃい……」
精子と愛液で汚れた顔の紗々ちゃんが、寝言で呟くところを最後に撮影は終了した。
その後すでに興味のないババアを放って僕は家に帰った。
部屋の窓からこちらをじっと見つめるババアの視線が恐怖でしかない。
「こえぇ……早く解除しよう」
解除の呪文はどこでも使えるらしい。
僕がその呪文を唱えると、僕を見つめる紗世の方から魔法陣が飛んでくる。
そして光る魔法陣は僕の胸の前で止まり、しばらくしてから本の表紙に吸収された。
「ああああああ!」
叫んださ……。
そりゃあねぇ。
「なんで紗々ちゃんにあれだけ近づけたのに、何もしなかったんだあああ!」
分かってるよ、僕の恋心を代償にして紗々ちゃんママに色々したんだから。
うわぁ、てか未来のお嫁さんのお母さんとエッチしちゃったよ。
しかもあんな下品なやつを……。
これは一生内緒にしないとね。
僕は紗々ちゃんママの個人撮影AVをパソコンに入れながら誓った。
しかしこれは益々紗々ちゃんには使えないな。
使う必要もないのだけれど、これを使うと紗々ちゃんは僕に夢中になるが、僕が紗々ちゃんを好きでいられない。
そんな可哀想なこと紗々ちゃんには出来ないや。
「て、ことは……」
他の子で遊ぶしかないかなぁ。
でもまずは紗々ちゃんと結ばれてからかな。
今は紗々ちゃんの方が大切だから……。
僕はパソコンを弄りながらウトウトしていく。
今日は疲れた……もう、寝る……。
「きゃあああああ!」
「うわっ!なんだ!?火事!?」
急な悲鳴で飛び起きる。
咄嗟にあたりを見渡すも何もない。
紗々ちゃんの家にも特におかしなところは見えないが……。
「あぁ、そういうことか」
紗々ちゃんママの悲鳴か。
それなら納得。
昨日僕が魔法を解いた瞬間眠った彼女は、今あられもない格好で目が覚めたのだろう。
そして昨日の記憶を辿り、絶叫したと……。
「ひひっ」
小気味いいな。
これで紗々ちゃんと結婚するってなった時も、無条件で味方になってくれるだろう。
あの動画は僕が持ってるんだからね。
しばらくパソコンを見ていた僕は、そろそろ紗々ちゃんの登校時間なので家の前に行く。
今日は何色パンツだろう。
ローテーション的には柔らかそうな白い綿パンツだろうか。
「……え?」
唖然、その言葉が一番しっくりくるだろう。
僕の時間が止まったような感覚さえする。
目の前にはいつも通り登校する紗々ちゃん。
しかしいつもと違うのはその隣にいる男の子。
紗々ちゃんと同い年ぐらいのやつ。
それだけならまだしも、紗々ちゃんはそいつの腕にしがみついているのだ。
「だれ?そいつ……」
「お前には関係ないだろ?」
男の子は紗々ちゃんを守るように前に出る。
なに?どういうこと?
「お前紗々のことイジメてるんだって?」
「はぁ?」
なんなの?なんなのこいつ?
「迷惑なんだよ!二度と紗々に近づくな!」
「お前……お前紗々ちゃんの……あの……その……」
「彼氏だよ!」
……。
「勝臣……あんまり挑発しちゃダメだよ……」
「大丈夫だ、俺がずっとそばにいてやるから」
「勝臣……」
なんでそんな顔でそいつを見るの?
なんでそんな顔で僕を見るの?
なんで?なんで?なんで?なんで?
「……紗々ちゃん?」
「いやっ!」
近づこうとしただけで酷く怯えている。
そいつにはギュっと抱き付いているのに……。
「まさか……嘘だよね?そいつに無理矢理……」
「なに言ってんだ?お前頭おかしいんじゃ……」
「なにってなんだあああああ!おまえがああああ!あぎゃあああ!うぎい!ががががが!」
僕は男の肩を掴むと、力いっぱい握りしめて前後に振る。
殺してやろうと思った。
こいつがなんであれ、殺そう。
こんなガキ、一瞬で……。
「がああああ!うぎいっ!?」
しかしその手はあっさりと払われた。
「お前誰に喧嘩売ってんだ?」
「ぅ……ぇ?ぼぎいいいい!」
なにが起こった?
急に地面が近づいて、頬がすっごい痛くて、目がチカチカして……。
「お前みたいなデブに俺が負けるわけないだろ?」
僕は……殴られた?
こんな頭のおかしいやつ……紗々ちゃんが気に入るわけ……。
「勝臣!ありがとう!」
「おい!あんま引っ付くなよ……」
なんで喜んでるの?
僕が殴られたのに?
僕が被害者なのに?
その暴力男に引っ付いて、デレデレして……。
そこは僕の場所なのに……。
「……ねぇ、紗々ちゃんは、僕が嫌いなの?」
驚くほどスムーズに、自然と口からこぼれた僕の疑問。
それに返されたのは、あまりに冷徹な言葉。
「当たり前でしょ?気持ち悪い……消えてよ……」
この世で一番愛していた人に……僕の世界を変えてくれた天使に……。
ドブの中の虫を見るような目で……消えろと言われたのだ……。
「ゴメンナサイ、モウシマセン」
僕は機械的にそう言い放ち、逃げるように家に帰った。
扉の外では、嬉しそうに感謝の言葉を述べる声。
玄関で立ち尽くす僕は、自分でもビックリするぐらいに冷静だった。
目の前には置いた記憶もない魔法の本が、じっと僕を待っていた。
「うふふぅー」
夕方の帰り道、人に聞かれると変に思われそうだが、ついつい声が溢れてしまう。
だってだって、今日はすっごくいい日だったのだ。
勝臣があのキモい男を撃退してくれて、さらにさっきデートまでしてきたのだ。
いつもよりちょっと遠めの公園。
二人で並んで歩くだけでドキドキした。
途中であのバスケ馬鹿がリングを見つけてからは、なぜか訳の分からない男同士の1on1を永遠繰り広げていたが、そんな子供っぽい所も好きなんだよなぁ。
帰りはずっと手を握ってくれてたし……。
やばい、まだドキドキしてる。
ニコニコしながら歩いていた。
目に映る景色全てが鮮やかに見えて……だから、油断していた。
まさかまたあいつが、私の前に姿を現すなんて思ってもみなかったから。
「お帰り……紗々ちゃん……」
私の家の前、いるはずの無いあいつが、私の帰りを待っていたのだ。
「な、なんで……?」
あんな目にあったのだ、理由は一つしかない。
復讐される……。
「い、いやぁ……」
声に力が入らない。
大きな声を出さないとダメなのに……。
ランドセルに付いていた防犯ベルは、手が震えてうまく掴めない。
殺される……。
男は黙ってこちらを見ていたと思うと、ゆっくりと私の方に歩いてきた。
「僕はね?君が好きだったんだ」
「……」
声が出ない。
「いや、今でも愛している」
「……ぁ」
やっと出た声にはやはり力はなく、言葉にならない。
「でも君が僕を愛していないことはよくわかった」
「……ち、ちが」
違う?いや、違わない。
でもそう言わなければならない気がした。
「違う?嘘だ。あの目を僕は忘れない」
「ご、ごめんなさ……」
「僕は決めたんだよ。この気持ちを忘れようって」
忘れる?
許してくれるってこと?
「そして君に、僕の気持ちを味わってもらう。肩代わりしてもらうんだ」
「は……?」
肩代わり?
どういう意味?
男は古ぼけた本を取り出すと、意味の解らない言葉を話し始める。
外国の言葉?
まるで歌うように、いや、唱えるように……。
「関内紗々……」
「きゃああ!」
男が私の名前を言うと同時に、本が光り出したと思うと、変な光の塊が男の胸の前で回り始める。
しばらくするとそれは小さくなり、私の方に飛んできた。
「いやあああ!」
私は怖くなって両手で頭を抱える。
「……」
しばらくしてもなにも起きない。
痛みは無い……。
外れた?
ゆっくり目を開けると、そこにはもう男はいなかった。
そして身体を見渡すもなにもない。
いや、右手の甲に……。
「……なにこれ?」
あの光の塊は、私の右手に移って淡く光る痣になっていたのだ。
あいつはなにを……。
ドクンッ。
「え……?」
今胸が高鳴る感覚がした。
いつも勝臣を思う時になる感覚。
いや、それ以上の感情。
それがなぜか、あの男を思い出すと……。
私は立ち尽くした。
やがてお母さんが私に気付いて、家に招き入れるまでずっと。
いつものようにネットサーフィンを楽しんでいると、窓を叩く音が聞こえる。
今ちょうど本当にあった怖い話を読んでいたので、素でビックリした。
チラッと横目で正体を確認し、イラッとしたので無視する。
「志原さん!あの!」
なおも窓は叩かれ、ボリュームは控えめだが切迫した女性の声が聞こえる。
今からいいところだったのに……。
「なに?」
怒気を含めた声で応対し、睨みつける。
「昨日の……その……」
「島倉紗世主演のAV、返してほしいの?」
「AVって……」
「あ?違った?じゃあいいよ」
「す!すいません!返してください!」
「まぁ興味ないし、別にいいよ」
「本当ですか!?」
「ほら……」
僕はデータの入ったビデオカメラを渡す。
元々はこいつの持ち物なので別に痛くもない。
データ自体はパソコンにも移してあるしね。
「ありがとう……よかった……」
「用が済んだら帰ってよ」
「あの、昨晩のことは……」
「別に誰にも言わないよ」
「そ、そうですか……」
マジでウザいわ。
一回寝たら不倫気取りですか?
おばさんの妄想普通にキモいわぁ。
重すぎる恋心から解放された今、多少の混乱と興奮もあって、おばさんにかまってる余裕はない。
復讐なら今から本人にタップリするし、おばさんはもう用済み。
それより、今はこの虚しい気持ちをどうにかしたい。
胸にぽっかり空いてしまった穴を、どうにか埋めてしまいたい。
新しい恋……。
僕を救えるのはそれしかないのかもしれない。